あらすじ
「子どもを、返してほしいんです」親子三人で穏やかに暮らす栗原家に、ある朝かかってきた一本の電話。電話口の女が口にした「片倉ひかり」は、だが、確かに息子の産みの母の名だった…。子を産めなかった者、子を手放さなければならなかった者、両者の葛藤と人生を丹念に描いた、感動長篇。
「子どもを、返してほしいんです」親子三人で穏やかに暮らす栗原家に、ある朝かかってきた一本の電話。電話口の女が口にした「片倉ひかり」は、だが、確かに息子の産みの母の名だった…。子を産めなかった者、子を手放さなければならなかった者、両者の葛藤と人生を丹念に描いた、感動長篇。
ひと言
2016年本屋大賞 ノミネート10作に選ばれている本で、予約を入れて図書館で借りました。
この本346頁の半分を占める第三章 発表会の帰り道 は読んでいて辛かった。第四章 朝が来る 「どん、と強い重みを背中に感じたのは、その時だった。…… 」からはつい先日TVで見た「八日目の蝉」がオーバーラップされて涙が止まらなくなった。
「特別養子縁組は、親のために行うものではありません。子どもがほしい親が子どもを探すためのものではなく、子どもが親を探すためのものです。すべては子どもの福祉のため、その子に必要な環境を提供するために行っています」彼女はそう断言した。「第一に考えているのは、子どもの命を守るということです。生まれた子どもの心身の成長を願って、私たちはこの活動をしています」(第二章 長いトンネル(六))
特別養子縁組で幸せになれる親や子が一人でも多くありますように!
2016年本屋大賞 ノミネート10作に選ばれている本で、予約を入れて図書館で借りました。
この本346頁の半分を占める第三章 発表会の帰り道 は読んでいて辛かった。第四章 朝が来る 「どん、と強い重みを背中に感じたのは、その時だった。…… 」からはつい先日TVで見た「八日目の蝉」がオーバーラップされて涙が止まらなくなった。
「特別養子縁組は、親のために行うものではありません。子どもがほしい親が子どもを探すためのものではなく、子どもが親を探すためのものです。すべては子どもの福祉のため、その子に必要な環境を提供するために行っています」彼女はそう断言した。「第一に考えているのは、子どもの命を守るということです。生まれた子どもの心身の成長を願って、私たちはこの活動をしています」(第二章 長いトンネル(六))
特別養子縁組で幸せになれる親や子が一人でも多くありますように!
長い長い、そして、出口があるのかわからないトンネル。出口がないのではなくて、あくまでも、出口があるかどうかわからない、トンネル。希望はない、光は差さないと言われたらそこで気持ちの区切りがつくかもしれないのに、終わりがあるかどうかがわからないから、人は、縋ってしまう。
(第二章 長いトンネル)
(第二章 長いトンネル)
一回三十万円以上と言われる治療を続ける経済的な余裕は、幸いにしてわが家にはまだあった。しかし、陰性を告げられた一回に消えたものの大きさを思うと、気持ちは挫ける。医師からは、二回目に進むことを勧められ、佐都子も清和も、疲れたように、それに頷いた。無理なのだ、と思っても、けれどまだ、人間は期待をしてしまう。この日々に終わりが来るのではないかと、光など、見えないとわかっていても、前を向いてしまう。二度目の陰性を聞いた日、佐都子も清和も、口数は少なかった。こんなつらいことを、いつまで繰り返すのだろう。期待と絶望。出口はない、と誰かがはっきり言ってくれるなら、もう終わりにできるかもしれないのに、長いトンネルは、先がどんどん、細くはなるけど、ただそれだけで、いつまでもずっと続いていた。
(第二章 長いトンネル(五))
(第二章 長いトンネル(五))
「養子のこと、考えてるの?」どう聞いたらいいかわからなくて、思ったことがそのまま口に出てしまう。考えていたのは佐都子の方だ。自分も同じ気持ちなのに、聞いてしまう。すると、彼が答えた。「――別に、どうしても子どもがほしい、諦められないっていう――どう言ったらいいかな。すごく強い気持ちじゃないんだ。君のために、っていうのともちょっと違う」「ええ」「ただ、テレビで、この団体の人が言ってたことが気になって。これは、親が子どもを探すための制度じゃなくて、子どもが親を探すための制度なんだっていう」「うん」清和が座ったまま、佐都子を見た。淡々とした口調に無理は感じられなかった。「うちには幸い、父親の役割ができる人間と、母親の役割ができる人間の両方がいて、子どもを育てるための環境がある。――この環境が役に立つなら、使ってもらうのもいいんじゃないかと思ったんだ。そんな理由じゃダメかな」「……いいと思うよ」佐都子は笑った。自分の気持ちがようやく見えた気がした。そして、思った。この人が自分の夫でよかった。
(第二章 長いトンネル(六))
(第二章 長いトンネル(六))
「うちの場合は、養子を考えた時、夫に言われた一言がきっかけになりました。血のつながりのない子どもって言っても、もともと、オレと君だって血がつながっていないけど家族になれたじゃないか。きっと、大丈夫だよって」
(第二章 長いトンネル(八))
(第二章 長いトンネル(八))



