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雑話213「クレーの4次元絵画」

パウル・クレーは、20世紀前半に活躍したスイス生まれのドイツ人画家です。クレーの名前を知らなくても、彼の幻想的で不思議な絵を見たことのある方は多いことでしょう。


既存の絵画形式に満足できなくなった彼は、絵画に「時間」を導入し、四次元の絵画を制作しようとしました。


その結果が結実したものの1つに、「ガラスのファサード」という作品があります。


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パウル・クレー「ガラスのファサード」1940年

この最晩年に描かれた作品には、主に水彩絵具を使って入念に仕上げられたステンドグラスのような表象が描かれています。この絵画の表面をよく見ると、その至る所にごく小さな塗り残しがあることに気づきます。


ところが、近年の調査の結果、この塗り残しと思われていたものは、下塗りの石膏が剥落したものということが判明しました。


そこで、さらなる調査を進めていくと、作品の裏側に塗られていた石膏が剥落し、そこに油彩で「少女」と「天使」、そして「天体」らしきものが「現われて」いることが発見されたのです。


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「ガラスのファサード」の裏面に現われた絵画

そして、その裏面の木枠には、クレーの文字で衝撃的な一句が書かれていました。


「一人の少女が消え、そして再生する」


さて、絵画裏面の石膏は表面の下地と同様、剥がれ落ちることが計算済みだったのでしょう。おそらく、裏面の石膏は表面の石膏より遥かにラフに塗られていたと思われます。


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少女の顔を覆っていた石膏が、ポロポロと剥がれて落ちています

すなわち、クレーは作品制作当初から、この作品が壊れることを見越していたのです。それは、時間によって遂行されるしかありません。


つまり、この裏面の措置によって、「時間」そのものが作品化されているのです。


では、こうして現われた裏面の作品と文字は、何を意味するのでしょう?


一説によると、この少女はマノン・グロピウスという知人の娘で、彼女は若くして亡くなってしまったそうです。


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マノン・グロピウスと思われる少女

マノンを可愛がっていたクレーは深く悲しみ、彼女に捧げるためにこの絵を制作したのだといわれています。


突然の死を迎えた可愛そうなマノン。


しかし、彼女はやがて天使となり、丸い月か星にのぼっていくのです。


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天使(下)と天体(上)

※上記の図とは逆さになっています

クレーはこの絵に、死んだ少女が、天使となって甦るという意味を込めたのです。