あらすじ
殿中でござる! ご存知赤穂浪士の討ち入り!
江戸時代に本当にあった事件を室町時代に舞台をうつし、歌舞伎や文楽で演じられる。討ち入りまでの流れをとてもスムーズに落語家の語りを生かして伝えている。
殿中でござる! ご存知赤穂浪士の討ち入り!
江戸時代に本当にあった事件を室町時代に舞台をうつし、歌舞伎や文楽で演じられる。討ち入りまでの流れをとてもスムーズに落語家の語りを生かして伝えている。
ひと言
図書館の新着コーナーに置かれていて、忠臣蔵 大好きな私のこと、ちょっと手に取って見てみると少年少女向きの本ながら、大序 鶴岡の兜改め から涙、涙の九段目 山科の雪転(山科閑居)、十一段目 合印の忍兜(討ち入り)までしっかりと書かれており、読んでみると、これまた面白かったです。
そういえば、2003年の「忠臣蔵 決断の時」という10時間超ワイド時代劇で蟹江敬三さんが演じる加古川本蔵がすごくよかったのを思い出しました。また久しぶりに観てみよう♪。「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」も観てみたいなぁ。忠臣蔵はやっぱりいいなぁ、日本人の心だなぁとあらためて思いました。
図書館の新着コーナーに置かれていて、忠臣蔵 大好きな私のこと、ちょっと手に取って見てみると少年少女向きの本ながら、大序 鶴岡の兜改め から涙、涙の九段目 山科の雪転(山科閑居)、十一段目 合印の忍兜(討ち入り)までしっかりと書かれており、読んでみると、これまた面白かったです。
そういえば、2003年の「忠臣蔵 決断の時」という10時間超ワイド時代劇で蟹江敬三さんが演じる加古川本蔵がすごくよかったのを思い出しました。また久しぶりに観てみよう♪。「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」も観てみたいなぁ。忠臣蔵はやっぱりいいなぁ、日本人の心だなぁとあらためて思いました。
その昔、平安時代に書かれた『伊勢物語』という、お姫様用の恋の教科書としても読まれた物語がありましてね。その第十三役に、武蔵の国の男が京都の女にむけて「武蔵鐙(あぶみ)さすがにかけて頼むには問はぬもつらし問ふもうるさし」と、恋の歌を書いた手紙を出したという話がある。 で、高師直の官職が武蔵守。つまり、武蔵鐙の恋の歌と、自分とを重ね合わせたわけです。「自分じゃ、しゃれてるつもりだろうけど、気持ち悪いだけなんだよ、サル顔のスケベオヤジ!」とはいわなかったものの、そういう気持ちをこめて、顔世御前は恋文を投げ返そうとしました。が、すんでのところで、思いとどまりました。
(大序 鶴岡の兜改)
(大序 鶴岡の兜改)
迷ってはみたものの、武士たるもの、いかなることであろうと、主君の命令には従うものと思い直した本蔵は、脇差しと大きな刀の両方をぬくと、それぞれをぶつけて、かちんかちんと音をたてました。「金打」(きんちょう)といって、「約束を破ったときは、もう二度と大小の刀をさしません」、つまり武士をやめます、死んでおわびをしますという、独特の儀式です。歌舞伎や、時代劇でも、ときどき見ることができますよ。以上、時代劇豆知識でした!
(二段目 諫言の寝刃)
(二段目 諫言の寝刃)
が、文箱を開いて、手紙に目を通したとたん、その顔がみるみるこわばりました。たしかに、そこには返歌が書いてありましたが、それはこんなものだったからです。
『さなきだに 重きが上の さよ衣 わがつまならぬ つまな重ねそ』
ね? 師直さんが、むっとしたのも、当然でしょ? え? なにいってるのか、さっぱりわからない? いや、実は、あたくしにもぜんぜん……。と、それじゃあ話が進みませんので、あたくしも意味を調べましたよ、はい。この歌は、鎌倉時代の『新古今和歌集』の中にある、寂然法師という方が詠んだものだそうです。「さよ衣」とは、夜寝るときにまとう着物で、いまでいう、かけぶとんなので、あたたかく寝られるように綿が入っていて、重いんだそうです。「つま」は、着物の左右のえりからすそまでの、はしっこの部分のことですが、同時に「妻」、つまり女性のことをもさしている。そこで、こんな意味になるらしいんですな。「そうでなくても、かけぶとんは、重いもの。自分のふとん(自分の妻)以外に、別のふとん(別の女)をかけるもんじゃない」これで、おわかり? 「不倫はいかんぞ!」といってるんです。こんな歌を、師直さんからのラブレターの返事にするってことは、「いいかげんにしなさい! わたしは塩谷判官の妻で、あんたなんかに興味なし!」と、きっぱりと断ったということ。
(三段目 恋歌の意趣)
『さなきだに 重きが上の さよ衣 わがつまならぬ つまな重ねそ』
ね? 師直さんが、むっとしたのも、当然でしょ? え? なにいってるのか、さっぱりわからない? いや、実は、あたくしにもぜんぜん……。と、それじゃあ話が進みませんので、あたくしも意味を調べましたよ、はい。この歌は、鎌倉時代の『新古今和歌集』の中にある、寂然法師という方が詠んだものだそうです。「さよ衣」とは、夜寝るときにまとう着物で、いまでいう、かけぶとんなので、あたたかく寝られるように綿が入っていて、重いんだそうです。「つま」は、着物の左右のえりからすそまでの、はしっこの部分のことですが、同時に「妻」、つまり女性のことをもさしている。そこで、こんな意味になるらしいんですな。「そうでなくても、かけぶとんは、重いもの。自分のふとん(自分の妻)以外に、別のふとん(別の女)をかけるもんじゃない」これで、おわかり? 「不倫はいかんぞ!」といってるんです。こんな歌を、師直さんからのラブレターの返事にするってことは、「いいかげんにしなさい! わたしは塩谷判官の妻で、あんたなんかに興味なし!」と、きっぱりと断ったということ。
(三段目 恋歌の意趣)
戸無瀬は、はっと目を見開きました。「釣り合いがとれない? とんでもありません。由良之助殿もわが夫も、同じ家老の職とはいえ、わが夫の主人、桃井若狭之助様は小大名。家老としての給料も、由良之助殿の給料の三分の一ほど。由良之助殿が浪人の身になったいまも、たいした差はございますまい」「いやいや、わたしが申しているのは、お金の話ではなく、心の話でございます」「心? 大星家と加古川家とでは、心が釣り合わないと、おっしゃるのか? それはどちらかの心が上で、どちらかが下ということか? どういうことか、お話いただきましょうか」思いも寄らない展開に、戸無瀬の顔が、さっと青ざめる。一方、お石の表情も、さっきとはうってかわって、きりっとひきしまります。「では、申しましょう。主君、塩谷判官のご切腹は、短気をおこした責任を取らされたもの。ですが、それもこれも、お心が正直だったからこそ。それにひきかえ、桃井様は、高師直に金や銀の賄賂を贈っているそうな。そんなへつらい武士の家老の加古川様と、亡き殿に忠義ひとすじの大星家とでは、心の釣り合いが取れないといっているのです」「へつらい武士ですと! 聞き捨てなりません!」
……。……。
「わたしがいっているのは、そのようなものではありません!」「では、いったい何をお望みで?」「この三方には、加古川本蔵殿の首をのせていただきましょう」思いも寄らない言葉に、戸無瀬は、ええっと、のけぞりました。「い、いったいなぜ……」「主君の塩谷判官が、高師直に斬りかかったとき、後ろから抱きとめたのは、あなたの夫、加古川本蔵殿。そのせいで、師直はかすり傷で逃げ出すことになり、殿はご本望を遂げられないまま、ご切腹。□にはお出しにはなりませんでしたが、殿のご無念の中には、本蔵殿への憎しみがあるはずです。その本蔵殿の娘を、喜んで妻に迎えるような力弥ではありません!」「し、しかし……」「どうしても、祝言をあげたいというのなら、この三方に本蔵殿の首をのせてください。さあ、どうします! はいか、いいえか、はっきりしていただきましょう!」あまりに鋭いお石の言葉に、戸無瀬も、思わずうつむいたそのときです。 「では、加古川本蔵の首、さしあげましょう」 戸口の方で声がしたと思ったら、外から虚無憎が入ってきました。そして、かぶっていた笠をぱっと投げ捨てると、下から現れたその顔に、あっと声をあげたのは、小浪と戸無瀬で。「と、父様!」「本蔵様!おまえ様、いったい、どうして……」「ええい、二人とも、みっともない声をあげるでないわ!」加古川本蔵は、妻と娘を一喝すると、お石に向きあいまして。 「お石殿。あなたなら、きっと、わたしの首をよこせというだろうと思っていましたよ。しかし、それは本物の武士がいう言葉。由良之助殿のように、浴びるほど酒を飲み、遊びほうけるような、ばか者には似合いません。そして、蛙の子は蛙ともいいますから、その息子の力弥殿も、親に劣らぬ大ばか者でしょう。そんな者の祝言のために、この首、切らせはしませんぞ!」本蔵は、憎々しげにいうと、ばーんと三方をふみつぶしたもんだから、お石も、かあっと頭に血が上りました。「いくらなんでも、いいすぎでしよう! こうなったら、不肖ながらわたしも大星由良之助の女房、お相手いたしましょうぞ! いざ、勝負!」
……。……。
大声をあげて飛び出してきた大星力弥は、落ちていた槍を拾うが早いか、本蔵のわき腹に、ぐさりと突き立てました。不意を突かれた本蔵は、うっと、うめくのが精一杯。そのまま、どさりと倒れこむ。「と、父様!」 「本蔵殿!」 妻と娘が二人して、がばっと取りつき、泣き出すのもかまわず、力弥はとどめを剌そうと、槍をかまえなおす。が、しかし! 「待て、力弥! 早まるでない!」後ろから声がしたと思ったときには、がしっと槍をおさえられておりました。 「ち、父上!」そうです。ここで、大星由良之助の登場です! 由良之助は、驚く力弥にかまわず、瀕死の傷を負った本蔵をふりかえりまして。「ひさしぶりだな、本蔵殿。計略通りにいって、さぞ満足だろう」「さすがは由良之助殿。すべて、お見通しであったか」 本蔵は、大きく目を見開くと、深々と、何度もうなずいています。 「あのとき塩谷判官殿を抱きとめたのは、師直が死にさえしなければ、切腹にはなるまいと思ったからだ。が、考えが浅かった。加古川本蔵、一生の不覚、すべてはわたしの罪。こうなったからには、どうにかして殺してもらおうと、こうしてやってきたのだ」なんと、お石をバカにしたり、投げとはしたりしたのも、力弥を怒らせ、自分を殺してもらうためだったというんだから、びっくりです!「思い通りに、力弥殿の手にかかり、首をさしだすことができる。由良之助殿、これで小浪を嫁にしていただけるのなら、未来永劫、そのご恩は忘れぬ。武士ならば主君のために投げ出す命を、こうして子のために投げ出す親心を、どうか、どうか、わかっていただきたい!」あまりの言葉に、戸無瀬も小浪も、声をあげて泣き伏すばかり。
……。……。
「由良之助殿も、力弥殿も、主人の仇を討った後は、ほかの主人に仕えることなく、雪のように消えようというお考えでしょう? ああ、そうか、だから、力弥殿は小浪を離縁しようとなさったのですね。夫婦となって、すぐに死に別れは小浪がかわいそうだと。そんなこともわからず、お石さんをうらんだりして、わたしは、なんてバカだったんでしょう……」「いいえ、うらんで当然ですよ。わたしも、わざととはいえ、ずいぶんとむごいいい方をいたしましたから。それにしても、家柄もよく、かわいい娘さんが、どうしてまた、こんな不運な目にあわなければならないのでしょうか……」 お石と戸無瀬は手をとりあって、さめざめと涙を流しています。それを見た本蔵は、苦しい息の下で、うれし涙を流しました。
「ああ、よかった……。忠臣の中の忠臣、大星由良之助殿の息子に、わが娘が嫁ぐとは、帝に嫁ぐ以上の誉れ。大手柄をあげた娘の婿殿へ、この引き出物をさしあげたい……」本蔵は懐から手紙のようなものを取り出すと、力弥に差しだしました。力弥は、うやうやしく押しいただいてから、さっそく開いてみると。 「こ、これは、師直の屋敷の絵図面……」
(九段目 山科閑居)
……。……。
「わたしがいっているのは、そのようなものではありません!」「では、いったい何をお望みで?」「この三方には、加古川本蔵殿の首をのせていただきましょう」思いも寄らない言葉に、戸無瀬は、ええっと、のけぞりました。「い、いったいなぜ……」「主君の塩谷判官が、高師直に斬りかかったとき、後ろから抱きとめたのは、あなたの夫、加古川本蔵殿。そのせいで、師直はかすり傷で逃げ出すことになり、殿はご本望を遂げられないまま、ご切腹。□にはお出しにはなりませんでしたが、殿のご無念の中には、本蔵殿への憎しみがあるはずです。その本蔵殿の娘を、喜んで妻に迎えるような力弥ではありません!」「し、しかし……」「どうしても、祝言をあげたいというのなら、この三方に本蔵殿の首をのせてください。さあ、どうします! はいか、いいえか、はっきりしていただきましょう!」あまりに鋭いお石の言葉に、戸無瀬も、思わずうつむいたそのときです。 「では、加古川本蔵の首、さしあげましょう」 戸口の方で声がしたと思ったら、外から虚無憎が入ってきました。そして、かぶっていた笠をぱっと投げ捨てると、下から現れたその顔に、あっと声をあげたのは、小浪と戸無瀬で。「と、父様!」「本蔵様!おまえ様、いったい、どうして……」「ええい、二人とも、みっともない声をあげるでないわ!」加古川本蔵は、妻と娘を一喝すると、お石に向きあいまして。 「お石殿。あなたなら、きっと、わたしの首をよこせというだろうと思っていましたよ。しかし、それは本物の武士がいう言葉。由良之助殿のように、浴びるほど酒を飲み、遊びほうけるような、ばか者には似合いません。そして、蛙の子は蛙ともいいますから、その息子の力弥殿も、親に劣らぬ大ばか者でしょう。そんな者の祝言のために、この首、切らせはしませんぞ!」本蔵は、憎々しげにいうと、ばーんと三方をふみつぶしたもんだから、お石も、かあっと頭に血が上りました。「いくらなんでも、いいすぎでしよう! こうなったら、不肖ながらわたしも大星由良之助の女房、お相手いたしましょうぞ! いざ、勝負!」
……。……。
大声をあげて飛び出してきた大星力弥は、落ちていた槍を拾うが早いか、本蔵のわき腹に、ぐさりと突き立てました。不意を突かれた本蔵は、うっと、うめくのが精一杯。そのまま、どさりと倒れこむ。「と、父様!」 「本蔵殿!」 妻と娘が二人して、がばっと取りつき、泣き出すのもかまわず、力弥はとどめを剌そうと、槍をかまえなおす。が、しかし! 「待て、力弥! 早まるでない!」後ろから声がしたと思ったときには、がしっと槍をおさえられておりました。 「ち、父上!」そうです。ここで、大星由良之助の登場です! 由良之助は、驚く力弥にかまわず、瀕死の傷を負った本蔵をふりかえりまして。「ひさしぶりだな、本蔵殿。計略通りにいって、さぞ満足だろう」「さすがは由良之助殿。すべて、お見通しであったか」 本蔵は、大きく目を見開くと、深々と、何度もうなずいています。 「あのとき塩谷判官殿を抱きとめたのは、師直が死にさえしなければ、切腹にはなるまいと思ったからだ。が、考えが浅かった。加古川本蔵、一生の不覚、すべてはわたしの罪。こうなったからには、どうにかして殺してもらおうと、こうしてやってきたのだ」なんと、お石をバカにしたり、投げとはしたりしたのも、力弥を怒らせ、自分を殺してもらうためだったというんだから、びっくりです!「思い通りに、力弥殿の手にかかり、首をさしだすことができる。由良之助殿、これで小浪を嫁にしていただけるのなら、未来永劫、そのご恩は忘れぬ。武士ならば主君のために投げ出す命を、こうして子のために投げ出す親心を、どうか、どうか、わかっていただきたい!」あまりの言葉に、戸無瀬も小浪も、声をあげて泣き伏すばかり。
……。……。
「由良之助殿も、力弥殿も、主人の仇を討った後は、ほかの主人に仕えることなく、雪のように消えようというお考えでしょう? ああ、そうか、だから、力弥殿は小浪を離縁しようとなさったのですね。夫婦となって、すぐに死に別れは小浪がかわいそうだと。そんなこともわからず、お石さんをうらんだりして、わたしは、なんてバカだったんでしょう……」「いいえ、うらんで当然ですよ。わたしも、わざととはいえ、ずいぶんとむごいいい方をいたしましたから。それにしても、家柄もよく、かわいい娘さんが、どうしてまた、こんな不運な目にあわなければならないのでしょうか……」 お石と戸無瀬は手をとりあって、さめざめと涙を流しています。それを見た本蔵は、苦しい息の下で、うれし涙を流しました。
「ああ、よかった……。忠臣の中の忠臣、大星由良之助殿の息子に、わが娘が嫁ぐとは、帝に嫁ぐ以上の誉れ。大手柄をあげた娘の婿殿へ、この引き出物をさしあげたい……」本蔵は懐から手紙のようなものを取り出すと、力弥に差しだしました。力弥は、うやうやしく押しいただいてから、さっそく開いてみると。 「こ、これは、師直の屋敷の絵図面……」
(九段目 山科閑居)


































