ご本人が抱えておられた重いものからすると実にささやかな正義だとは思うが・・・ | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

昨日、横浜地裁で簡裁の裁判官が課した過料の制裁を取り消すという珍しい決定が出されたのだが、皆さんはお気づきになっただろうか。

特別の事情があり離婚の手続きが出来ないまま33年間出生届を出せないでいた母親に対して、子どもの出生の日から14日以内に出生届を出すべしという戸籍法第49条の規定に違反していたという理由で、簡裁の裁判官が過料の制裁を課した件について、上訴審の横浜地裁が「原決定を取り消す。過料の決定を取り消す。処罰しない。手続き費用は国庫の負担」という趣旨の決定を下した事案である。

背景事情をある程度知っている私からすれば極めて当然至極の決定だが、実際の事情を知らない裁判官は、外に現れた事象からだけ判断して比較的簡単に過料の制裁を課してしまうことがあるというケースだろうと思っている。

戸籍法第135条は、正当の理由なく出生から14日以内に出生届を出さないときに過料の制裁を課すことにしているところ、「特別の事情があり離婚の手続きが出来ず、33年間出生届を出せなかった」という事情が法に言う正当の理由に該当するか、という点についての司法判断の違いから簡裁と地裁で結論を異にすることになったのだが、私は地裁の判断が正当だと確信している。

ああ、よかった、よかった、というところだ。
ちょっと大袈裟かも知れないが、これでささやかな正義が実現した、と思っている。

この正義は、当事者や関係者の方々が長年背負ってこられた重いものに比べれば、実にちっぽけなものだろうとは思うが、しかし、この決定を獲得するために弁護団の皆さんや支援者の皆さんが如何に真剣に努力されていたか、ということを知っている者として、灌漑一入である。

弁護団の皆さんの立派な弁護活動ぶりに心から敬意を表したい。
とても一人の力では、ここまでの力は発揮できなかっただろうと思っている。
志を共にする有能有為の弁護士が協働すれば、こんなことまで出来るんだ、ということを改めて学んだ。

私自身は弁護団の中には入らなかったが、国会議員の時代に無戸籍問題、民法772条問題に取り組んできたことから、弁護団の要請に応じてささやかな意見書を作成し、裁判所に提出させていただいた。
正義の実現にほんの僅かでも貢献できたかも知れないな、と思って、私に声を掛けてくれた井戸まさえさんに感謝しているところである。

皆さん、ありがとう。
皆さん、お疲れ様でした.