女川町のトレーラーハウス宿泊村「エルファロ」の開村式に来ている。
今回の東北視察は、この開村式に合わせて急遽企画したものである。
エルファロを運営するのは女川の旅館協同組合である。
女川にはかつては10数件の旅館やホテルがあったそうだが、全部被災してしまったようだ。
ほとんどの経営者が廃業する中で、なんとか旅館業の再開をしたいと願っていた4軒の旅館経営者が協同組合を作ってトレーラーハウスを利用してのホテルを始めることにしたようだ。
女川では、津波被害を受けた標高の低い地域での新規建物の建築が認められない。
一日も早く街の復興に取り掛かりたいが、復旧・復興作業を進めようにも作業員の宿泊施設がない。
何とか出来ないか、と知恵を絞った結果、トレーラーハウスを宿泊施設に転用出来ないか
というアイデアが出たようだ。
最初はダメだということだったようだ。
アイデアが出されてから10ヶ月余り、途中で何度も挫折しかかったが、ようやく開業に漕ぎ着けたということのようだ。
オープニングの式典でその理事長から謝辞があった。
紙に書いてある謝辞を読み上げようとするが、いくら待っても言葉が出ない。
涙が溢れてきて、どうやっても言葉にならないのである。
事情を知っておられるらしい方々から、小さな声で、頑張れ、という掛け声がかかる。
この理事長の挨拶が、今日の最高の挨拶であった。
聞けば、この女性は旅館業の経営の経験はない方だということだ。
津波で旅館業を営んでいたご両親をなくし、旅館そのものも壊滅した状況の中で、なんとかご両親がやっておられた旅館業を再開したい、そういう思い一筋で頑張ってこられたようだ。
1年9ヶ月前の震災以来の様々な出来ごとが、マイクに向かったその一瞬に襲い掛かってきたようである。
こういうときは、言葉にはならない。
あえて言葉を発する必要もない。
今日の開村式がご本人たちにとって如何に重いものであるか、が言葉にならない理事長の挨拶から十二分に私たちに伝わってきた。
おめでとうございます。
頑張ってください。
心からそう申し上げたい。
ちょっとハードなスケジュールかと思ったが、やはり来てよかった。