あらすじ お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて、あなたにはそうする義務がある―大学二年の春、母校の演劇部顧問で、思いを寄せていた葉山先生から電話がかかってきた。泉はときめきと同時に、卒業前のある出来事を思い出す。後輩たちの舞台に客演を頼まれた彼女は、先生への思いを再認識する。そして彼の中にも、消せない炎がまぎれもなくあることを知った泉は―。
ひと言
2006年版「この恋愛小説がすごい」で第1位に輝いた作品。ナラタージュ【narratage】とは、映画などで、ある人物の語りや回想によって過去を再現する手法らしい。松本潤 有村架純 主演で昨年映画も公開され、DVDもレンタルされているようなので今度観てみたいと思いました。
読者レビューで、ひとことで言うと「恋愛した時のどうしようもない人間の弱さ」の話と書かれた方がありましたが、そうかもしれないなぁと一人で納得してしまいました。
2006年版「この恋愛小説がすごい」で第1位に輝いた作品。ナラタージュ【narratage】とは、映画などで、ある人物の語りや回想によって過去を再現する手法らしい。松本潤 有村架純 主演で昨年映画も公開され、DVDもレンタルされているようなので今度観てみたいと思いました。
読者レビューで、ひとことで言うと「恋愛した時のどうしようもない人間の弱さ」の話と書かれた方がありましたが、そうかもしれないなぁと一人で納得してしまいました。
立ち止まってから小野君はまた口を開いた。 「そういうのってきっと堂々めぐりなんだ。たとえ誰かのせいで不幸になったとしても、人間は基本的に自由なんだから、その不幸から抜け出す努力をすべきなんだよ。死ぬまで誰かのせいにしていたら、なんのために生きていたんだか本当に分からなくなる」 「だけど抜け出せなかったら? たとえば自分がいなくなるとほかの人間が傷つくとか、逃げたいと思っていても状況が許してくれない場合は」 「それは優しさという言葉に置き換えることもできるけど、同時にその人の弱さでもあると思うよ。自分がいなくなって傷つく誰かがいたとしても、その人間はやっぱりまた自分の力でなんとかすることが必要なんじやないかな。寄りかかるのに慣れてしまうと、逆に精神的な足腰がどんどん弱って、よけいにひどいことになるし」
(16)
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「あなたはいつもそうやって自分か関われば相手が傷つくとか幸せにできないとか、そんなことばかり言って、結局、自分が一番可愛いだけじゃないですか。なにかを得るためにはなにかを切り捨てなきゃいけない、そんなの当然で、あなただけじゃない、みんなそうやって苦しんだり悩んだりしてるのに。それなのに変わることを怖がって、離れていてもあなたのことを想っている人間に気付きもしない。どれだけ一人で生きてるつもりなの? あなたはまだ奥さんを愛しているんでしょう。私を苦しめているものがあるとしたら、それはあなたがいつまで経っても同じ場所から出ようとしないことです」 一気に喋ったせいで過呼吸になりそうになった。
葉山先生は身動き一つせず、凍ったように立ち尽くしていた。
(19)
葉山先生は身動き一つせず、凍ったように立ち尽くしていた。
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「分かりました。荷物は紙にリストアップしてもらえればすべて取りに行きます」面倒だとは感じず、むしろ、こういうときにまっさきに必要とされるのはとても嬉しいことだった。 ありがとう、とまだ点滴の針が剌さった腕をこちらにすっと差し出してきた。おそるおそる手を握ると指先がぎょっとするほど冷たかった。コートのポケットの中に入れておいたカイロを取り出して渡した。 「下腹部のほうはまだ痛みますか」 彼の手のひらがカイロを握ったのを確認してから手を離そうとすると、腕の内側に流れる青白い脈が皮膚の下で静かに打っているのを親指の腹に感じた。それだけでなにか自分にとってかけがえのないものに触れたような気がして、しんとした気持ちになった。「いや、だいぶ良くなった。それに」「それに?」「君が来てくれて安心した」「いくらでも安心してください。これからは毎日来ます」「本当に?」 この顔だ、と思った。少年のように無防備な喜び方、そして私は痛烈に実感する。 この人からはなにも欲しくない。ただ与えるだけ、それでおそろしいくらいに満足なのだ。
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