
あらすじ
大学を中退し、夜の街で客引きのバイトをしている優斗。ある日、バイト中にはなしかけてきた大阪弁の女は、中学時代に死んだはずの同級生の名を名乗った。過去の記憶と目の前の女の話に戸惑う優斗はーー「違う羽の鳥」 調理師の職を失った恭一は家に籠もりがちで、働く妻の態度も心なしか冷たい。ある日、小一の息子・隼が遊びから帰ってくると、聖徳太子の描かれた旧一万円札を持っていた。近隣の一軒家に住む老人からもらったという。隼からそれを奪い、たばこを買うのに使ってしまった恭一は、翌日得意の澄まし汁を作って老人宅を訪れるがーー「特別縁故者」 先の見えない禍にのまれた人生は、思いもよらない場所に辿り着く。 稀代のストーリーテラーによる心揺さぶる全6話。
(第171回 直木賞受賞)
ひと言
今までは自分と直木賞受賞作との相性が悪いのか、自分にとってはどれもパッとしない作品ばかりだったのですが、第170回の万城目 学さんの「八月の御所グラウンド」に続き、これこそ直木賞だと思える作品でした。多くの作家さんがコロナ禍に焦点をあてた作品を多く発表していますが、これはとてもいい。色々な切り口から短編で6つにしたのもとてもいいです。なかでも「ロマンス☆」「特別縁故者」「さざなみドライブ」が好きかな。この本が2024年の本屋大賞のノミネート作品に入っていなかったということは、この本 2025年の本屋大賞!?
「誰が何て言おうと、『子どもができたら産む』って生き物の基本ルールじゃん?それを否定しちゃえる言葉ってこの世にないと思うんだよね。あたしもパパもママもそうやって生まれてきたんだから」
(祝福の歌)
淡々とした語り口は、コップのふちぎりぎりで盛り上がってふるえる水面のような危うさに満ちていた。その下に湛(たた)えた暗い水の深さは、母にしかわからない。
(祝福の歌)