ウォーキングにはどうしてもNくんに参加してほしかったのです。
彼には案内の紙を渡すときに「必ず来てほしいな」と一言添えました。
中3生で最初に入塾した彼。
当時と比べると合計点数は2倍近く。順位は反対に半分。
さらに模試の偏差値は10以上上がりました。
しかしながら彼の後にこの学年入ってくるのは女子、女子、そして女子!
元々そう口数の多くないNくんは、「黙々と学習する場」として塾を活用してきました。
2年生まではそれで良かったのです。しかし私は3年になって+αを彼に求めてきました。
それは質問であったり、自主的に自習に来ることであったりと言う面なのですが、
彼は授業時間前10分前にしっかり来て、終わるとすぐに家に帰るという、
模範的ではありますが、それ以上踏み込むことの無いそんな生徒でした。
その壁を壊すのが、夏の勉強合宿だったのですけれども、
彼は野球のクラブチームに入っていて、合宿の時は全国大会でした。
そんな経緯があって、冒頭のやり取りになったのです。
先月に近所の公園でたまたま彼と会いました。
私は長男とその友だちを連れて、キャッチボールをしている所に、
バットとグローブを持った中学生軍団がやって来たのです。
そこにNくんもいました。塾では見せない表情でした。決して口数が少ないわけでもありません。
「その感情をウォーキングで見せてほしい」
これは直接言ったわけではなく、私の心の声です。
ウォーキングでのNくんは前半はいつも通りおとなしく、
でも何となく小牧山レースには参加し、昼の縄跳びも黙々と一緒に遊びました。
夕方になるといつの間にか口数が増え、教室では見せない雰囲気になりました。
まさしく公園で友人と野球を楽しむN君の姿でした。
先週のこと、Nくんは授業が終わってもなにやら問題を解いています。
分からなかった所と、終わらなかった所を済ませたかったようでした。
たった20分ですが、自ら残って済ませて行ったのです。
「イベント効果」言葉が頭に浮かびました。
受験まで3カ月余り。今まで使ってこなかったギアも使ってみようか!
実は今年の6年生に1人、私立中学を受験する生徒がいます。
お家の方の考えは「穏やかな私立中受験」
週に数十時間も塾に通うのではなく、普通よりは頑張ってでも普段の生活も送りながら、
実力と運が伴えば、子どもの志望する中学に通わせたいと言う考えです。
「もしダメでも、それに向けて頑張った勉強は財産になりますから」
1年半前の入塾面談でお母様が話していた言葉です。
このMさんは記述問題は得意なのですが、暗記が大の苦手。
さらに漢字力に不安があるので、社会の用語暗記は当初ボロボロでした。
しかし毎回、前回進めた内容のテストを繰り返してきました。
最初の頃は半分に正解が届かないこともあり、
「そんなことではダメですよ」と説教して、涙を流す手前までいったこともあります。
それがここ10回のテストにおいて8回の満点。
そして私をさらにうれしくさせたのが、
「以前は1時間くらい時間がかかった。今は20分くらい」
ずっと頑張ってきたので、キャパが大きくなっていたんですね。
入塾時にお母様が話していた言葉が蘇ります。
でもせっかくなら合格して名古屋まで通ってほしいな。
成長したMさんの後姿をみてそう思いました。
中3のKさんがウォーキングの休憩中に作っていたもの。
薄い葉が重なった作品が、日々頑張り続けたMさんの日々に重なりました。