登校拒否で引きこもりの息子が週1回ゴルフの練習を始めてしばらくした時、妻が言うのです。ゴルフの練習を条件に学校に行く事にしたら?と、私はそれは無理でしょうと言ったのですが、もう外にも出れるし、と色々と言われましたが、条件の突きつけはしませんでした。だってそんなに簡単に登校拒否が治るわけが無いと思ったからです。確かに通学している子供達を見かけると、もの凄く羨ましかったです。妻からすれば何の為にゴルフの練習をやっているのか解らなかった様です。私も何のためにやらせているねかわからないが正直な状況でした。
でも息子の何かを変えたかったのです。それが少し変わっただけで、全てが変わる事は無いと思うのです。でも何か変わって欲しかったのです。
息子ゴルフも同じ様な事が言えます。
最初は何とか打つ事に集中していたのですが、ある程度打てる様になると、飛距離を求めて力み、スウィングを乱します。右膝が動いたり、背中の後ろにクラブを引きすぎたりです。その結果球筋が乱れるのですね。
ここはガマンが必要なのです、スウィングが固まるまで。
やはり欲望は必要ですが、ある時は邪魔になるのです。
レッドアイの7番アイアンを手に入れてから、週に1回ですが練習するようになって行きました。
あっ、それと息子の手のサイズに合うグローブがなかなか見つかりませんでしたね。女性用でも緩いのです。こればかりは、ともかく1番サイズが小さなもので妥協するしか無かったですね。
週1回の練習ですが、なかなか良い打球が出ないのに、250球は打ちました。良くガマンしたと思います。手のひらの皮がめくれて、血マメを作っても打ち続けていました。技術的な事で教えたのは、アドレスの取り方とバックスウィングをできるだけ背中側に引かない事、それと右膝の位置をできるだけキープする事と、フィニッシュをどんな打球を打ってもしっかり取る事だけを教え続けました。
ともかく最初一番低いティーアップで打ち続けていました。そんなある日息子は突然グローブをとって打ち出したのです。かなり手が痛いと思いましたが、そのまま続けさせ、素手で50球ほど打った時、明らかに今までと違う打球音と打球が出始めたのです。澄んだ打球音と共に空気を切り裂く音の綺麗な球が出始めたのです。私は息子を誉めました。息子は嬉しそうな顔で、「でもお父さんの7番アイアンの飛距離に届かない」と言って笑ったのを今でも鮮明に覚えています。登校拒否になって依頼息子の満面の笑顔なんて見た記憶が有りませんでしたから。
もの凄く嬉しかったですね、涙が出るくらい。
登校拒否の息子のクラブ探しです。
当時はアマチュアの少年がプロのトーナメントで優勝した時でした。
まずはゴルフ用品大型店を見に行きました。
意外と少なかったですね。有ったのは、ミズノとキャロウェイそれとイグニオ位でした。
ミズノとイグニオはばら売りでしたがキャロウェイはセットでした。
どのクラブもグースが強く付いていたり、ソールのバンスや広さが厚い物ばかりでした。
私の経験上最初に使ったクラブの影響は非常に大きく、極端な形状のクラブは使わせたくなかったのです。それとどのクラブもシャフトはグニャグニャです。多分ジュニア初心者が簡単に球が捕まる様にしてあるのだと思いました。多分打ち慣れてくると、フック系の球筋に成り、フックしないように打ちだすのです。身体が大きくなって来るとどのようなクラブを使用しても、フック系ボールのコントロールが何時も着いて来る、これは非常に難しい事だと、あるプロから聞きました。なのでクセの無いクラブを探し廻りました。でもなかなか見つかりませんでした。一時期は大人用の7番アイアンのシャフトを切って使わせるかと考えたのですが、シャフトを短くする事でかなり硬いシャフトに成り難しい物になるのです。
オーダーするお金も無いし、せっかく作っても、我が息子の事、いつ気が変わりゴルフを止めるかも知れないので、困っていました。でも執念はみのるのです。ある時、中古品ショップで見つけたのです。クセの無いベッドでシャフトもある程度しっかりしたクラブが有りました。確か名前はレッドアイだったと思います。メイドインUSAでした。7アイアン1本で4、5千円でした。
この1本のアイアンが息子をゆっくりと変えて行くのです。