一般社団法人の設立と遺言代用信託の活用は、不動産運用の安定化と無用な争いを回避するため | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

相続税対策のためにやるのだろうなどと勘繰る人もいるが、どの程度の節税効果が挙がるのかはまだ何とも言えない。

もっぱら不動産運用の安定化と相続によって無用な紛争を発生させないための方策の一つとして一般社団法人を設立して不動産を一般社団法人に信託譲渡する方策をお勧めしているだけである。

法定相続人が一人しかいない時には問題ないが、法定相続人が複数の時は何もしなければ被相続人の不動産は法定相続人の共同相続になる。
遺産分割協議が円満に進む時はいいが、よほどの事情がない限り大なり小なり何らかのトラブルになるのが普通である。

相続税を支払うために相続した不動産を売却しなければならない、などという状況になったら大抵は大変な思いをする。
通常の取引相場とはかけ離れた金額での不動産売却を余儀なくされることもあるから、なるべく不動産の売却をしないで済むような方策を検討する必要がある。

一般社団法人に信託譲渡された不動産の処分は、一般社団法人の定款で禁止されていなければ一般社団法人の理事会の決定で足りるから、大体は通常の取引相場での売却処分が可能になる。

これが複数の相続人の共有財産にでもなっていると、共有持分所有者全員が売却処分に同意しなければ事実上売却が出来ないことになる。
売却対象物件をどうするか、売却の代金をどう決めるか、などなど煩いの種が山積している。

どうしようもなければ、共有不動産の分割や競売という手続を取らざるを得なくなる。

裁判所の競売の場合はどうしても金額は低くなる。
そういうことが分かっているから、相続税支払いのために相続不動産の売却を迫られる人たちが現実に手にする売却代金は、競売によらない任意の売却の場合も相当に低くなる。

結局は、どの相続人にとってもあまりありがたくない結果に終わってしまう虞が強い。

一般社団法人への不動産の信託譲渡は、結局は不動産運用の安定化の方策だろうと思っている。

一般社団法人に賃料収入のある不動産を信託譲渡して、信託した本人が不動産賃貸による収益を受領する、という仕組みにすれば、不動産の所有とその収益を分離することが出来る。
一般社団法人には出資がないから、株式のように課税対象となることもないから、仮に一般社団法人に賃貸収入の溜まりがあっても、それが直ちに相続税の対象になることもない。

賃貸中の物件を無理に売却する必要がなくなるのだから、賃貸不動産の管理にはこれほどいいことはないはずである。

どうせ新たな節税対策のために使うのだろう、などと如何にも蔑んだ物言いをするファイナンシャルプランナーがいるが、決してそうではない。

相続の場合には、不動産の信託登記を受けて所有名義人となっている一般社団法人に課税されるのではなく、通常の相続のように当該不動産は被相続人の財産と看做されて相続人に課税されるのだから、特に相続税免脱のための手段だ、などという謗りを受ける筋合はない。

結果的に節税になるところもあるが、それはそれでいいではないか、というのが私の基本的な理解である。
相続に伴う争族を事前に回避する方策としては実に優れている、というのが私の率直な感想である。

もっとも一般社団法人の経理と個人の経理の双方をしっかりとやらなければいけないから、そういうことが出来そうもない人にはお勧めは出来ない。
やれる方はやった方がよかろう、ということである。
もっとも、こういう仕組みをよく分かった税理士さんが身の回りにいることが絶対条件だが。

なお、私も今勉強中の事柄であり、私がいいだろうと言っているからといって、鵜呑みにはされないようにお願いしたい。
どんなことにもバグがあるものだ。

もう少し経たないと、本当のことが分からない部分もある。
ヨロシク。