聖なる夜に~Porte Bonheur~ 後編 | むらたま SUPER JUNIOR キュヒョンブログ

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※ウォンキュ小説です。
苦手な方はUターンしてくださいね。




























薄暗く狭い空間の先には、ぼんやりと灯りが付いている。
その向こうには地下へと続く階段が続いている。


「足元が暗いので気をつけてください」

僕は男のほうを振り返りながら微笑んだ。

「さっきのパティシエに、
社長のリクエストでワインセラーに行くから
誰も呼びに来ないようにと伝えておきました。」

「え?」







こうも暗いと男の表情が見えない。

金属でできた階段は踏み込むとカンカンと二人の足音を交互に響かせる。
廊下よりもさらにひやりとした空気が体を包み込む。



「この部屋の室温は16度に保たれてます。寒いですか?」

「いや、上が暑いくらいだったから、ちょうどいいよ」



階段を下りると両サイドに飾られた照明のオレンジの光が男の顔を照らした。

まるで彫刻のような顔立ち。
男が僕を優しい瞳で見ていた。

またひとつ鼓動が跳ねた。


足元には湿度の関係で段ボールと木箱に入ったワインが積み上げてある。
横に寝かされたワインで埋まった棚の下に、
玉砂利が敷き詰めてあるのを男は不思議そうに見ていた。

砂利を区切るように並んだタイルの上を歩き、さらに奥の部屋に案内した。



「年代が古い物は少し奥にあるんです」

「凄いな、チョさんはこの中のワインを全部把握してるの?」

「ワインの管理が私の仕事ですので。…キュヒョンでいいですよ、チェ社長」

「それならキュヒョン、俺もシウォンでいいよ」



ドキっとして足が止まった。



「そんな。お客様を呼び捨てなんて」

「社長と呼ばれるのは嫌いでね。親い部下にも名前で呼んでもらってるんだ」

「恐れ多いですよ。大社長を呼び捨てにしろと?」

「客が望むなら応えてくれるんだろ?」







この男は駆け引きをして楽しんでいるのか?
まあ、社長となると話術も長け、さぞかし誘い方もスマートなんだろう。


ふふ。


「じゃあ、シウォン…。この場所でだけ、そう呼ばせていただきます」


この男はどうやって口説くのか
あの手でどんな風に抱き
どんなキスをし
どんな風に囁くのか・・・。

ゾクっとした。

今日、初めて会ったばかりのこの男に



僕は欲情した。



パーティ中に向けられた僕への視線は僕の躰を熱くした。
今まで、あんな真っ直ぐな目で見られたことは無い。


気持ちを落ち着かせようと目当ての棚に行きワインを探す。
ワインを探すときは宝物を見つけようとしていた幼い頃を思い出す。
ドキドキとワクワクが入り混じったあの感覚。


あった。
ワインを手に取りラベルを確かめる。


「こちらが86年のムートンロトシルトです。」


金色で箔押しされた文字が美しいラベル。
ムートンはシャトーラトゥールともに人気を二分する名門シャトー。
五大シャトーの中では豪勢、派手と言われている。
メドック地区の有名なシャトーの中でも
カベルネソービニヨンの使用比率が最も高く王者の風格。

まるでこの男の様だ。

期待で胸が高まる。
これを試飲出来る日が来るなんて。



「ちょっと、ここで試飲していきませんか?」

階段下に隠れるように置かれた収納棚には、ワイングラスが並んでいる。

「いいね。君にもぜひ飲んで欲しいし」

「いいんですか?」

僕は返事を聞く間もなく、グラスを二つ取り出した。

「もちろん」

「こういうビンテージワインはたまにしか飲めないので嬉しいです」

素直に嬉しかった。
ポケットからソムリエナイフを取り出し、先端のパッケージを開ける。

講習会で高いワインを出されても何種類も試すため、
口に含んだらすぐ吐き出さなければならない。
お客のボトルの残りを舐めたりするが、めったに自分で買う事はない。

それぐらいヴィンテージワインは貴重だ。

リパッケージされていない古いコルクは脆いものが多く、
スクリューを引き上げる時は慎重になる。

紫色に染まったコルクの匂いを嗅いだ。


「いい感じです。」

「それだけで善し悪しがわかるの?」

「あぁ、いえ。これでわかるのは腐ってないかくらいです。
保存状態はいいようですが、花が開くのに少し時間がかかりそうですね。
飲んでいるうちにどんどん美味しくなりますよ。」


ワインは空気に触れることで本来の味わいを取り戻す。
僕は楽しみで仕方が無かった。
胸が躍るとはこういう事を言うのだろう。

ワインを注いでいる間も香りが広がり軽く酔いそうになる。


「上は華やかだけど、ここは意外と殺風景なんだな」

「バックヤードなんてそんなものですから」

「でも、君の城だね」

「・・・はい。自分が選んで買い付けたワインに囲まれてるので、居心地はいいです。」


僕の城・・・
確かにそうかもしれない。
好きなワインに囲まれて
こうやって甘い時間を過ごす事が出来る。


「それは?」







「なんとなくクリスマスっぽいから。プレゼント」


男が自分の胸元に付いていたコサージュを棚の上に置いた。
柊と薔薇と南天の実でできたコサージュ。
単色の棚に色が付く。
まるでそこだけ景色が変わって見える。


「それはどうも。今年初めてもらったクリスマスプレゼントです。」


大人になって久しぶりに貰ったクリスマスプレゼント。
この男にとっては何気ない事だったかもしれないが、
僕はそれだけで心が震えた。

この男に似合う最高のギフトは、このワインだ。



「どうぞ。試飲してください」

「ひと口目は君が試して」

「え、でも」

「キュヒョンが飲んで美味しかったら、俺も貰おうかな」


本当に、何から何までこの男は僕の琴線に触れる。
どれだけ僕を喜ばせるつもりなんだ。


「…美味しくなくても、ワイン代はいただきますよ」

「わかった」

「それでは遠慮なく」


グラスを回しワインを波立たせ目線まで持ち上げ柄を傾けてワインの色を眺める。


綺麗だ。


そっと口にワインを含んだ。
深くてエキゾチックな香り。
カシスやリコリス、スパイスを含み凝縮したニュアンスで
濃度のある果実味は複雑だ。
しかしながら旨みの強いタンニンは緻密で強いながらも口当たりが良い。

絶妙のバランスだ。

僕は瞼を閉じてワインに酔いしれた。
口の中に残るワインをもっと感じていたい。
この男と重なりたい。


酔ったかも・・・


たった一口でこのワインとこの男の魅力に取り付かれてしまった。



「俺も、テイスティングしていいかな」

「はい、ぜひ…」


自分の目が開ききる前に唇が重なった。


男の舌が僕の口を割って入ってくる。
濃厚なワインの香りが口中に広がり、男のキスに酔いしれる。
離れた後も男を感じていたくて舌でぺろりと舐めた。








「いつもこんなことを?」


親指の腹で自分の唇をなぞりながら男を見つめた。


「君だけ特別だって、言った方がいいかな?」

「…意地悪ですね」


僕の片頬が上がる。
男の瞳には、もう僕しか映っていない。


「今日はクリスマスだし。ほら、宿り木もある」


男は微笑みながら造花を指差した。


「宿り木?」

「知らない?…宿り木の下ではキスしてもいいんだ」

「知ってますよ。でもこれは宿り木なんかじゃないし、
キスを許されてるのは男女のことでしょ?」


ふふ。
可愛いかった。

この男が。



「美味しいワインですよ」



グラスを差し出したが、男は動けないでいた。
一歩。
もう一歩近付く。



「もう一度、…味見、しますか?」



男の口からもワインの香りがした。



「…いつもこんなことを?」



自分と同じ言葉が返ってきた。



「…私の答えは、お客様の望み通りです」



男の頬に指を滑らせる。
男の唇が僕の唇に触れそうになった。



「特別です。シウォン…」



温度の低い空間で、熱い吐息が重なり合う。



堕ちる。



僕は、この男に、シウォンに



堕ちる。








「J‘ai envie de toi.」



シウォンに抱きしめられ耳元で囁かれる。
小さく震える腕をシウォンの背中に廻した。



あなたが欲しい。



最初から分かっていた。
このままでは終われない。



二度目のキスでシウォンと離れたくないという強い想いに変わった。







聖なる夜に禁忌を侵す。


この夜が、二人の始まりだった。











END





補足


クリスマス企画はいかがでしたでしょうか?

初めての企みだったので大変でしたが、楽しく出来ました。


このお話の設定は私が、お話はたくみんさん。
会話はほとんどたくみんさん。
シウォンサイドをたくみんさんが
キュヒョンサイドを私が。


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聖なる夜に シウォンサイド


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聖なる夜までに 前編


画像はみのこさんが作ってくださいました。
ありがとうございます!!



この作品はみなさんの協力で出来上がりました。
感謝します。





メリークリスマス。

みなさまに愛を込めて。








ぎゅりん。







[素敵画像はみのこ様。ありがとうございます。]
[gifはお借りしています。ありがとうございます。]