トシが発した言葉が




「切ない………淋しい………辛い………」




そういって固くなっていた私の心を




少し動かした………




(このままで幸せなのかな……)




それは私だけじゃなく、結菜、海斗、彩花と……




トシ………




(このままじゃ、誰も幸せじゃない……)




どうしたらいい………?




……………




やり直す…………?




やり直せる…………?




やり直せるかも………?




さっきのトシの言葉をもう一度思い出す………。




(なんで?どうして?)




ずっとそう思ってたけど、




私にも原因があった……




朝早くて、帰りも遅いトシ……




休日出勤もあって………




たまの休みはいつもお昼まで寝てた………




子供達はパパと遊べなくて寂しがってた。




私も……最初は淋しかった(ノ_・。)




だけど子供達に




「パパ仕事忙しいし、疲れてるから仕方ないよ」




そう繰り返し言っているうちに私の気持ちも




「淋しさ」から「仕方ない」に変わり




トシが寝ている休日の午前中は、




子供達が騒がないようにと、極力外出した。




トシが仕事の愚痴を私に零しても




(だから休みぐらいはゆっくりしてもらおうって、こっちだって気ィ使ってるんだよ!)




って心の中で面白くなくて、




トシの話をちゃんと聞かなかった………。




だから………




浮気相手は………




話の合う職場の女の子………




だったのかな………




私がもっと良い奥さんなら………




トシは………




トシの気持ちは………




戻ってくるのかな………




子供達には父親が必要だし、




何より………




私が………




まだトシを愛してる………




浮気されて、そのまま嫌いになれたら




答えはすぐに出た………




だけど、まだ気持ちがあるから




苦しかった………




トシが私や子供達に必要なら………




………頑張ってみよう!!




私の、『妻』として足りなかった所を補って、




『夫婦』として『家族』として、やり直せるように




私にできることをしてみるしかない……




それでもトシが戻ってこなかったら………?




その時は………




決断の時………




やるだけやって、それでもダメだったら、




それでいい。




きっと頑張った分、後悔しない。




前向きな私が、少し顔を出し始めた。
その週の日曜日、




結菜が




「ママ、最近やせたよね~。
 ご飯もあんまり食べないしさ~。
 ダイエット?
 おばさんなんだから、無理だって~にひひ




…………




何も知らないとは言え、




なんと無神経な………汗




でも、子供のこういう所で私は救われてきたんだよね。




私は




「そう。ダイエット!今回は成功かな?」




そういって笑った。




結菜もそんな私につられて笑った。




だけど、側で聞いていたトシが




急に大声を出した。




「なんだよ!!当てつけか!?
 俺がどんな気持ちでいるかわかんねぇのか!!」




結菜はパパが急に怒鳴ったワケが解らず、しばし静止………




私はトシを睨みつけ、結菜に言った。




「結菜、パパ機嫌悪いから向こうの部屋で海斗達と遊んでおいで」




「……うん………わかった………」




いじけた様子で子供部屋へ向かう結菜を見届け




私はトシに




「一体なんなの!?」




と言おうとしたけど、




「なんなんだよ!!ムカつくんだよ!!!」




トシが怒鳴る方が早かった……。




トシは、私が口を開く間もなく怒鳴り続ける……。




「なんだよ!!お前だけが辛いんかよ!!
 こっちのこと考えたことあんのかよ!!!
 携帯みたり荷物あさったりいい加減にしろよ!!」



トシは感情的になってそう言った。




トシの口から出てくる言葉は




「お前のせいで彼女と上手くいかないんだよ!!
 こっちは会いたいのも我慢して帰ってきてんだ!!
 自分だけ辛いような顔してんなよ!!!」




そう言っているように聞こえた………。




私は言い返せなかった。




ただ一言




「なんで……こんなふうに………」




「なんでこんなふうになっちゃったの………?」




そう聞いた………。




「あぁ!?なんでだぁ!?
 お前わかんねぇの!?
 俺が仕事の話しても理解しようとしねぇし、仕事の愚痴も聞かなかっただろ!!」




(多分……これが……トシが私に言いたかった本当の言葉………)




そう感じた………




そして




「全部お前が悪いんだ!!」




そう言われた気がした……




「だからって浮気して良いことにならないでしょ」




そう言いたかったけど……



私はその言葉を口にはしなかった………




トシは、もう話す事はないという感じで寝室に篭ってしまった………。
あれから、少しは眠れるようになったけど




食欲が戻らない………




口に入るモノと言えば




タバコとコーヒー。




いい加減周りの人達も何か感じたようで、




ある日科長に呼び出された。




「遥さん、最近痩せたんじゃない?他のスタッフも心配してる。
 何か疲れた顔してるし…。
 何かあったの?」




泣きそうになった……。




全て話そうか…




そう思えたりした……




でも……




何から話したらいいのか、わからない……




「大丈夫ですニコニコしょぼん)」




できるだけ明るく答える私がいた……。




(全然大丈夫じゃないくせに)




(もういっぱいいっぱいのくせに)




わかってる………




もうかなりギリギリの状態だって……




だけど、今の私をここから引きずり出せるのは




トシか




自分自身………




だから




「大丈夫」




そう言うしかない……。




それにしても




(私、そんなに痩せた?)



確かに最近、デニムや下着が緩くなったとは感じてたけど………




周りが気がつくほど……?




勤務を終え家に帰ると、私はすぐに体重計に乗ってみた。




体重計が示す数字を、私は疑った。




あれ?




あれれ???




普段の体重より




5㎏も




少ない……ガーン




はぁ…………ダウン




……………




そっか…………




5㎏も痩せたら




みんな、気がつくよね。




…………じゃあ




…………トシは?




痩せた私を見て




何か感じてる?





私が、苦しくて苦しくてどうしようもなくなっている



この気持ちが




少しでも届いてる……?




その答えは




これから先




私が望まない形で




何度も思い知らされる………。