国民の司法参加を後退させかねない検察審査会制度の改悪など考える必要はない | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

検察審査会の強制起訴制度の運用の見直しや検察審査会法の改正を求める議論が、検察官出身の自民党の衆議院議員から上がった。

あれれ、ずいぶん視野の狭いこと、と言わざるを得ない。

強制起訴に至ったが、結局は裁判所で無罪判決で終わってしまった、というケースが続いていることに余りにも引きずられての「強制起訴制度の見直しの時節到来」発言だと思うが、国民の間にある根強い検察官不信に気付いておられないようなのが残念だ。

検察官が概ね誠実に職務を遂行し、概ね公正に事件の捜査を行い、概ね公正に公訴権限を執行しているということは否定しないが、基本的に検察官の職務執行は密室で行われており、部外者がその職務執行の適正さをチェックする手段は基本的にないと言わざるを得ない。

外部の目が入らないと、どうしても独善的になり、検察独特の正義論が支配するようになり、結果的に国民の常識的な理解とかけ離れた結論を導き出しかねないところがある。

検察審査会の強制起訴制度は、裁判員制度の導入に併せて、国民の司法参加によって適正な検察官の職務遂行を促すための一連の司法改革の一環として導入されたもので、この段階で検察審査会の強制起訴制度の見直しを言い出すのは、言ってみれば国民の司法参加の道を後退させかねない危うい議論だと言っても差し支えない。

当時の司法改革を推進してきた議員の発言力が今の自民党の中でどれだけあるのか分からないが、件の参議院議員がもっぱら検察官の立場に立って強制起訴制度の見直しを言い出しているのであれば、制度創設当時、自民党の中で議論に積極的に参加していた者の一人として取り急ぎ反対の声を上げておきたい。

なお、件の衆議院議員は、国会の議事録などを見て、当時国会での議論が殆どなされていない、などと指摘しているが、国会での審議ではもっぱら野党議員が質疑に立っており、野党の立場から言ってもこの強制起訴制度の導入は画期的で、いい制度だと認められていただけのことである。

少なくとも、自民党の側からこの問題を取り上げるのは拙い。
如何にも自民党は、検察審査会の決定により強制起訴され、結局裁判で無罪判決を受けた被告人の立場に立って問題提起しているように映る。

件の衆議院議員がどういう背景からこんなことを言い出したのか、知りたいところである。