両親亡き後の知的障害者の生活について《第2話》 | カラダにピースのブログ

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茨城県のどこかにある障害者支援施設に真面目に勤めるそれなりの立場の職員のつぶやきです。

 《第1話》からすっかり遠ざかってしまい申し訳ございません。

 

 きのうは,地元社会福祉協議会の主催で,興味深い講演会が開催されましたので,法人理事とスタッフで参加してきました。

 

 地元開催なので,知り合いのママさんや福祉関係者,議員さんなどの姿がちらほら。事前予約制の会場はほぼ満員で,私の見立てでは60~70歳代の階層が一番多かったと思います。

 

 講演会の講師は,私がまだ30代前半の頃に知的障害者関係団体の活動でお世話になった方で,現在は私の母校で准教授をされている素敵な女性の方。

 

 講演のテーマは“親亡きあとを考える”深く重いテーマですな。

 

 とにかくこの領域は広範にわたるので,この日は「成年後見制度」中心に的を絞った講演となりました。

 

 一般の方には「成年後見制度」ってちょっとなじみがありませんが,障害者総合支援法の改正に向けて,いま各地で障害福祉関係団や専門家の方々が盛んに研修会(勉強会)を催していますし,私も保護者会の勉強会などで話題にすることもあるのですが,実は話を聞く人はたくさんいても,じゃあ,早速申し立てしましょうか,という話には全くならない制度なんです。当然ながら少なくとも私の周囲ではこの制度はほとんど活用されていないといっていい…。

 

 そもそも,成年後見制度って,判断能力がなければ必ず利用しなければならないのかと言えば,決してそうとも言えないし,普及しない理由には,親が元気なうちは親が財産管理をする,子のものは親のもの,わざわざ報酬を払ってまで第三者に任せたくないという思いが何となく見え隠れするんだよな…。

 

 成年後見人だって,一度引き受けたら原則やめることはできませんし,なかなかたいへんだと思う。 

 

 ウチの施設入所者の話をさせていただくと,成年後見登記をしている人は3%未満です。

 97%の入所者は,申し立てすらしていないので,民事上は「心神喪失者ではない」という扱い。

 

 ならば,入所者の代理行為をいったい誰がしているのかと言えば,基本的にはご家族です。とはいえ,ご家族もしょっちゅう施設に来られませんから,同意をとった上で軽易なものは施設のスタッフがその場面に応じて判断する。

 

 でも,入所施設ゆえに,なかには両親きょうだいもいない,または放棄されたに近い人もいますから,障害年金の申請や施設入所の契約,全財産を含む資産管理といった重責業務も含めてその人のために誰かがやるしかない…。

 

 だからそういうケースの場合は施設長である私が私の責任においてやっています。

 

 所轄庁の監査では,いちいち入所者一人ひとりの通帳や出納帳まで確認しませんよ。もう信頼関係でしかない。それが実態です。

 

 だから,親亡き後にすでに信頼できる入所施設に入所していれば,たとえ成年後見登記をしていなくたって,資産管理や身上監護は何とかなっちゃう。

 

 ちなみに普通は知的障害者にあまりお金持ちっていないものです。それでも今の障害福祉制度ってうまくできていて,収入が障害基礎年金しかない人でも,特に普通の入所生活を送っていれば,毎月2万円程度残るような仕組みになっている。

 なので,生活保護の該当者はいないはずです(いたらおかしいですよ)。

 

 例えば障害者支援施設(施設入所支援+生活介護の場合)の利用料って,食費の占有率が一番高い。それにオプションと呼ばれる個人負担分を含めたって,施設にもよるでしょうがだいたい5~7万円だと思う。

 

 入所者は基本的には障害支援区分4以上の重度者が多いので,障害基礎年金も1級(月額約8万1,000円)の人が多い。だから平均月2万円程度残る(でも健康保険税〈法定軽減制度あり〉は納付しなければなりません。介護保険料は40歳に到達しても免除されます)。

 

 したがって,少しずつではありますが,入所施設ではお金は貯まっていくような仕組みにはなっている。

 貯まる以上は,しっかり資産管理を行う。そして入所者自身の幸せのために使うところではしっかり使う。これが今できる正しい管理の仕方だと思います。

 

 貯まらないのは2級です。なぜなら月額約6万5,000円ですからね。施設で旅行などに出かけると経費もかかるし,かなり苦しい…。

 なので,まだ20歳到達前の方は,障害基礎年金申請時にどのような努力が必要なのかということを,どうか本気でお考えなさってください。

 

 

 そうそう,今度はお金の話ではなく医療の話です。

 家族,親戚のいない入所者が手術をしなければならなくなった…。どうする俺…。

 私,手術など身体にキズをつける行為,いわゆる「医的侵襲行為」の同意はいたしません。

 もっと重い決断,例えば「延命行為をしますか,しませんか?」と問われても,自然に任せますとしかいいようがない。

 「医的侵襲行為」の同意権は成年後見人にはありません。したがって,私は「医師の判断におまかせしいたします」としか言えません…。

 

 なお,きのうの講演会ですが,最後に講師の方は,こう締めくくっておりました

 

 「お金のある方は,いつもお金の使い道を考えておいたほうがよい

 

 「家族が本人の一番の理解者であるとは限らない

 ん~,確かにそういう家族も…いるな。 

 

 

 

  イチョウ イチョウ イチョウ イチョウ イチョウ イチョウ イチョウ イチョウ イチョウ  

  

 

 ご参考までに…。

 実は成年後見というのは,意外と身近なところで,しかもこのブログをお読みの方も含めて誰でも“確認する”ことができます。

 

 ご存じの方もいらっしゃるかとは思いますが,あなたが成年被後見人か否か(または心身喪失の常況にある者なのか否か)は,あなたの本籍地のある市区町村長が交付する「身分証明書」によって証明してくれます(手数料は役所によりますが200~400円)。

 

 身分証明書には,本籍・本人氏名・生年月日・民事処分(禁治産または準禁治産の宣告、後見の登記、破産宣告または破産手続開始決定)の通知を受けていない といった内容が記載されています。 

 ※たとえば社会福祉法人の役員はこの身分証明書の提出が求められます。