【著作権】事例で考える「複雑であいまいな権利」である著作権 | 高木行政書士事務所

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こんにちは
行政書士・知的財産管理技能士の高木です

各地で大雨が続き、災害が出ているところもあるようです。
被害にあわれた方に心よりお見舞い申し上げるとともに、
引き続き注意をしていきましょう

さて私は、著作権の特徴として、 複雑であいまいな権利であると説明しています
今回は、ある事例を参考に考えてみたいと思います。


概要は次の通りです。

(1) Aは、ある著作物(甲)を利用したいと考えている
(2) 甲について、Yが「権利がある」(おそらく著作権のこと)と言っている
(3) もともと甲は、Yの父であるXが経営していた会社(X社)が、外部のデザイナーZに作ってもらったものである
(4) 但し、その契約内容を明らかにする契約書は残されていない
(5) Xは既に亡くなっており、X社もすでに無い
   (なお、X社は、Xによるいわゆる一人会社と思われる)
(6) Zも会社を経営していた(Z社)、こちらもおそらく一人会社で、Zもすでに亡くなり、Z社も無い


さて、甲の著作権はどこにあるのでしょうか?
Yが言うように、Yにあるのでしょうか?

なお、甲自体には著作物性が認められる、ということを前提にします。


まず、一般的な回答としては、
・ 著作権がどこにあるかは分からない
ということになると思います。

私としては、それに加えて、
・ 著作権はなくなっている可能性が高い
・ Yに著作権がある可能性はほぼ無い
と考えます。


1.X(X社)とZ(Z社)の関係について

会社間の受発注を前提に考えてみます。
この場合、まず著作権はどこに発生するか、というと、 Z社が著作権を有することになると思われます。

あれ、Z個人ではないのか? と思われるかもしれませんが、
いわゆる職務著作(法人著作)になります。

では、その著作権はZ社からX社に移転されたのでしょうか?

これも、契約書がないので分からない、ということになるのですが...

従来から、
発注者側は、制作委託費に著作権譲渡の対価を含んでいる、
従って、
成果物の納入とともに著作権は譲渡されたと思っている、
という事情があります。

しかし、発注者が「成果物の納入とともに著作権は譲渡された」と思っていたとしても、受託者がそのように考えていなかった場合には、
当然、著作権譲渡の合意は成立していませんから、
(発注者が自分のほうに著作権は譲渡されたと思っていても)著作権はZ社に残っているということになります。

2.Z社の著作権はどのように

では、上記1を前提として、Z社が有している著作権はどうなるでしょうか。

Z社は既に無くなっています。

そうすると、著作権者の不存在ということになり、著作権は消滅することになります。
つまり、いわゆるパブリックドメイン、誰でも使えることになります。

但し、もしZ社が清算等をする際に、その有していた著作権を誰か、例えばZ自身やZの相続人、あるいは第三者に譲渡していた場合には、そこに著作権は存続することになります。

ただし、一人会社のような場合に、そこまでやっている可能性は限りなく低いと思われます。
(そもそも、そのような意識もないのが通常です。)

3.X社に譲渡されていたとしたら

では、Z社とX社との間で、著作権の譲渡がなされていたとしたら、どうなるでしょうか?

これも、X社が清算等された場合に、著作権は消滅することとなります。
この点は、Z社が清算等された場合と同じです。

Xが亡くなり、Yが相続人であったとしても、X社の財産とXの財産は別ですから、
当然、X社の財産をYが相続する(引き継ぐ)ということはありません。

もちろん、生前にX社からXに著作権譲渡がなされていたということであれば、Xの死亡でYがその著作権を相続することになります。



著作権がどこにあるかは分からない

ということをご理解いただけるでしょうか?

その原因は、契約があったかどうかわからないということあります。

これが著作権というもの(仕組み、制度)だよ、と納得していただく必要があると思います。


さて、ではAは、甲を利用しようという場合、どのようにしたらよいのでしょうか?
あるいは、甲を利用することはできないのでしょうか?


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