小技、足技が得意な菅総理と海江田大臣の攻防 | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

霞が関の人事を巡って菅総理と海江田大臣の間で激しいバトルが展開されたことを皆さんご承知だろうか。

最後の最後に海江田大臣が菅総理に一矢を報いた、と理解するのがいいだろう。
永田町異聞さんの裏読み解説が秀逸だと思うので、興味のある方は永田町異聞さんのブログを読んでいただきたい。

中身は単に経済産業大臣が経産省の次官、原子力安全保安院の院長、エネルギー庁長官の3人を更迭して、自分が後任者を決定する、ということを事前に発表しただけなのだが、よく見ると海江田大臣が菅総理に意趣返しをしたことが分かる。

私は、海江田氏は原子力損害賠償支援機構法が成立したら当然辞表を提出するものと思っていた。
それが、何故、寸前で辞表の提出を踏み止まったか。
その理由を理解しておくことが重要である。

菅総理の次の一手を、海江田氏は自分が火の粉を被ることを覚悟で必死に封じ込めたのである。

海江田氏が大臣を辞めることは既に既定路線になっていた。
菅総理は、海江田氏が辞表を提出するのを手ぐすね引いて待っていたはずだ。
海江田氏が辞表を出したらとりあえず細野原発担当大臣に経済産業大臣を兼務させるか、場合によっては自分が兼務することにして直ちに経済産業省の幹部の更迭し、経済産業省の実質的解体と脱原発へ向けた新しい体制の構築を宣言する。

菅総理にとってこれは最後の渾身のパフォーマンスになったはずだ。
それこそ菅内閣延命の切り札になったかも知れない。

海江田氏は、菅総理の次の一手を封じ込めたのである。
中身は経済産業省の順送り人事に過ぎないのだが、海江田氏は菅総理に真正面から叛旗を翻したことになる。

菅総理は、部下の手柄をすぐ横取りしてしまうところがある。
汗をかいた人をすぐ忘れてしまうのが菅総理。
海江田氏が何度か煮え湯を飲まされてきたことは、分かっていた。
いつ、どんな風にリベンジするか。

考えに考えた末の海江田氏の一手である。
反菅陣営の人たちや非菅陣営の人たちは、海江田氏によくやったぐらいなエールを送ったらいい。
菅総理の最後の切り札を海江田氏は無効化したのだから、立派なものだ。

菅総理も海江田氏も大技は得意ではないが、足の引っ掛け合いや小技の外し方などは見事なものだ。
まずは、どうにか海江田氏が技ありを取った、というところである。

経産省の官僚の思い通りではないか、霞が関が菅総理に勝っただけだ、などと早とちりをする向きがあるが、そんなに早く結論を出す必要はない。
これから菅総理がどんな逆襲に出るのか、今の状況で菅総理にそれだけの力があるのか、そういう観点から今後の展開を固唾を呑んで見守っておく価値はある。

菅内閣のエピローグを飾るに相応しい小ドラマである。
結構、私には面白い。

参考

時事通信の配信記事

後任次官、「指定席」から=安達産政局長が昇格-官僚の順送りに批判も・経産省
(2011/08/04-21-21:07)時事通信
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&rel=j7&k=2011080400759

 海江田万里経済産業相は4日、更迭する松永和夫事務次官(59)の後任に安達健祐経済産業政策局長(59)が昇格する人事を決めた。5日の閣議了解を経て12日に発令する。東京電力福島第1原発事故をはじめ一連の原子力行政の責任を明らかにするのが狙いだが、経済産業政策局長は「次期次官の指定席」と呼ばれるポスト。海江田経産相は「人心一新」を掲げているが、官僚の順送り人事と批判を浴びる可能性がある。
 また、同様に更迭する寺坂信昭原子力安全・保安院長(58)の後任に深野弘行商務流通審議官(54)、細野哲弘資源エネルギー庁長官(58)の後任に高原一郎中小企業庁長官(55)を起用。保安院長の人事も12日付、エネ庁長官人事は再生エネルギー特別措置法案が審議中であるため今国会終了後の9月1日付とする。
 他の主な幹部人事では、安達氏の後任は石黒憲彦商務情報政策局長(54)、深野氏の後任は豊永厚志中小企業庁次長(54)、高原氏の後任は鈴木正徳製造産業局長(56)。上田隆之官房長(54)は製造産業局長に回り、後任は立岡恒良内閣審議官(53)が就く。