今回の北京行きの日記の最後に、「今回5年ぶりに中国を訪れ人々の様子が落ち着いているように感じたのは治安が良くなったからだ」という事を書こうと、下書きを半分くらい書いて数日放置していたら、蘇州の事件が起こったので、ちょっとそぐわなくなってしまった。
しかし私の感じたことは私の事実なので、とりあえず書きかけの部分に続けて書き進めることにする。
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今回の北京行きは入院した義母のお見舞いだったので、毎日午後の半日はほとんど病院にいた。
とはいえ、ずっと病室にいても私は何もできることがないので、ロビーや中庭でぼーっとしている時間が多かった。ずっと座っていても逆に腰が痛くなるので、散歩がてら周辺の市場を覗いたり、パン屋のイートインスペースでお茶を飲んだり。
病院のある場所は北京市の中心部から車で40~50分の所ですが、その地区全体の中心的な街となっていて、大変にぎわっていた。
コロナ前に外国人のビジネスマンや観光客が行き交っていた北京の中心部は、以前ほどの活気がなくなり、ビジネス街の外国人御用達のレストランなども寂しげな感じがしていたので、ああ、中国はやっぱり不景気なのだと、日本で言われていることが裏付けされたように思った。
しかし、中心部から車で40分離れた病院の周りを散策すると、道路も市場も食堂も店も公園も、どこも多くの人でにぎわい、物が溢れ、活気がある。
体力が劣った者には不便を感じる広い道路を雑多な人々と一緒に左右に注意を配りながら渡ったり、生の魚や肉がまるまんまどんっと置かれた市場の間を行ったり来たりしていると、人々の気質の変化を感じた。それは、名古屋から北京の飛行機の中で早々に感じていたのと同じものだった。
人々の態度が柔らかくなった。以前は社会の変化が目まぐるしく時間が不足していて、誰もが焦っていて、大声で叫び、他人が目に入らない。これは社会全体に対するイメージで、実際に具体的に出会う誰もがそんなふうだったというわけではない。あくまでイメージとして。
それが今回は、なんとなく各々が他人や周囲に対して自然に気を配っているような、社会全体が柔らかくなって、落ち着いていて余裕があるように感じた。
そこで、夫が、治安がとてもよくなっている、と言ったのを思い出し、これか、と思ったのだった。
監視カメラがそこかしこにあるので、自転車が盗まれても、犯人は家に帰りつく前に捕まるのだとも。それに現金を持ち歩かないので、スリや強盗が仕事を失ったと。
.......というふうに、治安の良さがもたらす社会の安定について書こうと思ったら、蘇州の事件のニュースが耳に入ったのだった。
簡単には書けなくなってしまった。
コロナを経て、管理や治安の強化がもたらしたのは、一方で安全と安定だが、また一方では経済の停滞と格差の拡大が怨嗟を生んでいる。
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今回、北京で食べたもので一番おいしかったもの、生のサーモン。新鮮で、贅沢な厚切り。普段ぺらぺらのサーモンしか食べてないから(^^ゞ。
さくらんぼも毎日食べた。大粒で甘い。市場でどさっと山盛りに積まれているのを、グラムで注文するのはなんと幸せなことか。(さくらんぼの写真がない。残念。)
いちばんおいしかった飲み物、病院の近くのパン屋のイートインで。
これにておしまい。