『もしすべてのことに意味があるなら』(著:鈴木美穂)を読みました | 天国はまだ遠く~うつ病からのリカバリーストーリー

天国はまだ遠く~うつ病からのリカバリーストーリー

2004年10月うつ病発病からのわたしのリカバリーストーリーです。多くの人がうつ病になったことを「恥ずかしい」「隠したい」と考えがちです。「うつ病になったからこそ、人生が輝くようになった」と思える人を増やしていきたい。そんな思いの実現を目指して活動中。

2019年2月28日に発刊された、鈴木美穂さんの著書、『もしすべてのことに意味があるなら がんがわたしに教えてくれたこと を読みました。

 

「あの日、ただ泣くことしかできなかった」 24歳で乳がん発覚。日本テレビで報道記者・キャスターを続けながら、がん患者と支える人たちのための施設「マギーズ東京」を設立。がんになって10年の時を経て考える、生き方、社会、仕事、恋愛、結婚、夢について。
 
「マギーズ東京」は、がんになった人やその家族・友人など、がんに影響を受けたすべてのひとがいつでも気軽に訪れ、ゆっくりお茶を飲んだり、治療や日々の生活などについて相談したりすることができる場所。1996年に英国で生まれた無料相談支援施設「マギーズキャンサーケアリングセンター(マギーズセンター)」の初めての日本版で、2016年に東京・豊洲にオープンしました。
 
24歳の時に進行した乳がんが見つかり、闘病生活では何度も心が折れそうになり、「なんで自分だけが」と泣いてばかりいた著者。でも、がんにならなければ、その存在を知ることも、携わることもなかっただろう「マギーズセンター」。そして、がんになったからこその出会いや学びが、たくさんありました。それをまとめたものが本書です。

 

著者の鈴木美穂さんは、認定NPO法人マギーズ東京 共同代表理事をされています。マギーズ東京のことは、『ソトコト』という雑誌の2017年4月No.214号を読んで知りました。

 

マギーズ東京は、東京豊洲にあり、2016年10月にオープンしたがん患者や家族のための無料相談支援施設です。がん患者やその家族・パートナー・友人など、がんに影響を受けたすべての人が、とまどい孤独なとき、気軽に訪れて、安心して話したり、また自分の力をとりもどせるサポートもある。自然を感じられる小さな庭やキッチンがあり、病院でも自宅でもない、第二の我が家のような居場所です。

 

がんになると、治療のこと、日々のくらしのこと、医療者との付き合い、家族のこと、学校や仕事のこと、お金のこと、身近ながんの人にどう接したらいいか、いろいろなことが思い浮かぶのではないでしょうか。たくさんの医療情報の中から自分に合うものをどう見つけるか…そんな時、気軽に立ち寄れる場所だそうです。

 

マギーズ東京を知り、がんに限らず、うつ病患者やその家族・パートナー・友人などにも、同じ居場所があったらいいな…と思っていたのですが、そのマギーズ東京を立ち上げた鈴木美穂さんが本を出したことをSNSで知り、早速買って読みました。

 

鈴木美穂さんは、2008年、24歳の時、ステージ3の乳がんを宣告され、右胸全切除の手術を受けたそうです。 悲しみにのどん底時に突き落とされ、その後の闘病生活では何度も心が折れそうになり、「なんで自分がこんなめに」と泣いてばかりいたそうです。「うつ状態」にもなり、「もう死にたい」と自宅マンションから飛び降りようとしたこともあるそうです。そんな鈴木美穂さんが、「どんな経験だって、価値に変えていくことができる」と自らを鼓舞し、生きようとする姿にはとても勇気をもらいました。

 

頑張れないときには、時が経つのを待つだけでいい

時薬とは、どんなにつらい状況も、時が解決してくれる、という考え。現状を変えたくてもがき、苦しんでも、解決できないことがある。もう頑張れないときは、なにも無理をする必要はない。ただ時が経つのを待てばいい−そう思っておくだけでも、だいぶ楽になれるのではないかと思います。
 

時薬と書いて『ときぐすり』と読むそうです。うつ病のつらさが永遠に続くかのように思えたときもありましたが、どうやっても変えられない、頑張れないときはあります。そんなときは、ただじっと時が経つのを待つしかないんだと思います。そのときは焦るばかりで、そのことに気付けませんでしたが、今ならそう思える自分がいます。

 

生きてさえいられれば、それだけでいい

 闘病中は「生きていられるだけで幸せ」と思っていたのに、それから10年近くが経ち、徐々に生きていることが幸せではなく、当たり前になっていました。そして、「もっと頑張らなきゃ」「もっと努力しなきゃ」と、自らやるべきことのハードルをどんどん上げてしまっていた気がします。

 

うつ病の闘病中は、何度も死にたいと思いながらも、生きていられればそれでいいと思いました。再就職した時も、働けれるだけで充分と思っていたのに、仕事に慣れてくると、「もっと頑張らなきゃ」「もっと努力しなきゃ」と思う自分がいました。そして、より高いハードルを越えようとして、結局、再発してしまうといったことがありました。分かってはいるけれど、欲が出てくるのは生きている証拠だと思ってしまうのですが、難しいものですね。

 

きっと、仲間はいる

 ここからわたしの「がん経験者コミュニティ」はぐんと広がりました。彼との出会いを機に、彼と同じ時期に同じ病院で闘病していた仲間など、若くしてがんを経験し、それを乗り越えて前向きに人生を楽しんでいる人たちと会うことができました。そして、仲間がいると知ることの大切さを改めて実感させられ、「この心の強さを少しずつでも多くの人たちと共有したい」という思いを強くしました。

うつ病闘病中も孤独だったことを覚えています。うつ病への不安やお金の心配、再就職の恐怖など…がたくさんありましたが、仲間が増えていくと安心するものです。仲間がいることの大切さを感じ、現在もピアサポート活動をしています。

 

鈴木美穂さんも書かれていますが、マギーズのうつ病バージョンがあったらいいな、と思っています。 心が折れそうになったときも「いつか必ず、この闘病経験を活かせる時が来る!」と信じて頑張り抜くことができたという鈴木美穂さん。うつ病とがんを一緒にはできないのかもしれませんが、「いつか必ず、この闘病経験を活かせる時が来る!」という思いで、わたしも生きていこうと思います。  

 

 

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
鈴木/美穂 認定NPO法人マギーズ東京共同代表理事。元日本テレビ記者・キャスター。1983年、東京都生まれ。2006年慶応義塾大学法学部卒業後、2018年まで日本テレビに在籍。報道局社会部や政治部の記者、「スッキリ」「情報ライブミヤネ屋」ニュースコーナーのデスク兼キャスターなどを歴任。2008年、乳がんが発覚し、8か月間休職して手術、抗がん剤治療、放射線治療など、標準治療のフルコースを経験。復職後の2009年、若年性がん患者団体「STAND UP!!」を発足。

2016年には、東京・豊洲にがん患者や家族が無料で訪れ相談できる「マギーズ東京」をオープンし、2019年1月までに約1万4000人の患者や家族が訪問。自身のがん経験をもとに制作したドキュメンタリー番組「Cancer gift がんって、不幸ですか?」で「2017年度日本医学ジャーナリスト協会賞映像部門優秀賞」を、「マギーズ東京」で「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2017チーム賞」を受賞。

2016年以降、厚生労働省「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」「がんとの共生のあり方に関する検討会」「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」、PMDA運営評議会、都庁「AYA世代がんワーキンググループ」などで複数の行政委員を兼任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)