雑話210「カイユボット展」
現在、東京中央区のブリジストン美術館で開催中の「カイユボット展-都市の印象派」に行ってきました。
ギュスターヴ・カイユボットは、印象派の画家たちの作品を購入するなどした彼らのパトロンとして有名ですが、彼自身も印象派の画家の一員でした。
近年では、カイユボットの作品自体にも注目が集まっていますが、今展には彼の作品の中でも、主要な作品が多数出品されており、カイユボットを知る大変貴重な機会となっています。
それでは展覧会の注目作品をご紹介していきましょう。
ギュスターヴ・カイユボット「昼食」1876年
※手前に皿とナイフが置かれていることから画家自身も昼食に参加していることを示唆しています。
自宅で家族が昼食をとっているシーンを描いた「昼食」は、第2回印象派展に出品されました。
画業を本格的にはじめた頃、カイユボットは自宅を舞台に多くの室内の情景と肖像画を描いています。
左から母セレスト、執事のジャン・ドーレル、弟ルネ
この時代、「家族」の形態が次第に小さくなる過程で、プライベートな空間に重きをおく考え方が生まれました。
カイユボットの絵画はこれを具現化していて、新しい時代に生きる家族の様子を彷彿とさせています。
また、彼の作品には彼独自の極端な遠近法を使った空間表現が多くみられますが、本作にも自然に見える室内空間の中に、微妙に歪まされた表現があちこちに見られます。
※手前の皿は真上から描かれていますが、机上の食器は斜めに見下ろす視点で描かれています。
こうした意図的な画面構成は、写真や映画の技法との関連を思わせます。
「室内 窓辺の女性」は、第5回印象派展に出品され、その近代の感覚を表現した画面が好評を博しました。
ギュスターヴ・カイユボット「室内 窓辺の女性」1880年
カイユボットは、印象派の画家でありながら、偶然の場面を装いながらも、演劇の舞台のように凝った空間を創造しています。
登場人物は贅沢な自宅で寛ぐ、しかし倦怠感漂う夫婦の情景を演じています。
当時の裕福な中流階級の生活にありがちな瞬間が、浮き彫りにされているのです。
「ヨーロッパ橋」はカイユボットの作品のなかでも、最も有名なものの一つでしょう。この作品は第3回印象派展に出品されました。
ギュスターヴ・カイユボット「ヨーロッパ橋」1876年
ヨーロッパ橋は、モネの連作で有名なサン=ラザール駅の構内の上に架かる陸橋で、この橋を中心に放射線状に延びる6本の街路にヨーロッパの主要都市な名前が付けられているところから、この名で呼ばれています。
ここでも、カイユボットは、極端な遠近法を用いており、前景を橋の空間が広く占め、橋桁の線が収斂する男女の頭部あたりに水平線が想定され、その先の街路は下がっているように見えます。
「ヨーロッパ橋」(部分)
着飾った男女は画面手前の方向に歩み、手前から画面に入り込むように犬が描かれています。
裕福だったカイユボットは、ボート遊びにも熱中しましたが、それはまた彼が好んで描いた題材の一つでもありました。
「ペリソワール」とは、平底の1人乗りのカヌーです。
ギュスターヴ・カイユボット「ペリソワール」1877年
カイユボットは夏季にパリの南東約18キロにあるイエールの夏の別荘で家族と過ごし、ここでカヌーやボート以外に、泳ぐ人、釣りをする人などを題材とする一連の油彩画を制作しています。
この作品も第4回印象派展に出品されました。画家のボートへの愛着が示されているとともに、同主題の表現の可能性への関心が示されています。
左右に広がる川面に、奥に向かって3艘のペリソワールがジグザグに描かれています。
「ペリソワール」のジグザグに配置された3艘のカヌー
それは、画家の目前の漕手が水面をかく飛沫の表現と合わさって、奥行き感を強調するとともに、異時同図法のような時間の経過を示しています。
右端からちらりとのぞくペリソワールの艇尾とオールが横への広がりをさらに強調しています。
展覧会には、このほかにもカイユボットの代表作など多数の名品が出品されているほか、彼の弟であるマルシャルによる当時を伝える貴重な写真なども展示されていて大変興味深い展示となっています。
開催期間の終了が迫っていますので、ご興味のおありの方はお急ぎください。
カイユボット展 都市の印象派
ブリヂストン美術館
12月29日(日)まで








