昨日の閣議決定を読み解くのに一番役に立ちそうな細谷雄一氏の論稿 | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

うん、これはいい、という一文を目にした。
細谷雄一という方の論稿が今朝のブロゴスに掲載されていた。
私の感覚と実に近い。

新聞を読むとやたらと集団的自衛権容認という大きな見出しが躍っており、如何にも日本が大変な政策転換に踏み切ったかのように思えてくるが、まだそれほど大騒ぎするような段階にまでは来ていない。

勿論日本国として守るべき一線を踏み越える虞はあるのだから、警鐘を打ち鳴らすという意味で政治的に反対のキャンペーンを張ることにはそれなりの意義はあることは認める。
しかし、それはあくまで政治的プロパガンダの一つとしてそういう主張にも一理はある、という程度のことであって、この閣議決定は立憲主義を踏みにじるものだ、解釈改憲に当たるから無効だ、閣議決定を撤回せよ、などと本気で騒ぎたてる気にはならない。

もともと内閣法制局の論理に無理があったというだけのことである。
内閣法制局が日本独特の集団的自衛権なる概念を創出したところに問題があった。

今回の閣議決定は、その辺りのことをよく認識して内閣としての憲法9条の解釈指針を一部明らかにした、という範囲に留まるものである。
安倍総理の周辺はこの閣議決定を歴史的な政策転換だ、歴史に残る快挙だなどと大袈裟に喧伝したくなるだろうが、まあほどほどにした方がいい、というのが私の感想である。

そう大したことではない、ぐらいに軽く受け流すぐらいで丁度いい。
熱くならないのがいい。
どんなことでも纏め上げるのは大変なことだから、大変だった、大仕事をしたと思いたくなるのは人情だが、私から言わせれば、これまでの説明ぶりの未熟だったところや足りなかったところ、言い過ぎてしまっていたところなどを訂正、修正した程度のことである。

以下、細谷氏の論稿の一部を紹介する。
詳しくはブロゴスニュースを参照していただければ幸いである。

以下、ブロゴスニュースから引用:細谷雄一氏の論稿

「私は、2013年9月から、安保法制懇のメンバーに入りまして、今年の5月15日に安倍総理に提出された報告書作成にも多少は安保法制懇有識者委員としては関係しておりますし、報告書提出の際にも首相官邸で安倍総理の近くに座ってその重要な場面に居合わせることができました。
この問題をめぐるマスコミの報道、反対デモ、批判キャンペーンを見ていて、少々落胆しております。あまりにも、誤解が多く、あまりにも表層的な議論が多いからです
(中略)
まず第一に、今回の解釈変更で試みている最も重要な課題は、朝鮮半島情勢が不安定化する中で、北朝鮮が韓国に攻撃をした場合に、在日米軍が韓国を防衛するために出動する際に日本が米軍に後方支援をすることにあると理解しています。これがまた、今回の日米防衛ガイドライン改定の大きな主眼です。アメリカ政府はそれゆえに、日本政府がこれまでの憲法解釈を変更することに大きな期待を寄せてきました(圧力はかけていないと思います)。

通常は、国連憲章第51条に書かれている集団的自衛権の解釈とは、武力攻撃を意味します。PKOの武器使用や、後方支援などは国際法上の常識として、集団的自衛権の行使には含まれません。つまりは、今回の政府の憲法解釈変更の主眼は、国連憲章51条が想定する集団的自衛権に基づく武力攻撃をするためではなく、本来は集団的自衛権のカテゴリーに入らないはずのPKOでの武器使用や後方支援に関するものです。本来は、「集団的自衛権」でないはずのものが、内閣法制局は国際法に無知な方が多く、安全保障研究の基礎もほとんど何も知らない方ばかりなので、とてつもない誤解をして、「集団的自衛権」というラベルを間違えて貼ってしまったのです。

本来は集団的自衛権のカテゴリーに入らないので、日本国憲法が禁止していないはずのものが、内閣法制局は安全保障の常識について無知のあまりにそれらを「武力行使との一体化」などという、国際的に存在しない奇妙な論理を構築して、集団的自衛権の一部に含めてそれらの活動を禁止してしまったのです。内閣法制局は、本来は異なる領域の安全保障上の活動を、集団的自衛権というラベルを貼って、それを「禁止」してしまったので、日本の安全保障活動に深刻な支障が生じているのです。禁止すべきでないものを、禁止してしまった。これが1997年の「武力行使との一体化」の議論です。

これで少しはご理解いただけたと思うのですが、今回の与党協議の結果として合意されたものの多くは、本来の国際的な一般理解による「集団的自衛権」ではなく、通常はそこには含まれない法執行活動や後方支援活動を可能にするための法整備です。攻撃された国に、医療品や食料、水などを提供することを、「武力攻撃」としての国連憲章51条の集団的自衛権に含めている国などは世界中で日本以外に一カ国もなく、これは驚くべきほどの恥ずかしい内閣法制局の「誤解」と「無知」の結果なのです。ですので、私が国際会議などで、今回の日本政府による憲法解釈の変更による新しい安全保障活動について説明すると、「それは本来は、集団的自衛権の行使ではないのではないか?」という質問をいただく結果となり、「その通りです。本来は、集団的自衛権ではありません」と答えています。」

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