絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話
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雑話277(最終回)「MY BEST3 『サン=ラザール駅』」

私の選ぶ絵画ベスト3の最後にご紹介するのは、印象派を代表する画家クロード・モネがパリの駅舎を描いた「サン=ラザール駅」です。


クロード・モネ「サン=ラザール駅」1877年

サン=ラザール駅は、印象派の画家たちが絵の題材を求めてよく出かけたアルジャントゥイユ行き列車のパリでの始発駅でした。


この頃のモネは、パリ近郊での人々の近代生活を描いていましたが、この作品では誰よりも同時代的な主題を描こうとしました。


サン=ラザール駅周辺の風景、1907年

実際、駅舎はまさに近代性そのものといえる場所でした。鉄道それ自体が同時代の技術の到達点を示す偉大なイメージであったばかりでなく、モネの選んだ駅もまた新しいものでした。


この時、サン=ラザール駅を題材に12点の作品が描かれましたが、それらは大きさも描き方も視点もひとつひとつ違っており、後年の連作とは対照的です。


クロード・モネ「サン=ラザール駅、列車の到着」1977年

しかしながら、他の連作と同様、この賑やかな駅のイメージのなかで人間の存在はほとんど影が薄く、色彩豊かな靄が主役になっています。


モネは絵のモティーフを興味のある対象に集中しますが、ここではそれは紛れもなく、機関車の煙突から立ち上り、ガラス屋根の駅の冷たい空気のなかにゆらゆらと流されていく半透明の蒸気の雲です。




エミール・ゾラはこれらの作品について次のように述べています。


前方に突進する列車の車輪の響きが聞こえ、巨大な蒸気機関の格納庫を通してうねりながらほとばしる煙が見える。


その広がりのなかに美がある近代的情景、これがすなわち今日の絵画なのだ。


皮肉なことに、これはモネにとって最後のまとまった形での都会の情景となりました。


「サン=ラザール駅」の後、モネは主題として近代的フランスをやめ、ふたたび「森と河」に霊感を得ようと戻っていったのです。


これらの連作はモネにとっては成功ではなかったかもしれませんが、人工物をここまで感動的に描写できるのはやはりモネの才能でしょう。


他の画家が描くと何の変哲もない平凡な風景も、モネの手にかかると見事な風景画に変身します。そのモネのマジックを最もよく見て取れるのが、この「サン=ラザール駅」ではないでしょうか。


さて、5年余りに渡りお届けしてきました「フランス印象派 知得雑話」も、この回をもちまして終了とさせていただきます。長い間、御拝読頂き本当にありがとうございました。

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