雑話214「モネ展①」
現在、東京上野の国立西洋美術館で開催中の「モネ 風景を見る眼」展に行ってきました。
この展覧会では、モネの絵画空間の構成という観点から、他作家の作品との比較を通して、風景に注がれたモネの「眼」の軌跡をたどっていきます。
第1章 現代風景のフレーミング
鉄道の目覚ましい発達は、技術的、経済的、社会的な発展を引き起こしました。パリ市内に駅が建設され、鉄道網が郊外まで延びると、人々は容易に別の都市や田園地帯へと向かうことができるようになりました。
こうして人々の生活には、都市を離れた田舎で余暇を楽しむレジャーが定着しました。印象派の画家たちにとって、近代生活における行楽地や水辺の風景は、重要な主題でした。
「グランド・ジャット島」も、当時人気の行楽地を描いた好例です。
クロード・モネ「グランド・ジャット島」1878年
モネはこの作品で、ボート遊びに興じる人々を描いていますが、画面奥にはアニエールの鉄道橋と煙突から煙を上げるクリシーのガス工場が見られ、行楽地に迫りくる産業化の波を鋭くとらえています。
画面左に道を配して奥行きを表現する構図は、セザンヌの「ポントワーズの橋と堰」と共通しています。
ポール・セザンヌ「ポントワーズの橋と堰」1881年
セザンヌの作品は、画面両側に木々を配した安定感のある構図の中央に、遠景の鉄道橋が見られ、画面左にはカーヴした道が描かれています。
両作品には共通点も見られますが、描き方は全く異なっています。
モネは、木々、雲の浮かぶ空、セーヌ川の水面、河畔の散歩道といった画面に見られるすべての構成要素を、別々の筆致で描写しています。
一方、セザンヌは、薄塗りで透明感のある色彩を用いて、画面を全体をほぼ同じ調子の短い筆触で描いています。
モネは対象の描写を優先し、セザンヌは画面全体の統一を目的としているのです。
第2章 光のマティエール
「ラ・ロッシュ=ギュイヨンの道」は、ヴェトゥイユ近くの小さな集落の何気ない道の風景です。
クロード・モネ「ラ・ロッシュ=ギュイヨンの道」1880年
遠近法による構図でとらえられた道の地面には、光と、画面左にある木々の長い影が形作る縞模様が見られます。
柔らかな光と空気管を含んだ色彩が用いられ、影の部分は青の諧調、光の部分はバラ色に染まっています。
モネは初期に風景を明暗でとらえていましたが、この作品では、光と影を明るい色彩に置き換えて描いているのです。
この作品と構図のよく似たシスレーの「ルーヴシエンヌの風景」と比較すると、モネの風景の新しさがわかるでしょう。
アルフレッド・シスレー「ルーヴシエンヌの風景」1873年
シスレーはすがすがしい草原の風景を見たままの色彩で描き、伝統的な空間的表現を行っていますが、モネの色彩は固有色から離れた画家の感覚でとらえたものであり、画面も平面化へと向かっていることがわかります。
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