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雑話216「ホイッスラー『絵画に愛や憐れみなどいらない』」

19世紀後半に活躍したジェームズ・マクニール・ホイッスラーは、アメリカ、マサチューセッツ州の出身ですが、主にロンドンで活動しました。


ホイッスラーがロンドンに移り住んですぐに描いたのが、「ピアノに向かって」という作品です。


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ジェームズ・マクニール・ホイッスラー「ピアノに向かって」1958-59年

この絵はホイッスラーの姉が祖父の形見のピアノを弾き、その娘が傍らで耳を傾ける姿を描いています。


感傷的な家族の肖像は、ロンドンの批評家たちからフェルメールの再来と絶賛されました。


しかし、ホイッスラーはセンチメンタルな親子の物語を描こうとしたのではありませんでした。絵の意味よりも、構図のバランスや色彩を重視していたのです。


耽美主義の代表的な画家として知られるホイッスラーですが、この絵を描いた初期の頃にも以下のように語っていました。


”絵画に愛や憐れみなどいらない。

音楽が美しいメロディーによってのみ紡がれていくように、絵画も色彩と構図という純粋な絵画的要素だけでその美を表すべきである”。


耽美主義とは道徳功利性を廃して、美の享受・形成に最高の価値を置く西欧の芸術思潮です。つまり、作品の価値は、それに込められた思想やメッセージではなく、形態と色彩の美にあるという考え方です。


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この絵では母親は黒いドレスをまとい、対照的に娘は白いドレスを着ています。


母親の背景には小さな額縁を、娘の背景には大きな額縁を配し、作品に安定感を与えています。


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こうして計算しつくされた構図と色の配置により、独自の美に挑戦しているのです。