P2P方式のファイル共有プロトコルであるBitTorrentを利用したネットワーク「ビットトレントネットワーク」を介して、インターネット上に動画を公開することが著作権侵害にあたるとして、プロバイダ責任制限法に基づき発信者情報の開示を求めた訴訟の判決が東京地方裁判所であった。(東京地裁令和5.5.12)

 

判決は、著作権侵害を認めた。

この判決で注目すべきことは、ハンドシェークの通信から把握される情報はプロバイダ責任制限法5条1項の権利侵害に係る発信者情報に該当するものかである。

 

まず、本件においては、プロバイダ責任制限法5条1項に基づく請求がされているところ、同項柱書が「当該権利の侵害に係る発信者情報」について、

 

「発信者情報であって専ら侵害関連通信に係るものとして総務省令で定めるもの」である「特定発信者情報」と「特定発信者情報」「以外の発信者情報」とに分けて規定し、

 

前者に関しては、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律施行規則5条が「侵害関連通信」として、

 

特定電気通信役務の利用に係る契約の申込み等(同条1号)、ログイン(同条2号)、ログアウト(同条3号)及び同契約の終了(同条4号)のための各手順に従って行った識別符号その他の符号の電気通信による送信のみを規定していることからすると、

 

プロバイダ責任制限法及び上記施行規則は、権利侵害をもたらす通信から把握される情報(特定発信者情報以外の発信者情報)とそれ以外の通信から把握される情報(特定発信者情報)とを明確に区別した上、

 

後者については、それに該当する情報を4つの類型の通信に係るものに限定していると解するのが相当である。

 

そうすると、ハンドシェークの時点までに原告各動画が「送信可能化」されていたとしても、ハンドシェークの通信から把握される情報は、

 

特定発信者情報以外の情報に該当しないのはもとより、上記4つの類型の通信に係る情報に該当しない以上、特定発信者情報にも該当しないというべきである。

 

したがって、「ハンドシェークの通信から把握される情報は、プロバイダ責任制限法5条1項柱書所定の『当該権利の侵害に係る発信者情報』にあたるとはいえず」として、開示請求の対象外とした。

 

後の控訴審判決では、一転して開示請求の対象になると判断しております。

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