『突然メールなどしてすみません。トシの家内です。


 先日は電話で大変失礼いたしました。



 あなたには伝えなければと思い、メールをさせていただきました。



 主人が朝帰りしたあの日から、私は苦しい毎日を送ってきました。



 主人の愛情を取り戻そうと、私なりに努力もしてきたつもりです。



 でも先日、主人があなたに宛てたメールを読み、主人の愛情があなたに向いていると、確信しました。



 主人はあなたを失いたくないと必死です。



 私や子供達には、その必死さを見せてはくれませんでした。



 主人の気持ちが他の女性に向いてしまった今、自分のとるべき道は何か、考えて考えて……



 私はまだ主人を愛していますし、子供達もパパが大好きです。



 でも、このまま上辺だけの家族で主人をここに縛り付けていても、誰も幸せにはなれないと思いました。



 私も、子供達も、主人も、そしてあなたも。



 これだけの人間が、全員で辛い思いをしてはいけないと思いました。



 辛い思いをする人間は、最小限にしなくてはいけないと思いました。



 自分の思いがそこにたどり着いた時、「離婚」という選択に行き着きました。



 主人との離婚を決意したのです。



 ただ、今すぐという訳にはいかないのです。



 何の罪もない三人の子供達の生活だけは、何があっても守らなくてはいけません。



 そのための準備をする時間を私にください。



 準備が整ったら、必ず私から主人に離婚を申し出ます。



 ですからそれまで、主人に私との離婚を迫ったり、主人を責めたりしないで待っていてください。



 それまでの間、あなたにも辛い思いをさせてしましまいますが、許してくださいね。



 全てが終わった時、主人とあなたがきっと幸せでありますように。



 主人をよろしくお願いします。』




全て本心で綴った。




トシを愛していることも




離婚を決めたことも




子供達を守らなければいけないことも




トシの幸せを願っていることも




全て、嘘ではない。




トシが好きになった人だ。




きっとわかってくれる。




そう信じたい。




私はそっと、送信ボタンを押した……。
区役所に行って一週間程たった日、




私は、トシの彼女への切実な思いを目の当たりにした………




~‥~‥~‥~‥~‥~‥~‥~‥~




トシの入浴中、もう日課になってしまった携帯チェック……。




当たり前のように受信メールをみる。




(特になし……。)




最近は警戒してるのか、浅〇との連絡の形跡はない。




少しホッとしながら、送信メールのBoxを開いた。




すると、




浅〇宛てのメール………




「本当にごめんm(__)m」というタイトルで……




『もう一度だけ、俺に浅〇さんの時間をくれないかな?
 俺は今でも浅〇さんが好きだし大事にしたいと思ってる。
 今はちょっと入院してるから会って話すことができないけど、もう一度だけ時間をくださいm(__)m』




文面からみて、どうやら二人はもめたんだろう。




何をもめたのかはわからないけど、




二人の関係は上手くいってないんだろう。




でも…………




トシが必死になっているのだけは、痛いぐらいに伝わってくる。




「入院」………




もちろんトシは、入院なんてしていない。




健康そのもので、毎日出勤している。




トシは、自分の力だけではどうにもならない時、




決まって、相手の『優しい』部分に付け込んでくる。




昔からそうだ。




弱っている人間を前に、人は知らん顔なんてできないと、そこに入り込んでくる。




文面の『入院』という文字から、トシの必死さが伝わってくる。




彼女はどうしたいんだろう。




今のところ、返信はきていないみたいだけど……。




頭の中を、一つの不安が過ぎった……。




もし二人のもめた原因が、私との離婚についてだったら………。




一向に離婚の気配をみせないトシに彼女が、離婚するように迫っているとしたら……。




今のトシは、すぐにでも彼女の元へ行きそうな勢いだ。




そうなったら、離活も何もない。




子供達の生活も守れない。




後半年は、なんとか家族として居てもらわないと……。




私は、浅〇にメールを送ることにした。
本当に………どっちが辛いんだろう………




私自身が前者のせいか、考えても考えても答えは出ない。




なんだか………さっきまで前向きだった気持ちが、




………落ちてきた。




…………なんか




泣けてきた……(>_<)°゜




こんな時は、泣こう、泣いてやる。




区役所の帰り、切なそうなタイトルのCDを手当たり次第にレンタルした。




早速カーオーディオで聴いた。が………





…………ん…………違う




次………




…………も………違う




次…………




…………また………違う




なんだろか…………




聴こえている曲は、確かに切ない歌詞で悲しいメロディーで………




なんだけど…………




私の気持ちにピッタリと寄り添ってくる曲じゃなく…………




聴こえてくるのは、




会いたいのに会えない、とか




今は離れてても、とか




君のそばにいたい、とか




君を守りたい、とか




全部がトシと浅〇のことのように聴こえる……




……………はぁ………




そして……極めつけは………




EXILEの「Ti Amo」(綴りが違ってたらごめんなさい)




不倫してる人達を唄ってる………




そーなんだ………




世の中、「不倫はいけない」なんて言ってても、




不倫してる側の方が、なんだか絵になるんだ……




その裏にいる妻や子供達の、堪え難い悲しみや淋しさ、苦しみは




なかなか表現してもらえない……




私は泣くこともできず、家に戻った。




午後になり、子供達が元気に帰ってくると、家の空気が一変する。




私に纏わり付いてくる彩花の頭を撫で、




その傍でおやつを食べながら、学校でのことを楽しそうに話す結菜と海斗。




ホッとするニコニコ




でもその反面で




(パパとママが別れたら、やっぱり悲しむんだよね……ごめんね……)




と申し訳なくなる。




わかってる………




子供達にはパパが必要なんだってこと………




だけど、今の私とトシの元で育って子供達は幸せだろうか………




他に女がいるパパと、それを黙認しているママ……?




どう見たって健全な夫婦じゃない………




私はトシのこと、今でも変わらず愛してる。




だけど私の想いだけで、トシをこの家族に縛りつけるのは、私のエゴだ……。




……子供達は、大丈夫。




みんな強い子だから。




わかってくれる。




私は自分に言い聞かせるように、そう思った。