岡山市で路線バス・路面電車の運賃無料DAYが開催 | 世界バス轉運站 -アジアの交通総合ブログ-

世界バス轉運站 -アジアの交通総合ブログ-

韓国、台湾、香港などなど、アジア各国の路線バスを中心に交通、ホテル、グルメに関する情報をお届け!
アジア各国の情報提供強化のため、日本の情報更新は現在縮小中です。

今回は公共交通に関する話題をお届けします。

 

 

2021年11月28日(日)、岡山市では市内を走る路面電車と路線バスを対象に、乗車運賃を終日無料とする「運賃無料DAY」が実施されました。

 

 

 

この運賃無料DAYは岡山市内を走る路面電車(東山線、清輝橋線)と路線バスの運賃が市内外の在住を問わず終日無料になるという取り組みで、路線バスに関しては一部でも岡山市内を通っている路線であればどのバス停で乗降しても無料(一部対象外路線あり)という大盤振る舞いで、玉野市方面、備前市方面、瀬戸内市方面の一般路線バスのほか、高速道経由の勝山行きも対象となったことから、市外へのバスでの観光も無料で行くことができました。

普段は車等で出かける層にバスを利用してもらって便利さを知ってもらい、継続的に公共交通を利用するきっかけにしてもらおうという企画です。

 

 

乗車方式も普段とは少し変わっており、乗車時には整理券を取り、降車時にはその整理券を専用の回収ボックスに入れて降りるという形になっていました。

岡山市内を走る路線バスは普段から整理券を発行していますのでそちらを利用し、一部区間で整理券を発券しない路面電車については専用の整理券を用意し、それを降車時に専用ボックスに入れるか、地上係員の持つ袋へ入れて降車する形になっていました。

整理券の使用された枚数を元に、運賃については全て岡山市が負担することになるようです。

 

 

11月28日の初日は日曜日ということもあり、岡山市内を走る路面電車、路線バスは多くの乗客で賑わい、特に路線バスは激しい混雑となる便が多発しました。これにより、運行にも様々な影響がありました。

 

 

帰宅時間帯になると、岡山駅や天満屋のバスターミナルはバスに乗車する乗客が長蛇の列を作り、1台では乗り切れないほどの人数が並びました。

途中のバス停からの乗車では普段は降車用として使用している前扉からの乗車を特認したり、満員で乗車を断らざるをえないといった状況も多く見かけました。

 

 

バスの遅れも多発し、特に市街地を走る岡電バスでは折り返し便も連鎖して遅れが発生、同じ行き先のバスが2台、3台と連続で到着するような状況もありました。また、岡倉線(岡山駅~中庄駅~倉敷駅)などでは混雑による乗降時間の増加で30分程度の遅れが頻繁に発生しました。

 

 

一方、この運賃無料DAYで普段バスを利用しない方も多くバスを利用しており、特に子供を連れた家族連れがバスや路面電車に楽しく乗車している様子も見ることができました。

また、自宅で過ごしている方を岡山市街地や各地の観光へ出かけるきっかけを作ることにもなり、沿線の飲食店、ショッピングモール、百貨店などに経済効果があったことは間違いないと思います。

ただ、日本人というのは「タダという言葉に弱い人種」でもありますので、正直、継続的に公共交通を利用するきっかけになったかと言われるとそれは違うのではないか、とも感じます。無料だから乗ったがそうでないと使わないという人は相当数いることでしょう。

また、激しい混雑が発生し、途中バス停からの乗車を断らざるをえない状況が多発したことなど、便利さを知ってもらうという趣旨から外れてしまった部分も多くありましたので、そういった点も残念に感じた点です。

 

では、継続して公共交通に乗ってもらうためにはどうすればいいのか? 当ブログではアジア各国の公共交通機関を取り上げていますので、そういった部分にもヒントがあるのではないかと思います。今回は台湾の例を少し見ていきたいと思います。

 

 

1.台北市・新北市 市區公車制度の実施・運賃制度の簡略化

それぞれ自治体の管轄する市區公車として運行し市が運行に関与、運行経費等を自治体が出して事業者の負担を減らしています。

また、運賃は市が策定したものを採用し、1段(初乗り)は15元(ICカードは12元)、長い距離を乗車する場合や高速道路経由の路線では2段、3段という形で、初乗り運賃の金額×2、×3を支払う形でわかりやすい運賃体系を実現しています。

運賃の刻み方は大きくなりますが、1段分で乗れる区間がそれなりに広く設定されていて短距離で高額になるようなことはありません。

さらに毎年事業者の運行の質などを評価して等級分けする評価制度を導入しています。

 

 

2.桃園市 市區公車制度の実施・市民向けICカードを発行し市民に対して特典を付与

台北市、新北市同様に市區公車制度を採用して市が運行に関与し、運行に必要な経費等は自治体が負担し事業者を支援します。

2016年12月1日にはこれまでに桃園市區公車として運行していた路線に加え、市内で各事業者が独立採算制で運行していた公路客運路線の多数を桃園市區公車へ編入し、市内で運行する大半の一般路線が桃園市區公車の路線となりました(運行は引き続き各事業者が実施)。

また、市民向けのIC乗車カードを発行し、1回乗車すれば1回無料となる特典を実施しています。この特典は桃園市區公車路線だけでなく、桃園市から他市へ跨いで運行する公路客運路線や桃園市発着の高速バス路線の一部でも適用されます。

 

 

3.台中市 市區公車制度の実施・10kmまでのバス運賃無料&10km以上の上限運賃10元

台中市でも市區公車制度を採用し、台中市公車として運行しています。運行に必要な経費等は自治体が負担し事業者を支援します。

さらにICカードで乗車した場合は乗車地から10kmまでの運賃が無料、10kmを超えた分も上限運賃が10元となります(現在は台中市民限定)。

現在は市民以外は距離に応じた運賃となっていますが、ICカードでの乗車で5元割引となる割引制度が実施されています。

また、台中市が主体となって新路線の策定などを実施し、市内の事業者に運行を募るなどの取り組みも行っています。

この他、適切な運行が行われていない事業者に罰金を科したり、路線の運行から外すなどの権限を市が持っています。

 

 

4.高雄市 市區公車制度の実施・ICカード利用で3段以上の運賃無料・郊外路線は上限60元

高雄市でも市區公車制度を採用し、高雄市公車として運行しています。運行に必要な経費等は自治体が負担し事業者を支援します。

運賃制度は市街路線の場合、台北市、新北市のように1段(ICカード利用時12元)からスタートし、距離が長い場合は2段、3段と初乗り×2、×3というような形で上がっていきます。但し、高雄市ではICカードで乗車した際は運賃は2段(または2回乗車)まで収受し、3段以上もしくは3回以上の乗車は当日中無料となります。

郊外線は運賃形態が全く異なり、乗車距離に応じた距離制運賃となります。但し、ICカードで乗車した場合は運賃が1乗車60元上限となります。こちらは複数回乗っても無料にはなりません。

 

 

5.基隆市 市區公車制度の実施・高速バスの下道区間のみ乗車を条例制定で特認

基隆市でも市區公車制度を採用して運行しています。但し、新北市へ跨ぐ路線については原則として新北市公車路線となります。運行に必要な経費等は自治体が負担して事業者を支援するほか、市が運営・バス運行を行う基隆市公車處という公営事業者もあります。

また、高速バス路線については公路總局の規則により下道区間のみの乗車は認められていませんが、基隆市では独自の条例を制定して高速バスの下道区間のみの乗車を認め、一部の事業者では基隆市内の下道区間のみの乗車扱いを実施しています。

高速バス路線の新設に関しても市が積極的に関与して路線計画を策定、運行する事業者を募るなど意欲的な取り組みを行っています。

 

 

6.宜蘭縣 郊外路線の市區公車路線への編入

従来、國光客運などが公路客運路線として独立採算制で運行していた郊外路線の一部を宜蘭縣市區公車路線へ編入し、自治体の手厚い支援を受けながら運行できるようになりました。運行は引き続き國光客運など既存の事業者が請け負います。

この他、観光地へ運行する路線などを宜蘭縣市區公車路線として新設、改編し、観光客の利用しやすい形にしています。

 

 

このように台湾の主な自治体を上げただけでも様々な形で路線バスが運営されており、事業者の負担が少なくなるように自治体が努力している所も多くあります。

10km以内の運賃を無料とした台中市ではやはりバスの混雑が見られた時もありましたが、台湾の主要都市では一定の本数のバスが運行されており、特に沿線人口が多い場所ではそれに見合ったバスのダイヤとなっていてうまく捌けていることも多いです。

桃園市では1路(桃園~中壢)、112路(中壢~忠貞)などでは需要に対して過剰なのではないか?と思えるほどの本数が出ていますが、沿線人口がそれなりにあり、バスが便利であることを本数でアピールできていることから全区間で一定の需要が生まれ、運行にも余裕があります。

こういったことも自治体が手厚い支援があってできることだと思いますので、恒久的に自治体が運行に関与するというのは欠かすことができないことでしょう。

一方、台湾でも課題があります。市を跨いで走る一部の路線では独立採算制で運行する公路客運路線が多く存在していて、これらの路線はあまり芳しい状況ではありません。基本的に距離制運賃ですので市區公車より運賃が割高で、目立った割引がない路線も多いです。

並行区間では割安な市區公車路線に需要を奪われて乗客が減少し、運行区間の短縮や減便を実施している所もあります。

公路客運路線へ今後政府や自治体がどう関与していくかが台湾での課題と言えるでしょう。

 

このように台湾でもバスの運行に際して良い所、課題がある所が存在しますので、それを日本が丸ごと参考にしてコピーする必要はないでしょう。しかし、何もしないよりいち早く手厚い支援を自治体が実施している台湾各地の制度を1割2割でも参考にすることは悪いことではないと思います。様々な考え方があると思いますが、全国的に芳しくない状況と言える路線の路線バスや路面電車、身近なアジア各国のやり方に目を向けて、ちょっと考えてみるのも悪くないのかもしれません。

 

話を戻しますが、岡山市の路線バス・路面電車の運賃無料DAYは12月10日(金)にも実施されます。

今度は平日の開催ということで運行本数自体は土休日より少し多くなります。また、人の流れもまた変わることでしょう。

次の開催日がどのような状況になるのかも気になる所です。

 

↓岡山県南部での宿泊におすすめのホテル↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

岡山旅行に役立つ商品、岡山を自宅で楽しめる商品のご紹介