今日は、あるふたりの現役医師に少し苦言を呈しておかねばならんなという思いで記事を書きます。
（相当長文なので、タイトルに関心のない方はスルーで結構でございます）
ブログをお読みの皆さんは、、水溶性ビタミン群の一つ“葉酸（ようさん）”をご存じでしょうか。
厚労省資料（下記リンク）によれば、同じ分量だとからし菜、菜花、ほうれん草などに多く含まれ、突出して含有量が多いのは鶏・牛・豚レバー。ただし各種レバーについては「ビタミンＡ過剰の心配があるので注意が必要である」と但し書きがあります。
→ 妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について
この、“葉酸”については2000年公表の「五訂日本食品標準成分表」に追加掲載され、ここで初めて栄養素としての重要性が認知されました。
そして同年、当時の厚生省（今の厚労省）が、「赤ちゃんの先天性疾患の一つである神経管閉鎖障害の発症リスクを軽減するために、妊娠可能な年齢の女性に葉酸摂取にかかわる適切な情報提供を保健医療関係者を通じて広く周知することとした」との課長・室長通知を出したもんだから、「国のお墨付きを得たよ」と拡大解釈したサプリ会社が「葉酸サプリ」と称した製品をたくさん販売し始めたんです。
まあ、経済活動は自由であるべきなので、別にいいとして、ここからが本題。
そのリンク先にある課長・局長通知。ここに自閉症の発症リスクなど、一切記載されておりませんからね…。
ところが、その葉酸サプリを販売するある会社のウェブサイトに現役医師（結構しっかりしたクリニックにお勤めのようです）が、その前記通知に触れながらも、その一方で“葉酸の摂取で自閉症リスクが低減する可能性がある”などと、余計なことを述べているんですね
しかも解せないのは、その医師を使っているサプリ会社のウェブサイトに「赤ちゃんを発達障害・自閉症から守る為に妊娠中すべきこと」なんてタイトルのページがあること。
「自閉症から守る…」 解釈によってはまるで「熱中症から守る」「感染症から守る」などと同列に表現されているようにも捉えることができるところがいちいち気に入らない
要は「ちゃんと葉酸をとらないと発達障害・自閉症の赤ちゃんが生まれちゃうかもしれないから気を付けてね」って述べているようなものだ。
しかも、ウェブサイト上でこんなことまで載せちゃっている…。
○活性酸素が原因で脳の神経細胞が破壊されて、発達障害・自閉症になる。
（あ～あ、断言しちゃってるよ、これ専門医の立場の方々にことごとく否定された意見だし、間違いないなければ国が黙ってないでしょ）
○「夏の妊娠」「帝王切開」「不妊治療」も原因になるのではないかと考えられている。
これね、確かに国立○育○療○究センターの医師が2010年に「自閉症の環境要因」をテーマとした論文を出しているんですよ。でも、自分の足で稼いだ調査結果ではない。根拠に不確実性がある海外の論文の寄せ集め。私はこの論文をざっと読んでホントがっかりしましたよ。
ありえない内容ばかり。「葉酸」も一回だけ出てきます（二文字のみｗ）まあ、厚労省が公表したものではなく、一研究員としての論文ですから大げさにするものでもないんですが、ほかにも「家庭の平均収入と自閉症の発症に関連がある」なんて海外の調査結果をどうどうと掲載しているんですね。
夏の妊娠についても書いてありますよ。英国の研究によれば6～8月に妊娠すると、自閉症の発現率が高いそうな…。でもね、英国は四季に乏しい西岸海洋性気候、日本は大部分が温暖湿潤気候。単純に比較できんでしょ。ブログをお読みの皆さんが妊娠されたのは何月でしょう?
「帝王切開での出産は，自閉症の独立危険因子であると確認している」とも。もちろん海外の研究結果を鵜呑みにして、ただ書いてあるだけ。これなら時間さえあれば自分でも簡単にできるな。
帝王切開すると、健常な赤ちゃんの脳のどの部分に、どんな作用が働いて、自閉症になっていくのか、その神秘的すぎるメカニズムを一回自分で調べて見ろってんだ。この理論が正しければ、自閉症は出産直後の外部要因で発症すると言えてしまうよ。
この医師は、最近も「特に母親の学歴が低いと自閉症の子になる可能性が高い」などと、発言しているの方なので、別に論文の内容などあてにしておりません。どうでもいいです…。
論文をリンクさせてもいいんですが、すぐわかると思いますので、どうぞ皆様ご自身でお調べになってみて下さい。
○喫煙は自閉症のリスクが1．4倍以上になると言われている。
（何の統計かわかりませんが1．4倍以上なんて誰が言ったんでしょう。僕は聞いたことありませんね。しかしながら、少しだけ支持しておきますよ。なぜなら私が自分の目で確認している限り、確かに“自閉症の母親の喫煙率”は高いように感じるし、そのような人をたくさん知っています。聞けば出産後から吸い始めた人はまれで、喫煙者のほぼ全員が妊娠前から喫煙習慣がある。もちろん、妊娠中に限り禁煙していた人もいる。ただし、医師がいうところの1．4倍かどうかはわかりませんね）
○ほかにも自閉症の原因とされるリストに「魚介に含まれる水銀」と「ワクチン接種」をアップ。
昭和30年代に発生した公害病。その中で大手化学工業会社が海や河川に有機水銀を含んだ排水を流したことが原因とされた水俣病、第二水俣病のことは皆さんもご存じかと思います。
熊本県水俣湾、新潟県阿賀野川流域で、魚類の食物連鎖を通じ、有機水銀を体内に取り込んでしまった地域住民たちが、大変な健康被害を被った公害事件です。
でも、この地域にかつて自閉症の子どもたちが多かったのかといえば、そんなことは一切ない。
国の研究機関により高い毛髪水銀濃度がクジラやイルカの摂取に関係しているということが示唆されていた太地町（和歌山県）の住民に自閉症が多いというデータも一切存在しない。
なので、私はなんの根拠をもって水銀摂取と自閉症の発症が関連づけられているのか、疑問を感じています。どうせ海外の信憑性のない論文ですよ。
環境省国立水俣病総合研究センターの安武章生化学室長（当時）は平成22年3月の民放番組で「（太地町住民の）毛髪水銀濃度はこころもち魚好きの人の通常値。体の中に水銀はないに越したことはないんでしょうが、普通に食生活してる限り、水銀と無縁の生活は不可能です。（水銀量が）増える一方というのもまた間違いで、私たちの体の中に入ってきたメチル水銀、これは確実にある一定のスピードで排出されます。メチル水銀は自然界でもバクテリアなどから発生し、どんな魚にも含まれているんです」と述べていますしね。特に神経質になる必要はないということです。
内閣府も水銀に関する資料を提供していますよ。
→ メチル水銀に関する食品健康影響評価（内閣府・食品安全委員会）
横浜市では、ワクチンと自閉症の関連について触れております。
「MMRワクチンの中止によって自閉症の発生が減ったという科学的根拠はなかったので，『MMRと自閉症とは全く無関係である』というのが最も妥当な結論となります」と記載されていますのでご確認下さい。
→ MMRワクチン中止は自閉症の発生率に影響を及ぼさず（横浜市港北区全人口調査による）
ウェブサイトの最後の方で、葉酸医師はこう述べています。
「葉酸の自閉症リスクとの関係性は、まだ確実なものと言えないようですが、一部の機関（の研究報告）で妊娠4週前から妊娠8週までの摂取による研究結果でリスクが低減されたという報告があることから、葉酸サプリメントを飲む最も大切な機関は妊娠前から初期段階ということがわかります」と。
なるほど、海外の研究機関にはそのような研究をする人がいて、そのような研究結果がでたということですね。
でもね…、確実になってから述べなさいよ。
国（厚生労働省や内閣府）が「葉酸と自閉症の関連性」を公表したことは、一度たりともありません。
普通に考えてみたって、栄養事情の良くない、つまり葉酸摂取が容易じゃない国や地域、または葉酸サプリもなかった時代に、本当に発達障害や自閉症が多く出現していたのでしょうか。
私は仕事でもそうなんですが、曖昧な事案は必ず裏をとらないと気が済まないタチでして、基本的には法的根拠がないものや、国や自治体が通知・公表したもの以外はまず疑いから入ります。
そればかりか、発達障害や自閉症に関する専門知識をもたない医師よりも、むしろ同じ屋根の下で一緒にそのような子と寝泊まりを含めた生活を送る父母や（知的障害児者の）関係施設の職員の方が、よっぽど障害に対する知識・理解があると思いますよ。
どうか、障害のあるお子さんをお持ちのご家族の方々は、世の中にあふれる情報をしっかりと自分自身の目で取捨選択し、冷静に対応すべきだと思っています。
明日は仲間たち数名とともに「かすみがうらマラソン2017」の10マイル（16㎞）に出場するのですが、自己最高重量（90㎏）での出場ｗ
100mを10秒台で走っていた頃はまだ68㎏だったんですけれどもね。
でも筑波山なら駐車場から1時間で登っちゃうよｗ