熟議の再投票、再考の国民投票制度があればいい | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

EU加盟国首脳の間からイギリスに対してEU離脱交渉の早期開催を求める声が上がっている。

EUからの離脱を求める国が増えないようにEUの結束を図ろうとしているのだろうが、如何にもイギリスに対してEUの方から三下り半を突き付けているような印象があるのがよくない。
これ以上欧州諸国の間で亀裂が拡がりませんように、と祈っている。

イギリス内部ではどうも亀裂が拡がっているようだ。
スコットランドや北アイルランドがUKからの独立を志向するのはある意味で自然の流れであるが、ロンドンでも自立の話が始まっていると聞くと、いやこれは大変なことだ、と頭を抱え込まざるを得ない。

知恵のある人が出てきてなんとかUKの崩壊を食い止めて欲しいと思うが、一旦スイッチが入ると行くところまで行くしかないのだろうか、と思わないでもない。

キャメロン首相はこういう事態を予想して何らかの手を打っていたのだろうか、と不思議でならないが、多分高を括って何の備えもしていなかったのではないかと思う。
どんなに学識のあり周到な人も、時々は漏れがあり、あるいは手抜きがあるものだ。

一国の首相としても政党の代表としても、自分の見込み違いについての責任を取らざるを得ないのは当然である。
辞任の時期が10月ではちょっと遅過ぎる、という印象である。
日本だったら、さっさと辞任して後任のリーダーを選ぶ手続きに入るはずだ。

あの国民投票がどうにも拙かった、という意見が識者の間からも上がっている。
基本的に私と同じような意見を持っておられる方が多いな、という印象である。

しかし、それではどうすればよかったのか、ということまで言及されている方はおられないようだ。

国民投票のリスクを十分計算しながら、国政の重要な課題について国民の声を十分に反映するような仕組みをどうやって作るか、という観点からこの問題を更に掘り下げる必要がありそうである。
直接民主主義制度のいいところと間接民主主義制度のいいところをどうやって組み合わせるか、という問題である。
代議制と国民投票制度のバランスをどうやって取るか、代議制と国民投票制度をどう組み合わせるのがいいか、と言い換えてもいいかも知れない。

要は、どうやって熟議の国民投票制度を実現するか、ということである。

イギリスでは国民投票のやり直しを求める署名が既に270万を超えたそうである。
この勢いなら1000万を超えるイギリス国民が国民投票のやり直しを求めることになるかも知れない。

拙速な国民投票だった、と言うしかない。

再投票を実施するためには法の制定が必要だというだが、初めから国民投票の再投票制度、再々投票制度を導入しておけばよかった、ということだろう。
国民投票のやり直しを求める請願者は、国民投票の投票率が75パーセント以下の時、及び国民投票での賛成が60パーセントを下回る時に国民投票をやり直すべきだ、と主張されているようだ。

国民投票について最低投票率制度を導入しようという議論は我が国において憲法改正国民投票制度を導入しようという議論が出てきた当初の段階で弁護士会等から出されていたことがある。
熟議の国民投票制度を実現するためには、法の定める最低投票率制限を下回るような国民投票の効力は認めない、くらいの仕組みは必要なようだ。

同時に、国民投票が51対49になった場合に、51の国民の意思に残りの49の国民が従わなければならないと仕組みも問題である。
イギリスのEU離脱の国民投票は、概ね52対48だそうだが、如何にも危うい。
僅か2の人が考えを変えただけで違った結果になったり、結局は何も決められない状態になってしまうのだから、こういう時は、時間を置いてもう一度国民投票をやるくらいの柔軟な制度設計が望ましい。

うん、再考の国民投票制度。

最低投票率制度と再考のシステムを内包している再考の国民投票制度が最高だな、と思っている。

さて、如何だろうか。