十数年前から、仲間たちとバレエを観に外国まで行くことを始めました。
観たいカンパニーが来日してくれないなら
「なんだ、こっちから行けばいいのか」
と単純に思い付いたのと、やはりインターネットで何でも確保できるようになったのが大きい。劇場チケットもフライトもホテルも。
「バレエ・デイズ」と呼ばれる、シーズン最後のお祭り週間のどこか、都合のいい日程で勝手に行って、勝手に帰る。仲間とは都合も違うので打ち合わせしないです、面倒だし。
ホテルは劇場そばのリーズナブル宿を勝手に確保。
昼は勝手に過ごす。どうせ夜は同じ劇場に行くのだから。
舞台がはねた後には一緒に軽く食事。あーでもないこうでもないと思いのたけを語る。作品のこと、ダンサーのこと…。興奮(あるいは憤懣)冷めやらぬインプットのあと、アウトプットできると楽しさは倍増です。
ちなみに、どこの国でもイタリアンとチャイニーズら遅くまでやってますね。
自由だけど淋しくない、約1週間←長さはひとによる。でも毎日、友人のありがたさを感じる日々。
理想の老後の生活だなーと思ったりしたものだ。
それでも…年月が過ぎるうちに顔ぶれが変わり、最盛期(?)より人数も右肩下がりになってきました。
この年は一回休みのひと、他の国のカンパニーと組み合わせて回るようになったひと、関心が別の分野にシフトしたひと…オペラとか華流とかBTSとか様々、もちろん宝塚も。
お目当てのダンサーの卒業とともに「卒業」したひともいる。
もちろん、経済的な事情の変化もそれぞれにあるだろうと思う。
でも「あー彼女、今年は来ないのね」「そっかー残念だねー」で終わり。
深追いはしないし、仲間はずれになるから無理して頑張って行こうとか、そんな発想もない。みんな自立しているから。
「女同士だからどうのこうの」というのは(ご期待に沿えないかもですが)全くありませんwww
…不思議に淋しいという気持ちはなくて、ああ、こうやって人生はうつろっていくのだなあという想いに包まれる。
緩く結び合っていた繋ぎ目が、ゆっくりほどけていく…でもそれは自然な時間の流れだから。
惜しみながらも、キラキラの想い出に感謝するばかりです。
たとえば、舞台がはねた後のまだ明るい街を、レストラン探して歩いたこと…楽しすぎる乾杯。
あるいは、出待ちしてダンサーさんたちと写真を撮ったこと。
別の街を訪ねたり、公演の合間に「塔の都」や、今では行けないモスクワまで足をのばした日のこと。美術館や小さな音楽会巡り。朝市のざわめき。
旅先で買った服は機能性が高いことが多く、今も愛用しています。
もちろん、メインテーマであるバレエ。本拠地、我が家のような劇場で踊る、ダンサーたちの輝き。
彼らに投げる花束を買いに行った花屋。
十八番を振る、劇場首席指揮者の横顔。
幕間に飲むシャンパンの繊細な泡。
オンタイムで観ている時間よりも、記憶を呼び覚まして反芻している時間の方が、遥かに長いような気もする。
みんなみんな、なんて懐かしいのだろう。
想い出は力をくれる…生きていく力を。