雑話219「フェルメールの青」
日本でも人気の高いフェルメールの作品には、別名フェルメールブルーとも呼ばれる、ウルトラマリンブルーが多用されています。
彼のもっとも有名な作品のひとつである「真珠の耳飾りの少女」にも、少女の頭に巻かれたターバンに効果的に使われ、印象的な作品に仕立てられています。
ヨハネス・フェルメール「真珠の耳飾りの少女」1665-66年
この青色は、かつてはアフガニスタンのバダクシャン地方でしか採れない、ラピスラズリという貴重な鉱石を原料としていました。フェルメールの時代には、何と金と同じ値段で取引されていたそうです。
フェルメールは、この高価な青色を下塗りにまで使用していました。
例えば、下の「デルフトの眺望」では、青い空の部分だけでなく、白く見える水面にも下地として薄くウルトラマリンブルーが塗られています。
ヨハネス・フェルメール「デルフトの眺望」1659-60年
下地として高価な青色を塗っても、あまり意味がないように思えますが、フェルメールは光を表現するために白い色の下にブルーを塗っていたのです。
白い層の下に塗り込んだ青の層に光が当たると、私たちは無意識のうちに、それを光として感じ取ります。フェルメールは経験上そのことを知っていたのでしょう。
「デルフトの眺望」(海の部分のアップ)
彼がそこまで光の表現にこだわったのは、彼の故郷であるオランダの環境が影響していたのかもしれません。オランダは運河や海が近くにたくさんあり、水蒸気が他の地域より多いのです。
そのせいで、太陽の光が少しやわらかくなって人の目に届くので、西ヨーロッパのなかでも「オランダの光は特別だ」といわれています。
こうしたやわらかな光が溢れる風景も、下地に塗られたウルトラマリンブルーも、実際に目の当たりにしないと、その効果は実感できません。
2つともオランダにあり、なかなか行く機会はありませんが、いつかはフェルメールの作品とオランダの風景をこの目で見てみたいものです。


