もう2年前の7月になりますね。当時の中3生のお母様との面談でした。
「さすがに滑り止めと言ってもH高校はおススメできませんね。それならS高校の方が…」
この生徒は体育と美術がとても得意な子でした。男女問わず友人も多いタイプです。今の言葉では陽キャと言われるのでしょう。反面で勉強は好きではなく、中々に苦労しました。ただお母様は子の特性をしっかり受け止めているのが理解できましたし、岩倉に移転して以降はこのお母様からの紹介件数が断トツのトップだったりします。
「私はあの子よりもさすがに勉強ができたので(苦笑)でも高校はもっと楽しい所に行きたかったと今でも思っているんですよ」
その話題の高校は私の母校。確かに学業に100%振った、郊外のセカンドグループ進学校になります。
「外部の人が来ない高校の文化祭って何なんでしょうかね?」
そう言われて思わず笑ってしまいました。「確かにあれは中学レベルの行事ですね」と。
それから5か月後。進路を決定する面談がありました。彼女は秋頃にH高校の部活の顧問から声を掛けられていました。「ウチに来てやらないか!?」と。家族で話し合ってその高校で部活を頑張ろうと決めたとお母様から伝えてもらいました。
「先生、何だかごめんなさいね。塾的にはHでは見栄えがしないかもしれません。でもうちの子には合っていると思うんです。勉強はふにゃふにゃですけど、向こうから請われて行くわけですよね。そういった相手の思いには意外とあの子応えようとするんです。だからH高校が娘には一番の進路だと考えているんですよね」
「思いに応える性格は何となく分かります。話し合った結論を伝えて頂いてありがとうございました」
そして私の教え子からは2人目になるH高校に進学していきました。
さて彼女の高校生活が2年終わりました。そしてその間5回ほど近所で出会っています。表情や話しぶりから分かります。「充実していると」
まず昨年の夏、アルプススタンドでチアガールをしている姿が全国放送で映りました。誉高校が甲子園に出ましたからね。運動神経も良くスタイルも見栄えがする彼女は、即席でチアになったのでしょう。それからしばらくして、彼女が大切にしている人が、甲子園のレギュラーメンバーにいたことも分かりました。その話は同級生だった男子生徒から聞きました。
「全く塾では冴えなかったのに、リア充やりやがって。俺はまだベンチ入りも果たしていないのに…」
そして先日の卒業式。彼女は在校生を代表して送辞を務めました。まさか学年の代表になるとは。お母様の話したことが現実になっています。その代わりにお母様も大変ですね。早朝というよりは深夜から弁当を作ったり、始発より早い集合時間の為に片道30分の距離を結構な頻度で送迎しているようですし。
そして今週、スプリングスクールで広場に行くと、とても速い球足でソフトボールの練習をしている親子がいました。
私が驚いたのは中学時代よりも敬語がきちんと話せるようになっていたこと。そして捕球姿勢の柔らかさです。
「凄いじゃん!代表で送辞をしたんだろ!」
「え、何で知っているんですか?」
「もっと詳しく知っているよ。答辞の子と仲良くしているんだろ」
「本当にそこまで知っているんですか」
「憧れのカップルだな」
「付き合っていると色々ありますよ」
「あと1年充実した高校生活が送れるといいね」
「はい!」
学習塾の指導者としては形あるものをこの子に残せたのかは分かりませんが、とにかく高校生活はとても充実している様子。将来の目標もやんわりと聞かせてもらいましたが、彼女には合っていそうな気がします。
合格発表から5日ほど経ちました。この合格が「価値ある合格」だったのか「発表の日が最高潮」だったのかを決めるのはこれからです。是非、能動的になって進学先の学校を「意味ある場」にできるような生活を送ってほしいですね。