聖なる夜に~Porte Bonheur~ 前編 | むらたま SUPER JUNIOR キュヒョンブログ

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※ウォンキュ小説です。
苦手な方はUターンしてくださいね。



























19時を過ぎた頃、ゲストが集まり出す。
外はちらちら雪が降り、
淡いオレンジのイルミネーションがアプローチへと続く。

部屋の中央に置かれた大きなもみの木の隣りで
シャンパンを片手に談笑している男が目に入った。

遠目から見ても目立つ立ち居振る舞い。
男の周りだけ別空間のようにそこだけ空気が違っていた。






男の固めた髪は整った顔立ちをより一層引き立てる。
すらっと伸びた手足にタキシードが映え、
服の上からでも分かる程
鍛え上げられているであろう肉体。
まるで映画のスクリーンから抜け出して来たかの様な容貌だ。

男の周りには途切れることなく人が集まって来る。
男に取り入ろうと必死な男性。
貫禄ある紳士にも物怖じしない落ち着いた佇まい。
セクシーなドレスで声をかけて来る女性を軽くあしらう姿もスマートだ。


なぜだろう。


あの男のキッチリ固めた髪を
くしゃくしゃにしてやりたい衝動に駆られた。


今日はここ『Porte Bonheur』の一軒家を貸し切ってのクリスマスパーティだ。
ドレスアップの者もいれば、コスプレ姿の一団もいる。
僕は立食タイプのパーティは一言で言うと苦手だ。
忙しなくアルコールを注いでいくのは自分の性分に合っていない。
だからと言って手は抜かない。
ひとつひとつ心を込めて丁寧に入れる。

それを見ていた老紳士のリクエストで
ボルドーの古い赤ワインを開くことになった。

ボトルの中で眠っていたワインを目覚めさせる為にデキャンタージュする。
澱が入り込まないように細心の注意を払い、
ワインボトルの先端をロウソクの炎に当てながらデキャンタに移した。

ふと、一人の視線が気になった。



あの男だ。







あの男が僕を見ている。
鼓動がひとつ跳ね上がった。
僕に向けられた真っ直ぐな視線を合わせまいと、気付かないフリをした。

彼は一体何者なんだろう?

あの男に興味が湧いた。
どんな声で
何を話して
どんなことで笑うのだろう。


ゲストの飲むペースに合わせ忙しなく動き回っていたが、
ようやく落ち着くことが出来た。

洗い立てのグラスを指紋が残らないように丁寧に磨く。

その時、
華やかな熱帯魚達の間をすり抜けて
その男は真っ直ぐ僕の所にやって来た。


「ソムリエさん?」

「はい。」







僕は笑顔で振り向いた。
さっきから気付いていた。



この男はきっと来る。
僕のほうに来る。
やっぱり来た。



近くで見る男は遠目で見るよりもハンサムだった。
ハンサム…
そう、まさにこの男に一番ピッタリの言葉だ。



「ワインに詳しい人に一度尋ねてみたかったんだけど、いいかな」

「あ、はい。私が答えられる範囲であれば、何でも」


顔の印象とは違い、
優しい声をしたこの男に
僕の心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと、必死に表情を作った。


「86年のワインで、飲み頃の銘柄はある?」

「86年?当たり年ではないですね」

「俺の生まれた年なんだ」

「そうなんですか。それでしたら…、
ボルドーのムートンロトシルトが丁度熟成していると思います」

「ボルドーは好きだな。このレストランに在庫はある?」

「ええ。たぶんあったはずです…」


男は自分の生まれた年のワインが飲みたいと言う。

なぜこのパーティで?
飲ませたい相手でもいるのだろうか?

だけど・・・

「ご予算に収まらない価格ですので、今日はお出しできませんが…」


僕は申し訳ないと思いながら男を見つめた。


「いや…別料金で払うよ。」

「え…。」


男は僕に名刺を差し出した。

チェ社長…

今日、うちの店を貸し切った会社の社長だった。


「チェ社長とは知らずに失礼しました。
本日はうちの店を貸し切っていただき、ありがとうございます。」


会釈をし男の反応を見る。
少し照れくさそうに笑った男を見て
権力を笠に着る男ではないと確信した。


「じゃあどんなに高いワインでも平気ですよね。」


僕は少し微笑んでみせた。
一瞬で男の表情が明るくなった。



「君、名前は?」

「申し遅れました。チョ・ギュヒョンといいます。」

「あ、俺は…」

「今、名刺をいただきましたよ。チェ・シウォン社長。」



あ、そうだったと頭を掻きながら
照れくさそうに笑うこの男に、ますます興味を持った。









「ムートン、飲んでみますか?」

「いいの?」

「他でもないチェ社長のご所望でしたら」



僕はキラキラ目を輝かせている男を
可愛いと思ってしまった。

自分より身長の高いこの男に。



「それではお待ちください」


カウンターから出て立ち去ろうとすると、男に呼び止められた。
男は面倒な客から逃げるために一緒にワインセラーに行きたいと言った。
ワインセラーは地下室にある。


確かに、さっきからこの男の周りは人が取り囲み
食事をする暇も無いほどだった。

少しぐらいの静かな時間なら提供することが出来る。



それに…



この男と話しをしてみたい。




「神聖な場所だろうから、失礼だよね」


男は眉尻を下げ、すまなさそうに僕を見た。


「いえ、そんな。…期待されているような所ではないと思いますけど」

「…いいの?」

「ええ。それではこちらへどうぞ」




男を手で促し厨房へと続く通路でドンヘに会った。
彼はこの店のパティシェだ。

甘いマスクに屈託の無い笑顔。

ドンヘが手掛けるデザートは
どれも色とりどりで可愛く、繊細な盛り付けで彼のファンも多い。

僕はドンヘにあることを告げ、
肩を叩いた。



「ごゆっくり」



人懐っこい笑顔で僕と男に笑いかける。


僕達は奥へと進んだ。

厨房を曲がった先に、葡萄のマークが刻まれたガラスの扉がある。
廊下は薄暗く、冷えた空気が漂ってくる。

僕はドアノブに手を掛けゆっくり振り向いた。



「普段、お客様は入れません」

「…そうなの?」



少し嬉しそうな表情を浮かべ、男が僕に一歩近づく。
僕はちょっと爪先だって、男の耳元に口を寄せた。









「今日だけ、特別ですよ」



男の耳元で吐息を感じさせ挑発した。



きっと何かが起きる。



男の唾を飲む音が聞こえた。








僕は重い扉を開け、男を中に招き入れた。











つづく。




補足

このお話はブロガーさんたちとの会話で
ソムリエギュが見たいと言う事から始まりました。

全くワインの知識のない私は書きたくても一人じゃ書けない。

そうだ。たく姉書かない?

じゃあ、シウォンさんサイドとキュヒョンサイドに分けて。
と言う会話で急遽決定したコラボ企画(笑)

設定は私が、お話はたくみんさん。会話はほとんどたくみんさん。
シウォンサイドをたくみんさんが
キュヒョンサイドを私が。



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聖なる夜に 前編 シウォンサイド




コ・ムギさんにはレストランの知識やフランス語の助言を教えていただきました。
レストランの名前も考えてくださいました。
「幸せを運ぶもの」という意味だそうです。
素敵~

画像はみのこさんが作ってくださいました。
画像が届いた時はあまりの素敵さにギャー!!と、叫んでしまいました。
お忙しいのにありがとうございます!!


この作品はみなさんの協力で出来上がりました。
感謝します。



後編はまた後で上げる予定です。
良かったら遊びに来てくださいませ~




メリークリスマス。

みなさまに愛を込めて。





ぎゅりん。













[素敵画像はみのこ様。ありがとうございます。]