雑話149「マウリッツハイス美術館展」
現在、神戸市立博物館で開催中のマウリッツハイス美術館展に行ってきました。
マウリッツハイス美術館は、ポスターのフェルメールをはじめとする17世紀のオランダ・フランドル絵画の名品を多数所蔵していることで有名です。
この展覧会にも、日本で人気のフェルメールやレンブラントのほか、ハルス、ステーン、ライスダール、ルーベンス、ヴァン・ダイクなどの名品が展示され、見どころ一杯の展示になっています。
それでは、いつものように個人的に気になった作品を中心にご紹介していきましょう。
17世紀のオランダには、風景画を得意とする画家が多くいました。今展でも、当時オランダでもっとも偉大な風景画家とみなされるライスダールの作品をはじめ、代表的な作家の風景画が展示されています。
ヘリット・ベルクヘイデ「狩りに向かう貴族たちのいる、ホフフェイフェル池のほとり」1690年頃
ヘリット・ベルクヘイデは、都市の風景を得意とした風景画家でした。上図はベルクヘイデがハーグの都市風景を描いたものですが、そのなかでも特に美しい作品のひとつに数えられます。
前景に描かれた狩猟の一団の右側に立つ2本の菩提樹を透かして、陽光が右横の建物を照らしています。雲間からまさに太陽が顔を出した瞬間なのでしょう、歩道の水たまりには、にわか雨の名残が見られます。
狩猟の一団と水たまりの部分
次の歴史画の会場に入ると、早速とても賑やかな作品が目に飛び込んできます。
ヤン・ブリューゲルとヘンドリック・ファン・バーレンの合作「四季の精から贈り物を受け取るケレスと、それを取り巻く果実の花輪」です。
ヤン・ブリューゲル(父)/ヘンドリック・ファン・バーレン
「四季の精から贈り物を受け取るケレスと、それを取り巻く果実の花輪」1621-22年頃
このディテール豊かな花輪の図は、自然の豊穣を称える寓意を表現しています。背中に羽をつけた幼い天使たちが、花輪を神々の長、ユピテルの棲む天に向かって引き上げています。
中央のメダリオンの中では、四季を擬人化した4人が、赤い天蓋の下に座る農業と豊穣の女神ケレスに大地の産物を献上しています。
さて、照明を落として薄暗くなった次の部屋には、スポットライトを浴びた絵が一枚だけかかっています。いよいよ注目のフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」の登場です。
ヨハネス・フェルメール「真珠の首飾りの少女」1665年頃
この作品の前にはじっくり見たい人が並ぶためのロープの仕切りがある一方、並ばなくても少し離れたところから見られるようにもなっていました。
「真珠の首飾りの少女」は比較的大きく描かれているため、フェルメールの腕の冴えが良く分かるとされています。
少女の微笑みかけた表情は、瞳のハイライトに呼応して、唇の両端に小さな白い点を置いたことで生き生きしたものになっています。また巧みな彩色で顔の造作やターバン、黄土色の上着に差し掛かる光の効果を捕えています。
真珠の首飾りと、それよりぼんやりとしていますが、陰となった左の頬には、白色に反謝した光が表現されています。青いターバンの陰となった部分は、黒の下塗りの上に天然のウルトラマリンのグレーズ(透明層)をたっぷり置くことで表現しています。
「真珠の首飾りの少女」以外にも魅力的な肖像画が多数展示されています。なかでも肖像画家として高い評価を得たフランス・ハルスの描いた夫婦の肖像がも注目に値します。
フランス・ハルス「ヤーコブ・オリーカンの肖像」1625年
ハルスはこの肖像画をかなり精密に、優美に描いていますが、それは夫婦の豪華な衣服に何よりも明確に見てとれます。二人が着ている、襟のひだ飾りも素晴らしい最新流行の衣装は、真に迫り、指先に生地の手触りを感じそうです。
フランス・ハルス「アレッタ・ハーネマンスの肖像」1625年
同じ部屋には、日本でも人気のレンブラントの自画像が掛けられています。これは最晩年の作品ですが、老いたレンブラントの自画像に懐かれがちな陰鬱な印象はありません。
レンブラント・ファン・レイン「自画像」1669年
この作品で見られる彼の筆さばきの自在な表現力を目の当たりにすると、死の直前であっても、画家の能力は絶頂であったことが分かります。
最後に、静物画の秀作をご紹介しましょう。17世紀のオランダでは、風景画と同様、静物画も伝統的な歴史画や肖像画と並ぶ地位を確立しました。
ヴィレム・ヘーダは素材の生々しい質感、多様な性質の表面に照る光の精妙な描写によって、鑑賞者の目を奪うことを目指しました。
ヴィレム・ヘーダ「ワイングラスと懐中時計のある静物」1629年
実際に作品を目の前にすると、左のグラスの反射している部分が、白く塗られた絵具なのか、展示のライトが絵の表面に反射して光っているのかよく分からないくらいで、その迫真性に驚きました。
その他にも、オランダでよく描かれた風俗画の作品など、ご紹介できなかった当時の名品が数多く展示されています。
人気の展覧会ですので、平日の午前中がお薦めです。時間に余裕を持ってお出かけ下さい。








