そう二週間前に話してくれたのはローリング池田さん。
「ばんえい…??」
ばんえいとは、農耕馬が総重量1tの人間と台車を引っ張る競馬。
北海道に数ヶ所存在していたばんえい競馬場は、経営不振のため全て廃止。
しかし伝統文化を残そうとソフトバンクがメインサポーターとなり、帯広のみが存続している。

そんな貴重なものを見ない訳にはいかない!
主に土・日・月の13時から20時のナイターまで、30分ごとに行っている。
早速中に入ってみる。
雰囲気はばんえい競馬場独自のもの。

サラブレッド競馬とは違い、活気はやはり落ちる。
しかし他と違うのは、観光客が物珍しさに訪れる。

100円から賭けられるのでお得。
自分は賭け事は経験程度にしかしたことがない。
だが一着、二着を当てればいいのは知っている。
まずは馬の目を見る。
本来なら馬体重や毛並みなどを見るのだろうが、よく分からないので、目を見た。

「よし!あの荒々しい5番にしよう!目が気に入った!」
単勝5番に賭けた。

しばらくするとファンファーレと共に歓声。
「バァン!」


各馬一斉にスタート!
さすが農耕馬だけあってでかい!
砂ぼこりと共に重進する。

普通の競馬と違うのはレース展開。
スピードが非常に遅い。
さらに大小二つの坂がレース展開を左右する。
坂の手前でわざと止まって休憩したり、他馬の様子を見てスタミナ調整する。
機が熟した瞬間にGO!

農耕馬達の死に物狂いの表情が痛々しい!
1レースで1年は寿命が縮まっているんではなかろうか…。
第二の坂に達するとさらに大歓声!
罵倒にも似た金の声が飛びかう。
「行けぇー!オラ差せぇー!根性見せろやコラー!死ぬ気で走れやボケー!」

今日の飯にありつくために農耕馬達は身を削る。
結果、自分の馬は三位に終わり外れた。
馬の気持ちとは裏腹にレースは興奮した。
馬には申し訳ないがもうひとレース。
「今度は一着、二着を当てに行こう!」
よく馬と話す。
今度は妙におとなしく落ち着き払った姿にビビッときた。
「おばちゃん。あの6番の馬と3番の馬が一着、二着になるように買って。」
受付のおばちゃんに買ってもらった。
さぁー後はレースを待つだけ。
「バァン!」


「わぁーわぁー!」
レース終了。
一際大きな歓声!
会場がどよめく。
万馬券レースだった!
順位は…、
「一着3番、二着6番」
「キ、キタァーーー!!」

102倍の万馬券!
持つ手が震える。
何度も確認するが確かにあってる。
「こんなに幸運が続くことがあっていいのか?俺は自分が怖い。明日、車に跳ねられて死んでしまうのではないか?」
早速換金所へ。
「ジャラジャラジャラ」
「あれ~おっかしいなぁ~。少ないぞ!」
係の人に聞いてみる。
聞けばなんと、自分が買った馬券は馬連複式で好きな馬が三着までに入ればよい馬券。
自分が買いたかったのは複勝だったようだ。
「え~おばぁちゃ~ん!言ったのと違うじゃ~ん!」後で後悔しても遅いのだ。
自分の知識不足を恨むことにして、39・7倍までに下がったお金を握りしめ競馬場を去ったのだった…。
最後はとんだオチになったが自分らしくてこれがいい。
慢れるもの久しからず…。
102日目走行距離:65・96km