DHA・EPAと脂肪酸の基礎知識
国民の4人に1人がその患者であるという報告もあり、まさに国民病とも言える花粉症。そんな多くの人が悩む花粉症の対策に、EPAが有効であるとして注目されています。ここでは、EPAが花粉症やアレルギーの対策に有効であるとされる理由について解説します。

アレルギー対策にEPAが注目される理由
脳梗塞や心筋梗塞の原因となる血栓の生成を防ぐ働きを持ち、生活習慣病の予防にも効果があるとされているEPAですが、近年の研究で、EPAは、花粉症やアトピー性皮膚炎といったアレルギーによって起こる症状の緩和にも役立つことがわかってきました。
EPAがアレルギーに効果があるとされるのは、EPAには花粉症やアレルギーの原因となるプロスタグランジンという物質や、鼻づまりやまぶたのかゆみなどを引き起こすロイコトリエンという物質の量を低下させる働きがあるとされているためです。
さらに、アレルギーに関与して起こることが多いとされる気管支ぜんそくへの効果も報告されています。
ある研究で、小児気管支喘息の患者29人に、EPAを1日84mg、DHAを1日36mg含む魚油を10か月にわたり摂らせたところ、ぜんそく症状のスコアに改善が見られ、また、ぜんそく患者特有のアセチルコリンへの過剰反応に対しても改善が見られたとされているのです。さらに、血漿中のEPAの量も増えたことで、DHAとEPAは小児気管支喘息に有効であると考えられているのです。
脂肪酸の摂取のバランスがアレルギーに影響する
国民の4人に1人がその患者であるとされる花粉症を始め、近年、アレルギー性疾患の患者は増加傾向にあります。その原因には、化学物質などのアレルゲンの増加もありますが、摂取する脂質のバランスが崩れていることも原因とされています。
脂質にもさまざまな種類があり、そのバランスが問題となっているのが、体内では合成されない「必須脂肪酸」です。
必須脂肪酸の代表として、DHAやEPAなどを含む「オメガ3系脂肪酸」と、リノール酸、アラキドン酸などを含む「オメガ6系脂肪酸」があります。
これらからつくられる生理活性物質はそれぞれ作用が異なり、オメガ6系からつくられる生理活性物質には、免疫反応を激しくする血栓をつくって心血管系の疾患のリスクを高めるといった作用があります。一方、オメガ3系のEPAからは、炎症やアレルギーを抑制する生理活性物質がつくられます。
この2つの脂肪酸の理想的な摂取バランスは、「オメガ3:オメガ6=1:4」であることとされていますが、食が欧米化した現代人は、肉や加工品、スナック菓子などに多く含まれるオメガ6系脂肪酸の過剰摂取が指摘されており、また、魚や海藻に多く含まれるオメガ3系脂肪酸が不足しています。免疫反応を激しくする作用を持つオメガ6系脂肪酸の量が増え、アレルギー抑制作用を持つオメガ3系脂肪酸が不足することで、アレルギーが引き起こされやすくなるのです。
このバランスを整える根本的な解決方法は、オメガ6系脂肪酸の摂取を減らすことですが、これらが多く含まれる加工食品やファストフードを全く摂らなくする生活というのは現実的に難しい場合もあります。
そういった場合は、オメガ3系脂肪酸を多く含む魚や亜麻仁油、しそ油などを意識して摂取し、バランスが崩れないよう注意することが大切です。