釣り用うきの形態を模倣した商品を製造販売することが不正競争防止法違反にあたるとして、釣り具メーカーが損害賠償を求めた訴訟の判決が大阪地方裁判所であった。(大阪地裁令和4.8.25)

 

判決は、不正競争防止法違反(2条1項1号)を否定した。

この判決で注目すべきことは、釣り用うきの形態が不正競争防止法で保護される商品等表示になり得るかである。

 

まず、法2条1項1号は、他人の周知な商品等表示と同一または類似の商品等表示を使用等することをもって不正競争に該当すると規定しており、

 

これは、周知な商品等表示の有する出所表示機能を保護する観点から、周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止し、事業者間の公正な競争等を確保する趣旨と解される。

 

そして、色彩を含む商品の形態は、特定の出所を表示する二次的意味を有する場合があるものの、商標等とは異なり、本来的には商品の出所表示機能を有するものではないから、

 

その形態が商標等と同程度に不正競争防止法による保護に値する出所表示機能を発揮するような特段の事情がない限り、商品等表示に該当しないというべきである。

 

そうすると、「商品の形態は、1.客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴(特別顕著性)を有しており、

 

かつ、2.特定の事業者によって長期間にわたり独占的に利用され、または短期間であっても極めて強力な宣伝広告がされるなど、その形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知である(周知性)と認められる特段の事情がない限り、

 

法2条1項1号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当である。」とした。

 

これを本件についてみると、まず、原告商品1~11は、釣り用のうきとして、もっぱら釣果を得るための実用品であり、

 

その性能を発揮するために形態が工夫されているものであって、基本的には、需要者が形状や色彩等のデザインを鑑賞するためのものではない。

 

また、使用時にはそのボディの大半が水中に隠れている状態であり、実際の性能は外観のみでは判断し難いから、

 

釣りをする一般的な需要者においては、購入時に、釣果に関する自らの経験や評判ないし価格を参考に選択しているものと考えられ、少なくともボディの色や形状を主に観察して違いを見極めるような商品ではないから、

 

「ボディの形態をもって特別顕著性があるというためには、他のうきとはかけ離れた特異な形態を備えている必要がある。」とした。

 

そのうえで、被告商品販売時において、ZF形態ないしSP形態と同一または類似する特徴を備えた商品は複数存在し、これらの形態はありふれたものになっていたというべきであることなどから、

 

「ZF形態及びSP形態は、他の同種商品との関係で顕著な特徴を有しているとはいえず、原告商品1~11のその余の特徴も特異なものとはいえないから、原告商品1~11の形態には特別顕著性が認められない。」として、商品等表示にあたらず不正競争防止法違反を否定した。

 

後の控訴審判決についてはこちら

 

 

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