347)桜餅の松崎と湯量豊富な蓮台寺 | 峠を越えたい

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戻るより未だ見ぬ向こうへ

 蓮台寺駅正面の停留所でバスに乗り、目指すは松崎ですが、その途中で下りて2時間ほどの見当で松崎海岸まで歩くつもりです。下車は跋折羅峠とすれば理想ですが、所要時間はずっと長くなります。Googleマップのナビを頼りに歩いて松崎高校を過ぎ町中へ近づいて来たと思う頃、こんな名前のバス停に出会いました。昭和の歌手の名前とは関わりないでしょう。

 この写真をきっかけに話を始めます。松崎は、桜の葉っぱを漬けたものと言えば良いのでしょうか、桜餅に使うそれの生産で全国のかなりのシェアを誇っているのです。全国広い中で、地方のごく狭い地域で、とは不思議な気がします。この噂を何処で耳にしたか、記憶は定かでありません。伊豆職員旅行の観光バス内でガイドさんに、或いは旅館で聞いたのか。同じその際に三國連太郎の出身地がこの辺りだなんてことも聞きました。松崎町のホームページで、TOP>カテゴリ>暮らしのガイド>観光・文化・スポーツ>観光>「さくらもち(桜葉餅)」の冒頭です。

 “松崎町は、伊豆半島の西海岸に位置し、人口約5,800人と静岡県で一番人口の少ない自治体ですが、さくらもちに使われる「桜葉」の日本一の生産地で、全国シェアの7割を占めています”。

 桜餅用塩漬け桜葉の生産量が全国生産量の70%ということでしょうか。「桜葉餅」の所では、

 “一般的に「さくらもち」と呼ばれますが、葉っぱの産地の松崎町では、「桜葉餅」と呼んでいます。さくらもちは春の季節限定の和菓子というのが一般的ですが、桜葉の生産日本一の松崎町内のお菓子屋さんでは、年間を通じて3店舗で桜葉餅が販売されています

「桜葉の栽培」の中の「桜葉漬けの歴史」では、

 “桜餅は江戸時代、江戸・長命寺の寺男が隅田川堤の桜の落ち葉を塩漬けにして餅を包んで売ったのが始まりと言われています。

  伊豆半島では、明治末期、南伊豆の子浦地区で桜葉漬けが始まり、昭和34~35年頃より自生のオオシマザクラを使った薪炭生産が盛んな松崎に中心が移りました。

戦後の燃料革命により炭が石油に変わると、自生の桜葉の収穫が困難となったため、昭和37~38年頃から、松崎町でオオシマザクラの畑地栽培が始まりました。

平成13年時点で、200戸ほどの農家がオオシマザクラを栽培し、松崎町は全国シェアの約7割の生産量を誇り、桜葉生産が日本一となっています”。

 使用する大島桜は山桜の近縁種だそうです。ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラの雑種ですが、その都度辞書を引いて確認しても記憶が長続きしません。長命寺の桜餅屋さんは塩漬け桜葉を松崎町から取り寄せているんでしょう。と言うことは餡をくるむ桜葉は一緒です。松崎町「桜田」という名前の由来ですが、明治初年にはこの地名があったようで、オオシマザクラの群生地が存在したのでしょうか。桜畑を桜田とは言いません。

 松崎に着いたら大概堂ヶ島へも足を伸ばします。今までどの辺りにあるのか確かめたことがありませんでしたが、堂ヶ島遊覧船発着場所辺りから土肥方向へ少し上って行きました。トンボロです。

 今現在波が洗って砂州を2分しているのでトンボロと言い切れません。

 蓮台寺駅前で西伊豆へ向けてバスに乗る前、朝方に蓮台寺温泉の町なかをそぞろ歩きました。と言っても温泉街にはとても見えません。その昔旅館が10軒弱あったとのことですが、今は3,4軒でしょうか、でも開いていないような外観の旅館も。メイン通りは真に静かです。土産物屋、遊戯場、喫茶店、食堂のあることは殆ど期待薄。下図は50年余り隔てる蓮台寺温泉の様子です。

 『伊豆』(ポケットガイド14、日本交通公社、1971)から採りました。旅館が建て込んでいますが、これでも最盛期よりは寂しいのでしょう。とあるひっそりと佇む古めかしい家屋には表に説明書きがありました。地図の「吉田松陰遺跡」でしょう。

 奥に掛かる白い札を含めて正面を大写しします。

 

「吉田松陰寓寄処」との表示です。こんな熟語はどの辞書にもありませんが。「寓居」ならあります。それはともかく、今日は水曜日で、奥の札は「毎水曜日休館」と読めます。蓮台寺温泉を再訪する宛てが出来ました。でもその気持ちが再来するかどうか。説明板をなんとか読めるようにしたいのですが。

 この度の旅行で「吉田松陰寓寄処」を見学できず仕舞いの翌日には、下田湾内を巡るサスケハナ号に揺られていたのです。高い料金をものともせず、更に2階デッキに上るには割り増し料金500円。恐れ入ります。下は柿崎弁天島と思われます。

 船上で買った「カモメパン」を与えようとする人たちにカモメばかりでなく鷹の仲間も舟を追尾しています。船の揺れは少なく、風が心地よかったです。下田海中水族館が沖から眺められました。

 取って置きは終わりに披露します。蓮台寺温泉の一夜の宿はOH旅館。美味しくてしかも食べきれない料理は、それこそ宿代に+10,000を上乗せしても良いくらいです。風呂は露天風呂:1と普通の風呂:2の3つに、それぞれ貸し切りで入れます。両者十分堪能しました。私の伊豆に関わる質問に親身に答えてくれたご主人と綺麗な女将さんに感謝多々です。伊豆半島でツキノワグマが捕獲されたのは本当のようです。伊豆に熊はいないと信じて、北から南から山路を歩いて来ましたが、突進してくる猪と鹿には用心しているものの、熊にも心しないと。下田温泉はほぼ蓮台寺温泉の引き湯です。九割方というのは本当かどうか。すると後の一割は下賀茂温泉とか。或いはその場所で地下深く掘っているとか。