今朝の朝日の論調には、異論がある。
憲法問題を取り上げるのは結構なのだが、登場した憲法学者や政治学者の方の主張ぶりが余りにも偏向している。
自民党安倍政権には絶対に憲法改正の発議をさせない、そのために何としても来る参議院選挙で憲法改正阻止に必要な議席を野党が取れるように力を尽くす、ぐらいの発言をさせている。
学者の方々にここまで政治に踏み込ませるような物言いはさせない方が得策だろうにと思うが、朝日の悲壮ぶりが目立つ。
何かずいぶん追い込まれているような印象である。
このくらい言っておかないと世論の流れを変えられない、とでも思っているのだろうか。
憲法学者の方が、緊急事態条項の創設は憲法を変えないでも出来る、法律の改正をすれば足りる、ぐらいの発言をされているのも如何かと思う。
どうも皆さん、国民の良識というものを信じておられないようだ。
憲法改正の発議がなされたら、どんな憲法改正案でも通ってしまいそうだ、何としても憲法改正の発議をこの段階で阻止しなければならない、と思い込んでいる節がある。
私などは国民の良識を信じている方だから、変な憲法改正案など国民投票で吹き飛ばしてしまえ、国民の合意が得られないような憲法改正案などは憲法改正の発議の前に国会の審議で完膚なきまで叩きのめしてしまえ、という立場に立っているのだが、国会の審議も国民の投票も安心ならない、ということで、何が何でも門前払いにしたいのだろう。
自民党安倍内閣の現行憲法に向き合う姿勢がどうもよくないな、という認識は私も持っているが、しかし、だからと言って自民党安倍内閣には一字一句も現行憲法には触らせない、などといった頑なな態度は慎んだ方がいいだろう。
曲がりなりにも国民の信任を得て成立した安倍内閣である。
朝日や件の憲法学者、政治学者の方が懸念するような無茶な憲法改正案をごり押ししてくるとは考えられない。
それこそ、護憲平和の党を名乗っていると思われる公明党や、護憲的改憲論者が相当いるはずの自民党の国会議員が激しく抵抗するはずである。
憲法改正を牽制するのはいいが、国民の判断を誤らせかねない独自の議論で憲法改正の大事業を葬り去ろうとするのは、どうも感心しない。
自民党の憲法改正草案は、自民党の某幹部が指摘するとおり野党時代の自民党が当時の民主党に対峙するためにあえてでっち上げたと評価してもいいような対決型憲法改正案である。
こんなもので国民の合意が得られるとしたら、大変な勘違いである。
国民の大多数の共感を得られるような憲法改正案を作り上げるのが、政権与党の役割のはずだから、朝日は悲壮感のあまり極論に走らない方がいい。
国会議員の任期の延長や国会の招集手続きの変更、さらには非常時における各種立法を憲法の条項の改正をしないまま法律でやってもいい、ということになったら、それこそ臨時国会の召集の懈怠等の憲法違反を言えなくなってしまう。
憲法学者の方はそこまでのことを意図して憲法の改正によらないでもいいではないか、と言っているわけではないと承知しているが、こういう議論はしばしば独り歩きするから注意した方がいい。
憲法の一字一句も変えなくてもいい、と言えるほどには日本の現在の憲法は立派なものではない。
憲法のどこをどう変えるか、ということくらい、与党・野党を問わず自由闊達に議論できるような環境にしたいものである。