指定暴力団山口組系の幹部による「みかじめ料」を支払わされたとして、愛知県の事業者が山口組のトップらに返還を求めた訴訟の控訴審判決が名古屋高等裁判所であった。(名古屋高裁令和5.12.14)

 

判決は、一審判決と同様、みかじめ料の返還を命じた。

この判決で注目すべきことは、暴力団が消滅時効を援用することが権利の濫用にあたるかである。

 

まず、控訴人は、平成20年2月には被控訴人Bやその配下から、運営する会社や家族に危害を加えるかもしれないような気勢を示して相当に脅迫され、

 

また、平成25年4月にも被控訴人Bから、会社や家族に対し要求を容れなければ危害を加えられるおそれがあるかのように言われて脅されていたものであり、

 

さらには、後援会費や誕生日祝いの名目で一定の間隔で金銭を交付させられ、被控訴人Bの配下の暴力団員を通じて金銭を交付させられる状況であり、継続的に被控訴人らを畏怖した状態であったというべきである。

 

しかも、控訴人は、被控訴人Bやその所属するDの上部団体であるAの被控訴人やその配下の暴力団員による報復を恐れて、金銭の返還請求や、警察への被害相談すらすることもできず、被控訴人らに脅された状態をやむなく受け入り、諦めていたものと認められる。

 

控訴人が上記(1)のような状況に陥り、被控訴人らに対する賠償請求を行わなかったものは、本件徴収行為2から8までが、

 

被控訴人Bより、…のとおりのAの威力を利用しての資金獲得活動に係る事業の一環というべき被控訴人Cの事業の執行と密接に関連する行為として行われたことによるものであり、

 

いわば被控訴人Bの違法な本件徴収行為2から8まで自体、並びにその後に行われた違法行為である本件徴収行為9及び10並びにそれを利用して行われた被控訴人Cの違法な資金獲得活動が原因で控訴人が被控訴人に対する賠償請求を行わなかったといえるのであるから、

 

「被控訴人らが、控訴人が本件徴収行為2から8までについて民法724条前段に定める期間内に被控訴人らに対して賠償請求を行わなかったことに乗じてその消滅時効を援用することは、権利の濫用にあたり、民法1条3項により許されないというべきである。」として、消滅時効の援用が権利の濫用にあたるとした。

 

一審判決についてはこちらで

 

 

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