ユーチューブに投稿した動画で裁判の勝訴率について虚偽の発言をすることが不正競争防止法違反にあたるとして、弁護士が損害賠償を求めた訴訟の判決が東京地方裁判所であった。(東京地裁令和7.15)
判決は、不正競争防止法違反(2条1項21号・信用毀損行為)を否定した。
この判決で注目すべきことは、本件発言が虚偽の事実を流布するものかである。
まず、被告発言の内容は、厳密に正確性を期したものではないことを前提として、原告と被告が関与する裁判につき何十件と判決言渡しがされたが、被告が9割または9割以上の事件で勝訴したという事実を示すものと認められる。
これに対し、客観的には、原告と被告が関与する裁判のうち、被告発言の時点で判決言渡しがされた裁判は合計10件(事件1ないし10)であり、
これらの9件(事件6以外の事件)において、一部認容判決(一審)がされたか、その結論を維持する内容の控訴審判決がされたことが認められる。
そして、勝訴の件数について、提訴者側である被告から見れば、一審については、請求権(不法行為)を認めて全部または一部認容された事件、
控訴審についても同様の結論となった事件を勝訴として数えることには一定の合理性があるから、この意味で被告は9割(9件/10件)の事件で勝訴したと認められる。
そこで、被告発言の内容が「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」にあたるといえるかについて検討すると、
被告発言のうち、弁護士の営業上の信用に特に関係するのは勝訴率に関する部分であるところ、
原告と被告が関与する裁判の件数に関する(「何十件」)は不正確であるものの、勝訴率の算出の基礎となる裁判の件数は客観的事実として10件と相当数に及んでいること、
被告発言は厳密に正確性を期したものではないことを前提とするものであること、被告は原告と被告が関与する裁判について9割以上の事件で勝訴したといえることを考慮すれば、
「被告発言の内容は、客観的事実に反する事実、すなわち、虚偽の事実を示すものとはいえないし、原告に営業上の信用を害するものであるともいえない。」として、不正競争防止法違反(信用毀損行為)を否定した。
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