日本人同朋が人質になっているという情報を知らせないで、なぜ解散を強行したのだろう | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

今は言うべきではないかも知れないと思って、一度書いたが結局公開することを差し控えた記事がある。

今朝の日経に、昨年の衆議院解散について維新の党の国会議員等から大義なき解散だったという国民の声があるが、安倍総理はどう考えているのか、という質問があり、安倍総理がこれに対して色をなして反論した、しかし、質問者はその反論を聞いてそれ以上この問題について言及せず、不甲斐ないものだ、という趣旨の記事が掲載されていた。

私は、やはり昨年の衆議院解散はあえてやる必要がなかった、大義なき解散、選挙で優勢な状況にある自分たちの都合だけを優先した恣意的解散で、総理の解散権の濫用だと言われても仕方がない解散だった、と評価している。

まあ、大義はないわな。

自民党の元長老だったら、その程度のことを言ってもおかしくない解散だった。

現職の国会議員はいずれにしてもその大義なき解散でも勝ち上がって国会議員としての職務を遂行できるのだから、大義なき解散と声高に言い続けると結局自分の存在についてのレーゾン・デートルがなくなるから追及の矛先を早々に変えてしまわざるを得ないだろうが、大義なき解散による選挙の結果国政での活躍の場を失った落選議員のために誰かがここで一言言っておく必要があるだろう。

あの解散総選挙には、やっぱり大きな疵がある。
物議を醸すだろうが、やはりあの記事は公開した方がよさそうだ、と思って、この段階で公開することにした。

後悔先に立たず、という言葉もあるから、この記事の公開が適切かどうかは何とも言えないが、私がこう考えた、今でも基本的にはそう考えている、ということをお知らせしておく。
色々批判があっても、人の考えはそう簡単には変わらないものだ。

「争点を逸らすつもりは毛頭ないのだが、これはいけない、と思うようなことがあったのでとりあえず書いておく。

日本や日本の国民がテロ組織のターゲットになっている、ということが分かっていたら、普通の政治家は必ず国民に警鐘を打ち鳴らすはずである。

殺害されたと言われている湯川さんは昨年の8月にISISに捕えられていたそうだ。
現在救出が急がれている後藤さんが湯川さんの救出のためにシリアに赴いたのは10月。
ガイドに騙されてISISに後藤さんが捕えられたのも10月下旬のことのようだ。

湯川さんがテロ集団に捕えられたということは外務省も把握しており、ヨルダンの日本大使館に対策本部を設置して救出交渉をしていたという。

後藤さんの家族に後藤さんの身代金として10億円の支払いを要求するメールが来たのは11月初旬だそうだ。
後藤さんが捕えられたという情報は、当然外務省も把握している。
現地大使館も本省の外務省も把握しているのだから、当然事の性質上官邸もこのことは把握していたはずである。
官邸が把握していた、というのは、すなわち官邸の主、安倍総理も把握していたということになる。

人質事件の公表がしばしば人質の殺害に直結したり類似事件の発生を招くことになるから、その取扱いに特に慎重になるのは当然だが、しかし凶悪なテロ行為を平然と繰り返している疑似国家イスラム国が日本人や日本の国家をターゲットにし始めた、というのは看過すべからざる重大事態である。

軽率に公表することは差し控えるべきだが、しかしいつまでも隠しておくことは許されない。
重大事態の発生の公表をいつにするかということはいつも問題になるが、解決に全力を投球してそれでも解決が困難だということになったら、なるべく早急に国民に公表するのがその掌にある人たちに求められる職責だろうと思う。

こういう重大事態に直面した時は、まさに全力でその解決に当たるべきであり、もし日本国がターゲットになっているのであれば日本政府の総力を挙げて対処するのが筋である。

さて、日本政府は、当時事件解決のために全力を尽くしていたのだろうか。

私には、どうもそうは思えなくなった。
昨年、衆議院の解散総選挙が行われて、安倍自民党が事前のマスコミ予測通りに大勝した。
安倍総理にしては自分の見込み通りの、してやったり解散総選挙ということになるのだろうが、私は当時、解散の大義のない解散総選挙、やる必要のない解散総選挙だということを何度か申し上げてきた。

しかし、今改めて考えると、昨年の衆議院解散総選挙は大義なき解散総選挙という言葉ではとても言い尽くせないほどの、ひどい選挙、道に外れた選挙だったのではないかと思えてきた。

何も知らされていなかった方々は、仕方がない。
解散になったのだから、粛々と選挙戦に臨むのは自然のことである。

しかし、日本人同朋が現にイスラム国の人質になり、巨額の身代金の支払いを要求されているという重大事態の発生を知りながら、あたかも何事もないかのように装って衆議院を解散し、選挙という一種の狂騒に身を任せているのはなんだ、ということになるのではなかろうか。

ISISがユーチューブに人質になっている湯川氏や後藤氏が映っている動画を投稿して日本政府に2億ドルの要求を突き付けてくるまで政府が事件の公表をしなかったのはいい。

しかし、日本人同朋がイスラム国という残虐さで知られるテロ集団の人質にされ、生命の危機に瀕しているのに、選挙といういわば身内のお祭り騒ぐに浮かれ騒いでいるのは、どうみても軽すぎる。
あの解散総選挙は、やはりおかしかった、ということになるのではないか。

自民党が大勝して波静かな国会になると予想されていたが、どうやらこの通常国会は平穏無事とはいかないようである。」