これは禁忌の書である。 前回紹介した「日本怪奇小説傑作集1」 に収録されている村上槐多の「悪魔の舌」
見たことも聞いた事もない作家だなあ。
まず初めに、冒頭の紹介文に興味を惹かれた。
<むらやま・かいた
明治29年から大正8年まで、24年間の短い生涯を思うがままに生きた。(略)
そのフォービズム風の熱情的な画風で天才画家の名をほしいままにしながら、放浪、デカダンス、病苦のうちに没した。(略)著者の熱狂的な性格がよく表われた怪奇小説史上の名作で、読後に強烈な残像が刻まれるような作品である。>
村山槐多は、画家や詩人としての方が有名らしいが、小説「悪魔の舌」も彼の生きざま同様、有り余る熱情がほとばしる作品になっている。
それは、こんな場面から始まる。。。
ある青年が友人・金子鋭吉からの奇妙な電報を受け取り、謎解きのような電文を頼りに出かけてみると、そこで金子は自殺していた。
ある青年と金子との出会いは変わった出会いだった。
青年は、ある魁偉な面をした巨大な唇を持った男が食事をしている様に見蕩れていた。
「おい君は何故そうじろじろと俺の顔ばかり見るんだい」
「うん、どうもすまなかった。」
「人にじろじろ見られるのは兎に角気持ちが善くないからな」>
こうして彼らは友達になった。
複雑な家庭環境
人目を惹く魁偉な容貌
虚弱な身体
そして、世にも恐ろしい嗜癖
ここで語られている金子鋭吉は、多分に著者・村山槐多の投影であると思われる。
そして、最後の一文が妙に白々しく哀しい。
<悪魔の顔と云うのは、おそらく詩人の幻想に過ぎまい。>
文体は全く違うものの、どこか江戸川乱歩のような不気味さを想像させる作品である。
いや、20ページにも満たない短篇小説ながら、与えられる衝撃は彼でなければ書けないものだったのかもしれない。
夭逝の狂気。
非常に惜しい才能だった。
☆☆☆☆☆
- 紀田 順一郎, 東 雅夫
- 日本怪奇小説傑作集1






