家に着くと、三人の子供達がお出迎え。




「パパお帰り~ドキドキ




(みんな、こんなにパパが好きなのに………)




子供達の事を思うと、胸が締め付けられる………




そして、表面上は今までと何も変わらない時間が流れる。




トシの携帯も………




昨日までと同じ………




ポケットに入れられたまま………




そんなトシの態度から、まだ浅〇と切れていないことが、自ずと伝わってくる………




私はトシがお風呂に入ると、昨日のようにトシのズボンから携帯を抜き取った………




そして、浅〇の携帯番号とメールアドレスを自分の携帯に登録し、




トシの携帯をズボンに戻した。




こんな事が何になるのかわからないけど………。




だけど、私にばれてもまだ浮気を続けるなら、今度はばれないようにと今まで以上に慎重に隠すだろう………




そんなの許しておけない。




トシのつく嘘に振り回されたくない。




トシの嘘を見抜けるようにならなくちゃ………。




トシの行動全てを監視したいくらいだ………。




そんな思いに引きずられ、気がつくと私は、




トシの通勤カバンに手を伸ばしていた………。




カバンの内ポケットには………




…………………




…………………




ピンクのキティちゃんのボールペン…………




トシが自分で買うはずがないモノ…………




そして定期入には………………





……………………




そこには……………




およそトシには似つかわしくない……………




これまた、キティちゃんのシール…………




なんだか、トシと彼女の二人の時間を垣間見たようで、虚しくなった………




(もう…………ダメなのかな…………)




(私への愛情なんて、ないんだよね…………)




二人が仲良く肩を寄せ合いながら歩く姿が浮かぶ………




嬉しそうに、楽しそうに、二人の時間を過ごす姿が浮かぶ………




まるで実際に見ているかのように…………リアルに………。




(私が…………邪魔物なの………?)




(私といる時よりも彼女といる時の方が、トシは幸せなの………?)




また私の気持ちは、どんどん沈み込んでいく………




(どん底ってあるのかな………)




(何処まで落ちたら底なのかな…………)




(底に着いたら…………何か答えが出るのかな………)




ぼんやりとそんな事を思った…………。
私は、どんどん沈み込む自分に逆らえなかった。




トシの浮気は、私にかなりのショックを与えたんだと思う………。




こんなに一つの事が頭から離れないなんて………。




気が付けば




(トシ………なんで………?)




(どうして…………?)




そればかりを思っていた………。




ふと時計を見ると、15時。




彩花のお迎えの時間……。




結菜と海斗も学校から帰ってくる………。




(あ……しっかりしなくちゃ………)




私の中の「母親」の部分が、かろうじて私の正気を支えている………。




子供達といる時間は、とても慌ただしくてあっという間だけど、




笑っていられる時間……。




そしてあっという間に………




夜………




携帯が鳴った………




……………




(遅くなるって書いてあったら、どうしよう……)




トシが朝帰りした日、




手紙「会長のお供で遅くなります」




そのメールから全てが壊れたんだ………




私は恐る恐るメールを開けた…………




手紙「〇時にT駅到着です。お迎えお願いします。」




(帰ってくるんだ、私達家族が待ってる家に。)




世間では、浮気がばれてそのまま帰って来なくなる男の人もいる………。




でも、トシは帰ってくるんだ。




喜んでいい事なのに……




私は………




わからなかった………




心に何かが引っ掛かってて………




トシを信じていいのか………




また信じる事ができるのか………




心に引っ掛かっている何かが外れる時がくるのか………




答えが出ないまま………私は駅に向かった………




「ただいま」




そう言って助手席に乗り込むトシ。




「お帰り………」




今まで当たり前だった一言が、ぎこちなくなってしまう私がいた………




そんな私に気づいてか、トシは一言も喋らない………




私はトシに聞いた。




「浅〇さんから連絡あったよね?」




「あったよ………」




「何の話したの?」




「ひどい男だ。もう連絡しないでくれ。って言われたよ。」




トシのその言葉………




なんでだろう嘘だとわかってしまう………(後にはっきりしますが……)




(この人は、まだ嘘を重ねるんだ………トシが守りたいものって何だろう………)




私は虚しくて、それ以上何も聞かなかった………
私は、今の自分の気持ちがトシに伝わっていないように感じて……




手紙「私の気持ちが整理できるまで、きっと時間がかかると思います。


 その間はずっとトシを信じる事ができないし、今までのように接することも難しいです。


 今はまだ、これからの事を考えられる状況にいません。


 ここから私が動き出せるまで、トシはそんな私に耐えられますか?」




私は、自分が思ってる事に出来るだけ近い言葉を文字にして送信した。




今の私にはもう、これが精一杯の言葉で………




(こう言ったらどう思うかな?)




(ああ言ったらどういう返事がくるかな?)




なんて考えられる余裕なんかなかった………。




自分の今の気持ちを表すことが、こんなにも難しいと感じたことは今までなかったと思う……。




それに、今の私の気持ちを100%トシに伝えるなんて無理なんだと思う………。




私自身が、何をどう考えたらいいのかわからないんだから………。




そんなふうに、自分のことばかりを考えていた時、ふっと気になった。




(昨日のあの電話で、浅〇が何も言ってこないわけないよね………)




そうだった………。




この瞬間まで、「浮気」とは相手がいることだって、すっかり頭から抜けていた………。




(きっと連絡取ってる………別れるのかな………それとも、私にばれないようにって相談したのかな……)




そう考えるとまた、何とも言いようのない感情が込み上げてくる………。




音符音符音符




携帯が鳴った………




トシからの返信………




手紙「自分の責任だから、遥の気持ちが落ち着くまで待ってるよ。


 悲しませてごめん……」



(向こうと別れるとも何とも言わないけど………。これって本心なのかな……)




そうだ…………トシは昨日から私に対して




「相手とは別れるから」




とは、一言も言わない。




その言葉を聞かずに、トシを信じられるんだろうか?




わからない………。




なにもかもわからない………。




何の答えも出ない………。



ただはっきりとしているのは、




「トシへの信頼が無くなった」




という事………。




淋しいな………。




あんなに大好きな人だったのに、一瞬で信頼出来なくなってしまった………。




淋しいよ………。




トシ………淋しくて仕方ないよ………。




助けてよ…………。