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あらすじ
想いがつらなり響く時、昨日と違う明日が待っている!児童養護施設を舞台に繰り広げられるドラマティック長篇。諦める前に、踏み出せ。思い込みの壁を打ち砕け!児童養護施設に転職した元営業マンの三田村慎平はやる気は人一倍ある新任職員。愛想はないが涙もろい三年目の和泉和恵や、理論派の熱血ベテラン猪股吉行、“問題のない子供”谷村奏子、大人より大人びている17歳の平田久志に囲まれて繰り広げられるドラマティック長篇。

 

ひと言
付箋を貼りながら読んで、読み終わったときには20個ほどにもなってしまい、どの部分をこのブログに残そうか迷わされました。
いつものことながら有川さんの本は読了感がすごく良くて、読者を元気づけ爽やかな気持ちにしてくれます。得意な自衛隊ネタもぶっこんできて、アッコちゃんには泣かされるし、ラブコメとまでは言えないけど奏子と久志、和泉と三田村もすごくよかったです。極めつけはハヤブサタロウ。
有川さん、あんたやっぱり最高だよ。いい本を読ませてもらいました。ありがとうございました。

 

 

 

「他の先生は、わたしたちのことかわいそうな子供なんて言わない!」
叩きつけるような声に、自分の言葉が一気に巻き戻った。――初日、洗濯物を畳みながら。初めて会った奏子に、志望動機を話した。……。親に捨てられた子があんなに懐くなんて。実の親に裏切られてるのに、赤の他人とあんな関係が作れるなんて。素直な感想を分かち合いたくて訴えた。俺もあんなふうにかわいそうな子供の支えになれたらなあって。――それは奏子の耳にはどう響いたのか。こう響いたのだと遅ればせながら思い知る。
「施設のこと知りもしない奴に、どうしてかわいそうなんて哀れまれなきやいけないの!?――どうして、」奏子が言葉を切った。言葉が見つからないのではなく、言葉が溢れすぎて却ってつっかえたのだと分かった。
「かわいそうな子供に優しくしたいって自己満足にわたしたちが付き合わなきゃいけないの!? わたしたちはここで普通に暮らしてるだけなのに!わたしたちにとって、施設がどういう場所かも知らないくせに!」その普通がかわいそうだと思うのは悪いことなのだろうか。同じ年頃の子供が親にわがままを言いながら気ままに暮らしているのに、規則だらけの施設で窮屈に暮らさなければならないことは、やはり恵まれていないように思える。……。
「施設のおかげで普通に生活ができるの。そりゃ、規則とかいろいろあるけど、それは施設なんだから仕方のないことでしょ。普通の家だって門限とか家の決まりはあるだろうし、携帯禁止の親だっているだろうし。規則とか集団生活とかめんどくさいなあって思うときもあるけど、前の生活に戻りたいなんて思わない。施設に不満のある子もいるだろうけど、わたしは施設に入れてよかった。施設に入れなかったらと思うと……」ぞっとする、と最後に小さく呟いた。
「……ごめん。俺、考えが足りなくて」奏子にとって施設に入れたことは幸運なのだ。施設のことをよく知りもしない新参者が勝手な思い込みでその幸運を哀れむなど、一体何様になったつもりだったのか。「それと、ありがとう」は? と奏子が怪訝な顔をした。「カナちゃんが教えてくれなかったら、勘違いしたままで他の子供たちにも接するところだった。ありがとう」奏子は拍子抜けしたような顔で横を向いた。三田村の手の中から、摑んでいた温みがそっと抜け出した。まだその手にすがっていたのだと温みが去ってから気がついた。
(1 明日の子供たち)

 

 

 

「必要なものしか存在しない人生って味気ないでしょう」ふっと心に風が吹き抜けたような心地になった。
(4 帰れる場所)

 

 

わたしと彼と、どう世界が違ったのか知りたくて――猪俣に志望動機をそう語った。「世界に、違いはないんだよ」猪俣に打ち明けたことがあるから、今言える。「世界にいろんな人がいて、いろんな事情があるってことを、わたしが知らなかっただけ」両親と死別したわけではないのに施設に入っている渡会の事情を、「気にしない」と言って恋が破れた。自分と違う事情を持っていることを、もし「分かった」と言っていたら。分かった、でも好き。そう言っていたら。そう言っていたとしても、きっと恋は破れた。高校生同士で出会った渡会と和泉では、最初から手に余る恋だったのだ。
 猪俣先生。――あなたは一体何て正しい、「さっき、嘘ついた」え、と首を傾げた渡会に言葉を続ける。「渡会くんのことがあったから、施設の職員を目指したの」渡会は、それはそれは嬉しそうに笑った。その日の食事は奢ってくれた。晴れ晴れとした笑顔を見送った。
普通の家の子で、施設の職員で、和泉に似ている渡会の恋人と、違っていたのはきっと出会うタイミングだけだ。出会う順番が違っていたら、きっと和泉の恋が叶っていた。――そう思うくらいは、許されるだろうか。感謝して、と見たこともない渡会の恋人に呟く。あなたの恋が叶ったのは、わたしが礎になったからよ。鼻の奥がツンとしたが、泣いてたまるものかと前を睨みつけて歩いた。
(5 明日の大人たち)

 

 

親と一緒に暮らせないなんてかわいそうに。――親と一緒に暮らすことが幸せだとは限らない。結婚していても幸せだとは限らないように。施設に入ったことで落ち着いて暮らせるようになる子供は大勢いる。
子供たちを傷つけるのは親と一緒に暮らせないことよりも、親と一緒に暮らせないことを欠損と見なす風潮だ。子供は親を選べない。自分ではどうにもならないことで欠損を抱えた者として腫れ物のように扱われる、そのことに子供たちは傷つくのだ。
(5 明日の大人たち)

 

 

「『日だまり』だけではなく、児童養護関係の施設は常に予算が不足しています。『あしたの家』の先生に訊いたら、児童養護の当事者には社会的な発言権、つまり選挙権がないから、後回しにされやすいと言われました。だから、児童福祉の中でも児童養護はエアポケットに落ちてしまいやすいんだ、と」今まで見聞きしたこと、話したこと全部が奏子の中で咀嚼され、奏子の言葉として出てくる。
「確かに、わたしたちは今は子供です。選挙権もないし、政治家の方は優先しても仕方がないと思われるかもしれません。でも、わたしたちは、生きていればいつか必ず大人になるんです」届け。響け。穿て。――こんなにがむしゃらに祈ったことは今までの人生で一度もない。壇上の奏子の姿がかすんで、三田村は自分が涙ぐんでいることに気づいた。
「『あしたの家』の子供たちは、明日の大人たちです」強固な思い込みの壁にひびが、
「児童養護施設の子供たちは、みんなそうです」砕けるか。「明日、社会に参加するわたしたちのために、養護施設の重要性や『日だまり』の必要性を理解していただけないでしょうか」話し終え、一瞬の静寂。――そして、万雷の拍手。―――砕いた。
(5 明日の大人たち)

 

 

「もっとたくさんの人に、カナの言葉が届かないかな」「今日よりも大きな会で喋るの?」「そうじゃなくて」例えばだけど、と久志は口の中で言葉を転がした。「………誰か、有名な作家さんに手紙を書いて、施設や『日だまり』のこと本に書いてもらったりとかさ」まるで、地面から風が吹き上がるような、思い込みの壁が砕けた向こうへ、
「……そしたら、日本中の人に読んでもらえるね」飛んでいけ。「誰に書いてもらったらいいか、考えたんだけどさ」「そんなの」奏子は遮った。
「そんなの、ハヤブサタロウの作者しかいないでしょ」「だよな!」
(5 明日の大人たち)

 

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あらすじ
ある雨の日の夕方、ある同じ町を舞台に、誰かのたったひとことや、ほんの少しの思いやりが生むかもしれない光を描き出した連作短篇集。夕方五時までは帰ってくるなと言われ、雨の日も校庭にたたずむ生徒と新任教師との心のふれあいを描く「サンタさんの来ない家」をはじめ、娘に手を上げてしまう母親とママ友との物語、ひとり暮らしが長くなった老女と、家を訪ねてきたある男の子との物語など、胸を打つ作品を五篇収録。
人間の優しさとその優しさが生む光が、どれほど尊くかけがえのないものかをあらためて感じさせる感動作。
(2013年本屋大賞 4位)

 

ひと言
「世界の果てのこどもたち」がよかったので、もう一冊中脇さんの本を読みたくなって借りました。2013年本屋大賞4位の本で気にはなっていましたが、知らない作者と「きみはいい子」という本のタイトルから 自分の好きなジャンルの本ではないんだろうと勝手に決めつけ、今まで読まなかった本でした。
読みだすとぐいぐい引き込まれて寝るのを忘れて読みました。中脇さんがこの本の中で使う、幸も不幸をも含んだ運命の巡りあわせである「仕合わせ」。「たとえ別れても、二度と会わなくても、一緒にいた場所がなくなってしまったとしても、幸せなひとときがあった記憶が、それからの一生を支えてくれる。どんなに不幸なことがあったとしても、その記憶が自分を救ってくれる」という「うそつき」の最後の言葉がすごく心に残りました。すてきな作品をありがとう。
呉美保監督で映画化されDVDにもなっているということなので、今度是非観てみたいです。

 

 

こどもは、ひとりひとり違う。ひとりひとりが違う家に育ち、違う家族に見守られている。そして、学校にやってきて、同じ教室で一緒に学ぶ。一枚のTシャツだって、一本の鉛筆だって、この子のためにだれかが用意してくれた。そのひとたちの思いが、この子たちひとりひとりにつまっている。そのだれかは、昨日はこの子たちにごはんを食べさせ、風呂に入れ、ふとんで寝かせ、今朝は朝ごはんを食べさせ、髪をくくったりなでつけたりして、ランドセルをしょわせ、学校に送りだしてくれたのだ。
そんなあたりまえのことに、ぼくはやっと気づいた。ぼくは、この思いにこたえられるんだろうか。目の前の三十八人のこどもたちが、輝いて見えた。
(サンタさんの来ない家)

 

 

その母親の母親、ミキのおばあちゃんに、ぼくは一度だけ会ったことがある。がんも末期だった。ミキとミキのおかあさんと一緒に、病室にあいさつに行った。看護師に呼ばれたミキとミキのおかあさんが席を外したときに、おばあちゃんがぼくに言った。
「ミキはなあ、あいつは、卵の黄身がきれえなんだ。」おばあちゃんにとって、ミキは、たったひとりの孫だった。「おれもきれえなんだけんど、ミキがかわいそうだから、食ってやってたんだ。」おばあちゃんはぼくを見上げた。痛みどめがきいているのだろう。とろんとした目だった。寝ぼけているのかと思うくらい。「おめえ、わかんかなあ、そうゆうん。」「わかります。」ぼくは即答した。おばあちゃんはゆっくりほほえんだ。そのまままどろんでしまいそうなたよりなさだった。おばあちゃんは結婚式までは生きていられなかった。ぼくが言葉を交わしたのは、それが最初で最後だった。
ぼくも卵の黄身はきらいだった。だから、ぼくとおばあちゃんは同じだ。ミキの喜ぶ顔を見たくて、ミキが叱られるのを見たくなくて、黄身を食べていたおばあちゃん。ぼくは、ミキのおばあちゃんがだいすきだ。ぼくも、ミキの喜ぶ顔を見たかった。ミキとはじめてゆで卵を食べたとき、ぼくはミキの分の黄身を食べた。「おばあちゃんとおんなじだ。」ミキはわらった。ミキの知らない、ぼくとミキのおばあちゃんの同じところ。ほんとは、卵の黄身がきらいなところ。このことは、絶対、ミキには言わない。ミキはいつものようにわらいながら、白身をおいしそうに食べている。ミキがわらっているから、美咲も優介もだいちゃんもわらっている。それを見ているぼくまでわらってしまう。
(うそつき)

 

 

ブランコは雨にうたれながら、ぎいこぎいことゆれた。「どうしたの? まさかブランコに乗りたいの?」おかあさんはわたしをふりかえった。「雨が降ってるから、だめだよ。ぬれちゃうでしょ。」おかあさんはこたえなかった。わたしはひとつの傘の中で、おかあさんをみつめた。おかあさんのうしろで、ブランコがひとりでゆれる。ぎいこぎいこ。ぎいこぎいこ。わたしは、この光景をおぼえていた。おかあさんのうしろで、ブランコがひとりでゆれていた。ぎいこぎいこ。ぎいこぎいこ。雨は降っていなかった。晴れた日の夕暮れ。影が長くのびていた。地面はさらさらに乾いていた。風が吹いていた。わたしの目には砂が入っていた。おかあさんはわたしの前にしゃがんで、わたしの目をのぞきこんでいた。わたしは泣いていた。痛くて閉じようとする目を、おかあさんが無理に指でひろげた。わたしはのけぞって逃れようとしたが、おかあさんの力は強かった。わたしをおさえつけて、わたしの目を舌でぺろんとなめた。わたしは目を開いた。もうどこも痛くなかった。おかあさんのうしろで、ブランコがひとりでゆれていた。ぎいこぎいこ。ぎいこぎいこ。おかあさんはわらっていた。顔全体で。ブランコがゆれていた、一瞬のことだった。「おかあさん。」わたしはおかあさんに言った。「思い出したよ。」おかあさんはこたえなかった。ふと、ゆれるブランコをふりかえった。「おかあさん、おうちに帰ろう。」わたしはおかあさんの腕を離し、手をつなぎなおした。おかあさんはつながれた手を見てから、顔を上げて、わたしをみつめた。「おねえちゃん、だれ?」わたしはわらって、こたえた。「かよちゃんだよ。今から、ふうちゃんのおうちに、連れてかえってあげるからね。」「かよちゃん。」「そう、かよちゃんだよ。」わたしがわらいかけるのにつられたように、おかあさんはわたしの手につながったまま、こわばった唇のはしだけでわらった。みわの家はこの先。わたしはおかあさんとならんで、歩きだした。これから、おかあさんを捨てていく。みわの家に捨てていく。
おかあさんを捨てても、わたしは、この記憶を持っていこう。雨にけぶるブランコをふりかえって、誓った。この記憶だけは忘れないで、持っていこう。わたしが年を取って、なにもかも忘れてしまっても。わたしは雨の中で、おかあさんの手をにぎりしめた。
(うばすて山)

 

今日は56歳の誕生日。前から作ってみたかったTOMIZ(富澤商店)の冷凍スポンジケーキと中沢乳業の生クリームでケーキを作ってみました。

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この前TVで観た堂島ロールの生クリームのレシピをアレンジしてマスカルポーネを混ぜたものでクリームを作ります。
中沢のフレッシュクリーム 36% 1パック(200ml)
雪印の植物性脂肪 ホイップ 60cc
牛乳 30cc  グラニュー糖 小さじ6  練乳 3~4滴

マスカルポーネチーズの分量と入れるタイミングがわからないのでネットで調べましたが、記事もまちまちなので今回は 150gにし、6~7割くらい泡立てた所で入れてみました。

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氷の代わりに、冷凍庫にあった保冷剤に水を入れてボールを冷やします。
レシピでは 9割ぐらい泡立った所で練乳を3~4滴 入れるということでしたが、これは入れ忘れてしまいました。残念!

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夜、家族でお寿司やチキンで誕生祝いの後、ケーキの味見です。
まず外観を見て、飾りつけがセンスなさすぎ!と笑われました。
クリームはあっさりして甘さ控えめだけどおいしい、ロールケーキの方が合うかもとのこと。
フルーツはシンプルにイチゴだけの方がいい、チョコチップ等はいらない 邪魔、スポンジはおいしいとのことでした。

やっぱりロールケーキのレシピで作っただけあって、自分でもふんわりとして甘さ控えめな上品な味だと思います。またこれからも機会があれば作って腕を上げたいと思いました。

今年も、好奇心を失わず 失敗を恐れず いろいろなことに挑戦してみたいです。

56歳のこの一年も いいことが いっぱい いっぱい ありますように!
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あらすじ
戦時中、高知県から親に連れられて満洲にやってきた珠子。言葉も通じない場所での新しい生活に馴染んでいく中、彼女は朝鮮人の美子と、恵まれた家庭で育った茉莉と出会う。お互いが何人なのかも知らなかった幼い三人は、あることをきっかけに友情で結ばれる。しかし終戦が訪れ、運命は三人を引きはなす。戦後の日本と中国で、三人は別々の人生を歩むことになった。戦時中の満洲で出会った、三人の物語。
(2016年本屋大賞 3位)

 

 
ひと言
この本の著者が私よりもひとまわり以上若い1974年生まれということにびっくりし、中脇さんてどういう人なのか、この本を書くきっかけは何なのかを知りたくて読了後すぐに調べてみました。
「小説家になって以来、一人ひとりの記憶を紡ぐ形で戦争を描きたいという思いがずっとありました」
当時の経験を聞かせてもらうため、日本だけでなく、何度も中国、韓国を訪れたり、舞台となる3国の年表を作成し、徹底的に頭に叩き込むことから始めたそうです。
「70年経っても消えない怒りや悲しみを受け取っては心を揺すぶられていましたが、実際に戦争を経験された方の苦しみにはくらべようもない小さなもの。その10分の1でも小説を通して伝えられたら、という一心で、泣きながら筆を進めました。決して楽なことではなかったけれど、お話を伺った方みなさんの想いを託されていましたので、書き上げることができました」
「すべての大人にこども時代があったことを思うとき、すべてのこどもに幸せなこども時代があってほしい。幸せと感じられる瞬間がどの子にもあってほしい。そんな願いを込めました」

 

 

この本は昨年の最後の一冊にと読み始めましたが、年明けまでかかってしまいました。
昨年の最後の一冊、今年の最初の一冊にふさわしい本でした。
1月18日、2017年の本屋大賞の一次投票の結果が発表され、ノミネート10作品が発表になります。今年も多くのいい本に出会えますように!

 

 

武は、殴られて腫れあがった足を引きずって歩く福二に肩を貸していた。すると、並んで歩いていた中年の中国人の男が中国語で話しかけてきた。「あんたたちは戦争に負けてこんなにひどい目に遭わされているが、なぜかわかるか」武がこたえられずにいると、男は言った。「あんたたちをこんなにひどい目に遭わせるのは、私たち中国人がこれまで、日本人にひどい目に遭わせられたからだ。今、あんたたち日本人が日本に帰ってしまったら、もう私たちが日本人に会うことは二度とない。だから私たちは今、あんたたちをひどい目に遭わせるのだ」そう言い放った男は、手になにも持っておらず、略奪に加わっていたわけではないようだった。武はうちのめされた。一言も言い返せず、男が頷いて立ち去るのを見送ることしかできなかった。(二十二)

 

 

「ぼくはあのときのことをずっと後悔してる」けれども、朋寿は美子から目をそらして言った。「別のやり方はなかったかと思ってる。ずっと思ってる。殴るんじゃなくて、なにか別のやり方。やればやられる。憎まれる。考え方がちがう、やり方がちがう、それで共和国は侵攻した。韓国はやり返した。そして祖国は分断したままだ。そうじゃなくて、そういう連鎖を断ち切るやり方。だからぼくは美子に会うのがこわかった。あんなやり方しかできなかった自分は、嫌われて当然だと思ってたから」美子は思いだした。土手の上で、朋寿が握っていた石。血がついた石を、朋寿は川に投げた。投げてしまっても、消えない。川に沈んで、きっとそこに今もある。朋寿が殴りつけた日本人の男の子たちの心の中にも。「人を守るってこわいことだと思う。ぽくは今も別のやり方を探してる。今度同じことがあったとき、まだぼくはどうしたらいいのかわからない」美子にもわからなかった。(三十六)

 

 

茉莉はある日、スタッフがこどもたちの髪を切っている間、園庭でこどもたちと遊んだ。一番小さい子は二歳ぐらいだった。大きいお兄ちゃんやお姉ちゃんに挟まれ、その女の子は転んだ。泣くだろうと思ってそばに寄っていったが、女の子は泣かず、自分で立ちあがった。茉莉はのばした手を引っ込めた。「あの子はどういう子なんですか。小さいのにずいぶん強い子ですね」茉莉が施設の職員に訊ねると、中年の女性職員は「ああ」と頷いた。「生まれたときからここにいる子なんですよ。捨てられてたので身寄りがない子で。強いというか、泣かないんですね。手がかからない、いい子ですよ」茉莉はおどろいて職員の顔を見た。泣かないから手がかからない、いい子。茉莉にはちがうとわかった。茉莉は女の子のそばに行ってわらいかけた。女の子はひざをすりむいていた。真っ赤な血がにじみ、珊瑚の粒のように丸く光っていた。ああ、この子は泣くことを忘れている。茉莉にはわかった。焼け跡にいた、自分みたいに。茉莉は女の子のそばにしゃがみ、その顔を見上げた。女の子の大きな澄んだ目は、まばたきもしなかった。「痛いでしょう」茉莉は訊いたが、女の子は茉莉の目をみつめかえすばかりだった。「泣かなきゃだめよ」茉莉は言っていた。この子は泣かなくてはいけない。この子を泣かせたい。「お名前はなんていうの?」「うたこ」歌子は答えた。茉莉は歌子を引き取った。それからうたと呼んで育てた。(四十一)

 

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今年は今日が仕事始め。今年最初のランチに選んだのは柳橋の「ラーメン大河」。
地元で人気の「如水」グループがプロデュースするお店です。今日は小寒で、お昼は風が強く、市場内の通路で営業しているお店に容赦なく吹き込みます。その寒さの中でラーメン 全部のせ(650+200円)をいただきます。まずスープを一口。あっさりの醤油味でこれ大好きかも。味玉もグッド!。半分ほど食べて、テーブルの上のカツオ風味の辛味調味料「スタミナ」を入れると味がしまりこれもおいしいです。
最近そしてお正月においしいものを食べすぎてぽっこりしてきたお腹に気をつけなければいけないのにスープを全部飲み干してしまいました。ごちそうさまでした。

 

ラーメン大河(食べログ)
名古屋市中村区名駅4(マルナカ食品センター1F)

 

3週間ほど前に今年2回目のギックリ腰になりました。今は良くなったのですが、ここ数日の寒さと腰の用心のため、最近は年末に「一年間ほんとうにありがとうございました」の想いでお詣りする神宮への参拝も今年は控えて家にいます。

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真珠湾から帰った翌日の今日、稲田朋美防衛相が靖国神社を参拝されました。
稲田さんは靖国に眠る英霊に、
今年は5月にオバマ大統領がヒロシマを訪れてくれたこと。
安倍首相 オバマ大統領と一緒にアリゾナ記念館へ慰霊に訪れたこと。
今年の8月15日に参拝できなくて無念であったことを
防衛大臣として初めて靖国を訪れて報告し、不戦の誓いを新たにし
祖国のために命を捧げた方々のおかげで今日の平和な日本
が築けていることへの感謝を伝えに行かれたんだと思います。

私も安倍首相が語った「寛容の心」「和解の力」を心にとどめ、
稲田さんが述べた「忘恩の徒」にならないように留意し、
感謝の気持ちを忘れることなく来年も健康に過ごせたらと思います。

今年1年間ほんとうにありがとうございました。

【2016.12.31 追記】

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親父、今年も家族みんなが健康に過ごすことができました。
ありがとう。
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「聖」のかつ丼を食べた後のデザートに、JR名駅 中央コンコースにある「カフェ・ジャンシアーヌ」のぴよりん(320円)を買いました。前から食べてみたいと思っていた大人気の名古屋コーチンのひよこプリンです。
可愛いすぎて、食べるのが少しかわいそうでしたが、おいしいかったです、ごちそうさま。

 

ジャンシアーヌ(食べログ)
名古屋市中村区名駅1(JR名古屋駅 名古屋中央通り)

 

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今年のランチの〆は柳橋の「かつ丼と珈琲 聖」のかつ丼 玉子W 大盛り(1000円)です。
日曜日のTVで照英さんが食べていて、今日もTVの取材が来ていた大人気のお店です。カツの下にトロトロの玉子がWでひいてあり、カツのサクサク感を最後まで損なわない後味のすごくいいかつ丼です。今年の〆にふさわしく、とても美味しかったです。ぜひまた食べに行きたいです。ごちそうさまでした。

 

かつ丼と珈琲 聖(食べログ)
名古屋市中村区名駅4(マルナカ食品センター1F)

 

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あらすじ
人の心の中には、どれだけの宝物が眠っているのだろうか…。つらくて、切なくても、時の流れのなかでいきいきと輝いてくる一瞬を鮮やかに描く。作者自身が「これまで書いた自分の作品の中で、いちばん好きです。これが書けたので、小説家になってよかったと思いました」と、あとがきに書くほどの、表題作をはじめ5編のラブストーリーから成る短編小説集。

 

ひと言
もう一冊ばななさんを読みたくて、ネットで探していたところ、作者が一番好きな作品という言葉と読者のカスタマーレビューを読ませてもらってこの本に決めました。ばななさんは「これを書いてほんとうによかった」と書かれましたが、私は「この本に出会えてほんとうによかった」です。
「デッドエンド」という本のタイトルの通り、これからの生活の中で何か「行き止まり」を感じたときにもう一度読み返したいなぁと思いました。
ばななさん すてきな作品をありがとうございました。

 

 

私なんか、この世にいてもたいしたスペースはとっていない、そういうふうにいつでも思っていた。人間はいつ消えても、みんなやがてそれに慣れていく。それは本当だ。でも、私のいなくなった光景を、その中で暮らしていく愛する人々を想像すると、どうしても涙が出た。私の形をくりぬいただけの世の中なのに、どうしてだかうんと淋しく見える、たとえ短い間でも、やがて登場人物はいずれにしても時の彼方へみんな消え去ってしまうとしても、そのスペースがとても、大事なものみたいに輝いて見える。まるで木々や太陽の光や道で会う猫みたいに、いとおしく見える。そのことに私は愕然として、何回でも空を見上げた。体があって、ここにいて、空を見ている私。私のいる空間。遠くに光る夕焼けみたいにきれいな、私の、一回しかないこの体に宿っている命のことを。
(おかあさーん!)

 

 

ちょうど飼われている鳥が鳥かごからうっかり出てしまったみたいに、その事件をきっかけにあの時私はいつのまにか、知っている世界の外側にいた。外は暗くて、風がごう、ごう吹いていて、星がちかちかとまたたいていた。一瞬だけでも外に出てみたのが、この人生というかごの鳥に、結局はいつだって戻っていく私にとっていいことだったのかなあ? と思うことが、今でもある。そして、いつだって答えはなぜか同じなのだ。
「よかったんだ」と優しい声がしてくる。どこからともなく、くりかえし、子守唄みたいに、私が生きていることを肯定するかのように。まるで春先にいっせいに草や木の芽が生えてきて、全部が黄緑色になるときみたいに勢いよくかつ柔らかく、その響きは聞こえてくる。だから私は少し目を閉じて、不思議ななりゆきで、外側から見てしまった自分の世界を肯定する。そして、いつかの時に別れていった人たちのために祈りをささげる。
(おかあさーん!)

 

 

ああ、これが、長く続くということの意味なんだ、と私は思った。頼もしいだけではない、たくましいだけではない。いつもそこにある川のように、全てを飲み込み、なかったことみたいにどんどん進んでいくのだ。
(あったかくなんかない)

 

 

「人がさ、暮らしている明かりって、なんとなくあったかいものなんじゃないのかな?」まことくんはしばらく考えこんで、こう言った。「ううん、僕、中にいる人の、そのまた中にある明るさが、外に映っているから明るくてあったかく感じるんじゃないかと思うんだ。だって、電気がついていても淋しいことって、たくさんあるもの。「人が明るいの?」「人の気配が、照らしてるんだよ。きっと。だからうらやましく思ったり、帰りたいと思うんじゃないかなあ。」
(あったかくなんかない)

 

 

あの日々は、どうしようもない気持ちだった私に神様がふわっとかけてくれた毛布のように。たまたま訪れたものだった。カレーを作っていて、たまたま残ったヨーグルトやスパイスやりんごなんかを入れているうちに、そして玉ねぎの量なんかをちょっと多くしたりしたら、本当に百万分の一の確率で、ものすごくおいしいものができてしまったような、でも、二度とは再現できない、そういう感じの幸せだった。
誰にも何にも期待してなくて、何も目指してなかったから、たまたますごくうまく輝いてしまった日々だった。それがわかっているから切なくて、感謝もひとしおだった。
「いろいろありがとう、なんだか、ありえないことたんだけど、すごく楽しかったわ。本当にありがとう、一生感謝してるし、一生忘れない。」
(デッドエンドの思い出)

 

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「まぐろや柳橋」の三色丼を食べた後、すぐ近くの「天ぷらとワイン 小島」を覗くと、さっきまでは5人以上の行列ができていたのにすぐに入れるではありませんか。師匠も私も考えていることは同じ、「もう 食べるっきゃないでしょう」ということで お好み天定食(790円)をいただきます。
揚げたてサクサクのおいしい天ぷらが7、8種、それも冷めないように2回に分けて出されます。これが大根おろしの天つゆとよくあってとてもおいしいです。これにご飯と魚の汁物がついて790円!これ以上はないほどのコスパです。次回は名物の大アサリ天ぷらもいただきたいです。ごちそうさまでした♪。

 

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天ぷらとワイン 小島
名古屋市中村区名駅4(マルナカ食品センター1F)