287)いい湯だな、日光湯元温泉 | 峠を越えたい

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戻るより未だ見ぬ向こうへ

 湯元温泉にやって来るのは8回目でしょうか。濁り湯は何方も好きかも知れません。青みを僅か帯びた白ですね。1500mに少し満たない高所だから空気の薄さを感じるかというと分かりません。空気は冷たい。そこはかとなく好ましい匂い(H₂S)が温泉寺脇の泉源に近づくにつれて漂ってくると、また来れたという感慨が湧きます。

 足湯を背にして「標高1487m」の標識です。I旅館の4階からは、西北方向の山並みの姿を湯元スキー場も含めて見通せます。

 スキー場の斜面(ゲレンデ)は未だ雪が疎らです。オープンは何時かしら。I旅館の女将さんに確認しましたが、中央やや右の頭の平べったい一番白い山は前白根山で、日光白根山はその後ろに隠れて見えません。白根山は関東以北(関東、東北、北海道)に於いて一番高い山です。「白根葵」の自生で有名ですが、今も見られるのかどうか。「日本の主な山」(『中学校社会科地図』帝国書院、1996)を掲げます。

 高い順に主な山が並んでいるようですが、近くに位置する男体山の名があるのに、帝国書院は日光白根山を何故か省いています。男体山:2486m、女峰山:2483mに対して日光白根山:2577m(2577.1m)。東北地方といったら山形県と福島県以北ですね。新潟県も含めてそれ以北でトップの座を占められるかと思いましたが、新潟県と富山県の東端との県境、及び新潟県と長野県北西端との県境に2600mを越える山が幾つかあります。残念。そこで矢張、関東地方+東北地方+北海道地方で一番高い山は日光白根山であると宣言します。それを「日本の主な山」から忘れては困ります。浅間山(2568m)よりも僅か高いんですからね。

 むかし湯元温泉から外山、前白根山、白根山と辿り金精山手前から再び湯元温泉に下りて来たことがあります。私も山歩きは早いと自負がありましたところ、それこそその倍の早さで下りの途中に追い越される、びっくりした記憶はずっと残っているものです。しかも女性でしたが、如何にも登山慣れた方に見受けられましたので致し方ないです。湯元温泉から白根山山頂へのルートは荒れてしまって今や登る人が殆どいないと、これもI旅館の女将さん曰く。金精峠を越えた菅沼辺りから標高差少なく登れるし、丸沼からロープウェイも途中まで出来ていますから。

 1269mの中禅寺湖湖面に対して湯元温泉の標高は1487mなので、その中間の標高に戦場ヶ原や小田代ヶ原があります。湯元温泉での美味しい夕食をより美味しく頂くにも予めカロリー消費をしておかないと。それと濁り湯も良い気分で浸かれるでしょう。ゆえに、小田代ヶ原を歩いて来ました。赤沼~小田代ヶ原~赤沼で2時間30分弱だったでしょうか。当日午前中雨降りで、余程ぬかるんでいる道を避けて通るものの、道幅全部がぐじゃぐじゃの所は難渋しました。

 途中の道標です。歩き出しはどんよりしていた天候が、明るくなりつつあります。道の両側は熊笹だらけで、草原(湿原)は枯れ草と葉を落とした木々。紅葉や草紅葉の時は綺麗でしょうが、時期が遅いです。水の流れは勿論透き通っています。小田代ヶ原の中心に着きました。

 雲のかぶさった頂上を見せるのが男体山です。ここへ辿り着くまでに一旦舗装道路に出たのですが、小田代ヶ原遊覧の電気バスかなんかが走っていましたよね、それの通り道なんでしょう。空気が大変冷たいのに、余裕なく必死に歩いていると上着を脱いでしまいます。でも途中の木戸に大きな地図が貼ってあり、表示してある印を良く見ると熊出没地点とのこと。幾分ぞっとしました。印は10か所くらいでしたか。鈴は腰に提げていません。しかしもう冬眠の時期でしょうなんて、高をくくっていて良いのか。以後、前後左右の確認が増えました。天気が更に良くなって気分は良好ですが。季節外れの小田代ヶ原は寂しさが一杯。2人パーティーに擦れ違ったのが3回ほど。単独行は私だけ。アヤメなどの花の季節に再び訪ねたいと思うものの、雑踏は気が進みません。赤沼に戻って来る手前に往路で見た道標を再び目にするとほっとします。

 国道120号に出て赤沼バス停へ。バスの時刻表は如何でしょう、今の時刻は14時16分。なになに、14時17分、本当? するとそれこそ直ぐ、南からバスが来ます、定刻通り。こんな事も有り、また何秒の差でもバスに取り残されることもあります。伊豆では1分過ぎてしまって、更なる遅れのバスに乗れたことがあれば、乗り遅れ数分で、ひとバス停歩いていたら後ろから随分遅れたバスに追い抜かされたことも。面白いもんですが、それらは偶然の要素が入っているのかいないのか。直ぐ乗れたバスは湯元温泉を目指し、到着するとチェックインには未だ間があり、「1487m」標識を撮影し湯元温泉源泉を巡る時間が取れました。白濁泉、夕食、生ビール、湯元連山の遠望が待っています。