億を超える相続税の負担が必至な一族に対するアドバイス | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

大体の人はその時になってから慌てふためくものだが、予見できるリスクは出来るだけ回避したり、少なくとも最小限に止める工夫はした方がいい。

人はいつかは生を終える。

生を終えて安らかな眠りに就くのが願いだが、しばしばこの世に争いの種を残しかねないのが相続である。

おう、これは見事だ、と思ったことがある。

かなり大きな地所を所有されている方で、その大きな地所に自分の子どもたちがそれぞれに家を建てて住んでいる。
被相続人の土地の上に複数の建物が所在しているのだから、何もしないでおくと、相続が発生した時に土地を分割したり、売却したりしなければならなくなる。

土地を分割する時にはそれぞれの土地の境界をどこにするか、という問題が発生する。
億を超える相続税の支払いが必要になると、まず普通の家族では即時納税など出来ない。
延納申請をすると本税以外に相当額の利子税も支払わなければならなくなる。
万一延滞でもしようものなら、パニックものである。

結局は相続した不動産を売却したり、銀行から借り入れて取りあえず相続税を納めたりする。

そういう時に、相続不動産の名義が共有になっていると実に面倒になる。
手続に追われている内に売却の時期を逃してしまうことも多い。

そういう事例を沢山見てこられたのだろうが、その方は生前に土地を分割して、まずは敷地内に道路を作られた。
案外道路を作ることなど気が付かないものだが、相続で自分の所有地がいずれ分割になるということが分かっているから、それぞれの土地を取得する相続人が困らないように道路を作り、かつ分割したそれぞれの土地の上に所在する建物の居住者がその建物を相続できるように公正証書遺言を作成された。

被相続人と法定相続人が生前に協議して一連の手続きを進められたのだから、まず争族にはならない。

通常のケースは、なかなかこうはならない。
何とかなってもらいたいと願っているが、何ともならないことが多く、分かっていても何もしない人が実に多い。

ケセラセラ、なるようになるさ、後のことなど私は知らない、という主義者はこれで平気だろうが、傍から見ていると、何とかしてあげてくださいよと言いたくなることが多い。

一般社団法人や信託の活用を勧める対象は、あくまで億を超える相続税の負担が必至な方々へのアドバイスであって、私たち庶民には大体縁がない。

私などは、争族を避けるために、様々な煩い事は自分で一手に引き受け、相続財産は事実上放棄してしまう道を選んでしまう。
我ながらお人好しの典型だと思っているが、自分自身の心の平安、生活の平穏を保つにはこれがいい。

人間関係のドロドロほど人の心を傷つけるものはない。
相続を放棄することのメリットを最近自覚し始めている。
先日は、あえて相続放棄を選択したいと言ってこられた方のお話を聞いた。

うん、それがいい。

実感を持ってそう答えることが出来た。
こんなことは経験した人でないとなかなか分からないはずだ。