分かりやすい救急救命士法の解説 | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

私自身の法の解釈はあくまで私自身の感性に発しており、必ずしも法律用語としての厳密性まで要求しておらず、しばしば揺らぐ。

揺らぎながらもなんとか結論の妥当性を探ろうとするところがある。
法解釈で行き詰ったら立法的解決で解決しようという性向が強いから、法律用語の厳密性を求める人からは嫌われる。

早速可罰的違法性などという、どちらかというと立法性政策配慮の中で持ち出した概念について法解釈なり、法適用の厳密性を大事にする方から苦情が寄せられた。
あくまで橋本雄太郎氏の所論についての私独自の感想めいたものだったのだが、ここは、そういう厳密な議論に基づいて作成された「新解釈 わかりやすい救急救命士法ー救急救命士の未来像と新たな法解釈ー」(ヘルス出版)の記載を引用しておこう。

なお、この本に記載されている法律解釈の記述部分は、法律監修にあたった岡田康男弁護士と川村裕氏の一年近くの協議・検討の結果であって、総合監修に当たった私自身は法律の解釈にあたる部分についてはこれを尊重し、それ以外の部分を担当した執筆者の記述の誤りや誤字脱字、記述の不十分さ、全般的校正などを行っている。

国会議員の時代はその程度の理解で十分役に立って必要な法律の制定や改廃を行っていたので、どうも講学的には不整合だったり、不足が出てきてしまうのだろう。
まあ、その程度のものだと思って、受け止めていただくのがいい。

なお、わかりやすい救急救命士法では、後記の通り記述されている。
法令による正当行為、正当職務行為だから違法性が阻却される、という理屈を淡々と述べている、ということだろう。

「第43条(業務)
第1項
(1)第43条第1項は、救急救命士に、医師、看護師(保健師、助産師を含む)の業務独占の例外を許す規定です。
救急救命士は、病院前の救急医療について、専門の医療資格者としての国家資格を認められたものですから、医師、看護師による医療業務独占の例外として、診療の補助者として医療行為を行うことを認めたものです。
医師でなければ、医業はできませんし(医師法第17条)、看護師(保健師、助産師を含む)でなければ、診療の補助はできません(保健師助産師看護師法第5条、第31条第1項、第32条)。このように資格を持つ者しかその業務ができない資格のことを業務独占資格といいます。
「医業」とは、当該行為を行うにあたり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ、人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼす恐れのある一切の行為(医行為)を反復継続する意思を持って行うことであると解されています(医政発第0726005号平成17年7月26日厚生労働省医政局長通知)。医師の医学的判断及び技術をもってしなくても人体に危害を及ぼすおそれがない行為は、医行為とはなりません。たとえば、自動血圧計による血圧測定などは、人体に危害を及ぼすおそれがない行為なので医行為とはされていません。

(2)ところで、救急救命士資格を持たない救急隊員が、救急救命処置の一部を合法的に行えるのはなぜでしょうか。
これは救急業務の中に、傷病者が医師の管理下におかれるまでの間に、緊急やむを得ないものとして、応急の手当てをおこなうことを含むとされていて(消防法第2条第9項)、法令による正当行為(刑法第35条)として、違法性が解消されるからです。しかし、救急救命士資格を持たない救急隊員が行える救急救命処置は、総務省消防庁告示で定められていて、特定行為などは除外されています(救急隊員の行う応急処置等基準 昭和53年7月1日消防庁告示第2号)。

(3)以下、略。

第44条(特定行為等の制限)
(1)(前略)
これらの特定行為について、医師の「具体的指示」を必要とした趣旨は、特定行為を実施するか否かのはんだんあるいは手技に高度の専門性が求められるため、救急救命士からの具体的情報提供と医師からの具体的指示がリアルタイムで行われる必要があると考えられたためです。

(2)略

(3)特定行為の内容を含め救急救命処置の範囲に関しては、医療技術が日進月歩急速に進歩していることに加え、社会状況も変化を続けていることから、救急現場の現状に即した実務的な解釈・運用についての検討が行われています。同検討会での検討に基づいて救急救命処置の範囲が拡張されたときは、それまで救急救命士が行うことができなかった行為が、特定行為として救急救命士法施行規則第21条に追加されることがあります。平成16年に、それ以前は、救急救命士は気管挿管ができないとされていましたが、気管挿管が特定行為に追加されたのはその例です。

(4)東日本大震災のような非常時に、医師と連絡が取れず、具体的指示が得られないとき、心肺停止状態の患者に出会った場合はどうしたらいいのfでしょうか。この点については、平成23年3月17日付け厚生労働省医政局指導課長通知で、通信ができない場合は医師の具体的指示を受けずに特定行為をおこなっれも、刑法第35条の正当業務行為として違法性は阻却されるとされています。」

補註

(橋本雄太郎氏が、単なる法令による正当行為、とか正当職務行為というだけでは足りない、と主張されていたので、実質的可罰性がないからいいではないか、という議論を持ち出してみたのだが、私の立法的な見地からする素朴な実質的可罰性の議論を従前主張されていた刑法学者のそれと同視されてしまったのが問題なのだろうと自分では思っている。

まあ、先に書いた所論は、私独自の、頭の体操の類の未熟な考えだ、と思っていただければいい。)