雑話84「宝石の輝き・・・ルオー」
ジョルジュ・ルオーの絵画の魅力の一つは、厚く塗り重ねられた絵具で描かれた独特の輝きを放つ画面でしょう。
ジョルジュ・ルオー「秋の終わり、聖書の風景」1952-56年
まるで宝石で飾られたようなその絵画は、ルオーの精神性を反映しているかのような厳かな光に包まれています。
20世紀最大の宗教画家と呼ばれたルオーですが、ルオーの作品は伝統的な宗教画を否定するところから出発しています。
特に、初期のルオーはモチーフとして宗教的な題材だけでなく、サーカスの道化師や娼婦を好んで描いています。
ジョルジュ・ルオー「小さい家族」1932年
娼婦は最低限の暮らしをするために、自らをいけにえとして男たちに捧げています。
道化師たちは大衆を笑わせ、日々のつらさを一瞬でも忘れさせることを仕事としています。
彼らは自らも大きな悲しみを背負いながら、他人を慰めていますがその心が癒されることはありません。
ルオーはそんな人々の苦しみや現実の矛盾を残酷とも思える表現で描き出しました。
そのつきつめた表現の中に、深い宗教的感情が込められているのです。
ジョルジュ・ルオー「娼婦」1906年
さて、初期の作品は黒っぽく描かれていましたが、やがて画面には太く明確な輪郭線が現れ、それが力強く画面を引き締めるようになります。
実はルオーは画家を目指す前はステンド・グラス職人の工房で働いており、その体験が絵の中によみがえってきたのです。
1917年に有名な画商のヴォラールと独占契約を結んだ頃から、宗教的主題を多く扱うようになった彼の作品はますます奥深い精神世界を表現するようになりました。
ジョルジュ・ルオー「老いた王」1937年
絵具は厚く塗り重ねられ、色彩は独特の輝きをおびるようになります。
黒々と太い輪郭線に区切られたその画面はまさに気高いステンド・グラスのようでした。
ジョルジュ・ルオー「受難」1935年
このように精神性の高いルオーの絵画は日本でも人気が高く、これまで多くの作品が入ってきていますが、中でも東京の出光美術館にはアンドレ・シュアレスの詩にもとづく「受難」の連作の54点がすべて収蔵されていて、貴重なコレクションとなっています。

