その日のうちに、浅〇からの返信があった。




私の知りたいことがわかるかもしれないと、返信を期待していたけれど、




その反面、もう関わりたくもないはずの私に再び返信なんて……と、本当に返信がきたことに少し驚いた。




私は浅〇からのメールを開いた。




「返事ありがとうございました。



 ご質問についてなんですが、結論的には肉体関係はありません。



 連絡を取り合って出掛けたりしてたのも2月の終わりから5月の初めくらいです。



 私が勤め始めて一ヶ月でトシさんが本社に異動になったのもあり、職場での関わりがほとんどなくて、どんな方なのか全く知りませんでした。



 仕事の関係で携帯番号とメールアドレスを伝えたんですが、何度目かで私的なメールが来るようになりまして、出掛けたり、食事をしてお互いのことを話している感じでした。



 私はトシさんから23で離婚した元奥様がいらっしゃって、その方が今でも自分の事を好きで実家まで押しかけてきて大変みたいに伺っていたので、トシさんにお付き合いして欲しいと言われた際に、



その元奥様にきちんとした対応をして問題解決をしなければ付き合う気になれないと伝えました。



努力するという風に言っていたのですが、突然連絡が取れなくなったり、メールや電話の着信拒否をされたりと不信な所が多くなってきたため、時々向こうから電話やメールがきても反応するのをやめました。



 以前家に帰らなかった日の件ですが、お酒を飲みに行って終電に乗り遅れてしまって、それを心配して始発まで居てくださっただけなので、肉体関係はありませんでした。



 うちは両親が離婚していて、母親に育てられました。



 まさか自分が他の家庭を壊すきっかけを作ってしまい、奥様やお子さん達に同じ思いをさせてしまうなんて本当に自分自身すごく落ち込みました。



 トシさんにきちんと責任をとって貰えるように私にも力にならせてください。



本当に申し訳ありませんでした。」




彼女からのメールで、トシが彼女にも「嘘」をついていた事がわかった。



私にも彼女にも嘘をついて……。



だけど私は、トシが嘘をついていたことよりも、



私と子供達のことを、過去のことにしていたことが悲しかった(ノ_・。)……。
(ちゃんと……知りたい)




私はそう思った。




いつからの付き合いなのか。




朝帰りした日に何があったのか。




彼女の前にいるとき、トシはどんな表情をしていたのか。




トシが何を語っていたのか。




私の知らない二人の時間のこと……




知りたい………




たとえそれが、私が傷つく事であっても……




全てを知りたいと思った。



全てを知ってもなお、トシへの気持ちが変わらなければ、私達はやり直せるかもしれないし、




逆に全てを知って、「この程度の男だった」と思えたら、何の未練もなく別れられる。




一度「別れよう」って決めた気持ちが揺らいだのは、私の心の中に「トシの傍を離れたくない」って想いがあるから。




その想いにキチンとケリをつけなかったら、私はまっすぐに前を向いて、子供達と歩いていけない気がする。




私は再度、浅〇にメールを打った。




「お返事ありがとうございました。



 あなたからのメールを読み、少しお聞きしたい事が出てきたので、またメールをさせていただきました。



 答えたくない内容であれば、お返事頂かなくて結構です。



 主人とはいつからの付き合いなのですか?



 肉体関係はあったのですか?



 主人と付き合っている時に、何かおかしいと感じたりしなかったのですか?



 私は主人と別れようと決意しましたが、今また気持ちが揺らいでいます。



 なぜなら、まだ主人に対して未練があるからです。



 主人に裏切られたショックと主人をまだ愛している思いで板挟みにされ、辛いです。



 私の知らないあなたと主人との時間を教えてください。



 全てを知って、主人に対しての未練が吹っ切ることができたら、これから先、子供達だけをみて歩いて行けると思うのです。



 何度も連絡してしまい、申し訳ありません。」




彼女からは返信があるだろうか………




返信がなくても、私は答えが出せるだろうか……




別れると決めたはずなのに……




また、先が見えなくなってしまいました……
次の日、携帯が鳴った。




浅〇からの返信だった。




『メール読ませていただきました。



 以前の電話の件以降もトシさんは奥さんもお子さんもいないって言い切ってました。



 ですが色々と信用性に欠ける事がありまして、今は一切連絡を取ってませんし、会ってもいません。



 もちろん今後お付き合いする気も全くありません。



 トシさんご本人に聞けばわかると思います。



 ご家庭の幸せを奪ってしまい本当に申し訳ありませんでした。



 私が言うのも失礼だし、申し訳ないのですが、トシさんは今後も別に好きな人が現れた場合、同じことをすると思います。



 奥様の為にもそれだけは伝えさせてください。



 ですが本当に、もう一切トシさんとは関わらないと決めているのでご安心ください。』




読み終えた後、このメールの一文一文と、トシのこれまでの言動を照らし合わせた。




ジグソーパズルか穴埋め問題でもしているみたいに、頭の中に少しずつストーリーが組み立てられていく。




「電話の件以降も、妻子はいないって言い切ってた」




やっぱりあの後も、二人は連絡を取り合ってた。




だけど……




私や子供達のこと隠してって、トシはどういうつもりなんだろう……?




いくら隠しても、彼女と結婚する時に戸籍でばれちゃうのに……?




…………………




………………




……わからない




「信用性に欠ける」




きっとトシは、彼女に対しても色んな場面で嘘を重ねたんだろう……。




私にも彼女にも嘘をついて……




そして、その嘘を突き通すためにまた、嘘をついて………




何のための嘘………?




彼女を守るために、私に嘘をついてるんだと思ってたけど………




彼女にまで嘘をつくって………




やっぱりわからない……




ただ、このメールを見る限り、彼女の方から別れることを切り出したんだろう……




そしたらこの間のトシの、彼女に宛てたメールの内容もわかる。




彼女から別れ話をされて、でも別れたくなくて……




彼女を失いたくなくて………




だけど、彼女は別れることを選んだ……




トシは……?




彼女に見捨てられて、




「それじゃあ」って私に戻るつもりなんだろうか……?




「大事にしたい」って思った彼女を、簡単に忘れられるんだろうか……?




トシは何を望んでいるんだろう……




トシが何を求めているのか、私の知らないトシと彼女の時間に、答えに繋がる何かがあるの……?




……………




…………




トシが彼女と別れて、それで、私は…………?




離婚を決意したはずの私の心が、少し揺らいでいることに私自身驚いた。




トシが戻ってくるなら、やり直せるかもしれない。




そんな思いが心をよぎった。