298)何処から伊豆の国 | 峠を越えたい

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 地図に目を凝らしていると、旧国名での国境、現在の都道府県や市・町・村の境、尾根、分水嶺、峠などなど、境目って気になりませんか、タモリ氏は段差が痛く気になっていました。その中でも、はっきり知りたい「伊豆国」の範囲を調べます。伊豆国と言ったら伊豆半島全体でしょうとは大雑把ならそうでしょうが、その付け根の辺りが気になります。沼津市、三嶋大社、熱海温泉は駿河国か伊豆国か。まあ、箱根は伊豆国でなく相模国の筈ですね。最初に掲げる資料は『コンサイス地名辞典―日本編―』(三省堂、1975)です。

 伊豆国のざっとした領域は記されており、どうも伊豆諸島や小笠原諸島も含まれた国名だったようです。以前三宅島に「伊豆」なる村もありました。

 伊能図大全を繰っていたら手掛かりを見付けました。『伊能図大全 第5巻 伊能中図・伊能小図』(渡辺一郎監修、河出書房新社、2013)より、

 何か境目を思わせる赤い棒線が8本ほど目立ちます。駿河と伊豆と相模の国境に思えませんか。拡大すると、

 地域をもっと限って、90度反時計方向に回しました。「熱海村」、「箱根」、「三島」が中に含まれ、「沼津」は外側にあります。もっと狭い範囲にします。

 

 上が東で右が南です。沼津港から駿河湾湾岸を南に辿って行きます。「口野村」(くちのむら)、「重寺村」(しげでらむら)、「三津村」(みとむら)、「長浜村」、は今でも同じ地名です。「重州」村は今の「重須」(おもす)と思われ、「三津」は三津シーパラダイスのある所です。駿河国と伊豆国の国境が口野村と重寺村の村境にあります。この境界は何を表わすのでしょう。沼津藩領の境目とか。

 『伊豆国』(Wiki.)は頼りになって有り難いです。その「領域」のところを。

 “明治維新直前の領域は、現在の下記の区域に相当する。

  ・静岡県

  ・熱海市の大部分(泉・泉元門川分・泉元宮上分を除く[注釈 2]

  ・伊東市

  ・三島市

  ・田方郡函南町の大部分(日守を除く[注釈 3]

  ・伊豆の国市

  ・伊豆市

  ・沼津市の南部(内浦重寺以南)

  ・賀茂郡東伊豆町河津町南伊豆町松崎町西伊豆町

  ・下田市

  ・東京都

  ・伊豆諸島大島町利島村新島村神津島村三宅村御蔵島村八丈町青ヶ島村)”

 伊能中図に描かれた赤い棒線の解釈は間違っていないようです。沼津市については“内浦重寺以南”と記されています。そこで伊豆国の範囲はと問われたら、こう言います。箱根峠の下り始めと熱海と三島と沼津の重寺から以南の地である。三島の町と函南の町は豆州(伊豆国)にありますが、沼津の町なかで豆州にとか伊豆に今私は来ていると言えないのがちょっと辛いです。

 しつこくもう一つ地図を。

 『小学校総復習社会科地図帳』(帝国書院、2021)から採りました。相模国と伊豆国及び駿河国と伊豆国の境がかなり正確であることに感心した気持ちのまま終わりたいと思います。